離婚協議書作成費用を抑える!自分で作成する方法

協議離婚をする際に必ず作られるのが離婚協議書です。これは夫婦間で決めた取り決めを記録した書類ですが、専門家などに作成を依頼すると幾ばくかの費用が掛かります。
しかし、少しでも費用を抑えて離婚したいのであれば、自分で作成することも可能です。そこで今回は、離婚協議書を自分で作成する際の費用や手順などをご紹介していきます。
- 目次
自分で作成する手順
離婚協議書は名前だけを見ると、作成がとても難しそうに見えますが、実はその作成手順はとても簡単で、専門家でなくても作ることができます。
その手順とは次の3つの手順です。
<離婚協議書の作成手順>
- 相手と話し合い、協議内容を決める
- 協議した内容を離婚協議書にまとめる
- 離婚協議書を公正証書にする
まず、相手と話し合い、離婚にあたってどのようなことを協議するのか決めておきます。
次に協議を始め、そこで決まった内容を離婚協議書の形にまとめます。これは手書きでも、パソコンで作成してもかまいません。離婚協議書は夫用と妻用にそれぞれ1部ずつ、合計2部印刷する必要があります。
作成した協議書に誤字脱字や内容の漏れがないかを確認しておきます。協議書を、より証明力の高い公文書にしたい場合は公正役場に行き、協議書を公正証書にします。
夫婦で協議する内容
離婚協議書には、夫婦間で話し合った内容を記します。これらの内容に基づいて、離婚後の慰謝料の支払いなどが決まります。そのため、もし離婚協議書に重要な項目が抜けていた場合は、離婚後にトラブルになる可能性もあります。
一般的に離婚協議の際に話し合い、協議書に記載する内容については、以下の9つがあります。
<夫婦で協議し、協議書に記載する内容>
- 離婚に合意した旨
- 親権者の指定について
- 養育費の支払い
- 慰謝料
- 財産分与
- 子供との面会交流
- 年金分割
- 公正証書にするか否か
- 清算条項
ここからは、それぞれの項目についてどのようなことを決定すれば良いのか、詳しく説明していきます。
離婚に合意した旨
まず最初に記すのは、「お互いが離婚に同意している」ということです。何月何日に離婚に同意したのかまで、しっかり明記しておきましょう。
また、離婚は書類を役所に提出して初めて成立します。離婚届を「誰が・いつ・どこに出しに行くか」まで決めて、それについても合意した旨を記載した方が良いでしょう。
親権者の指定について
未成年の子供がいる場合、必ず決めておかなければいけないのは親権です。どちらが親権を持つかを話し合い、離婚届に親権者を記載しておかないと、離婚届を提出しても受理されません。
一般的に言われる親権とは、子供の財産管理をする権利と、子供と同居して養育をする権利の2つを指します。前者を「親権者」、後者を「監護権者」と呼びます。
片方の親が両方の権利を持つケースが一般的ですが、父親が子供の財産の管理を行い、母親が身の回りの世話を行うなど、親権者と監護責任者を分けることも可能です。
権利を分けた際はトラブルにならないよう、権利を分ける旨と、どちらがどの権利を持つのかについて離婚協議書に記載しておきましょう。
養育費の支払い
離婚の際にトラブルになることが多いのが、養育費の支払いです。養育費は、子供が成人するまで育てるために必要な費用のことで、学費や生活費だけではなく医療費や娯楽費なども含まれます。
養育費について、必ず決めておきたいのは次の4つです。
<養育費について決めること>
● 養育費の支払の有無
● 金額
● 支払期限
● 支払い方法
まず、養育費を支払う意思に相違ないか確認し、つぎに金額について話し合います。金額が決まれば、支払い方法は一括か、分割か、支払期日はいつかなどを明記しておきます。また、振込の場合、振込手数料はどちらが負担するのかについても決めておきましょう。
必要に応じて、進学・入院など子供の成長による特別な出費については話し合う、養育費をもらう側が再婚した場合は再協議を行う、支払者の養育費の減免をする、などの規定を入れても良いでしょう。
慰謝料
養育費と並んでトラブルになりやすいものが、浮気やDVなど、夫婦いずれかの行為が原因で離婚した場合に発生する慰謝料です。慰謝料について取り決める項目は、次の5つです。
<慰謝料について決めること>
- 慰謝料の有無
- 金額
- 支払期日
- 支払い方法
- 振込手数料はどちらが負担するか
こちらも養育費と同じで、慰謝料の有無、その金額、支払い期日、一括か分割かの支払い方法、振込手数料の負担先について話し合います。
また離婚協議書の作成時に、既に慰謝料の支払いを一部終えている場合は、支払い済みの金額と、慰謝料の総額を記載しておくと良いでしょう。
財産分与
離婚をすると、婚姻後に取得した夫婦の共有財産を分けるために必ず行われるのが財産分与です。ここで指す財産とは、不動産や家財道具、退職金や預貯金を指します。協議・調停・裁判のいかなる形式で離婚が成立しても財産分与は行われます。
財産分与で決めることは次の4つです。
<財産分与について決めること>
- 財産分与の対象となる財産
- 財産分与として何を譲り渡すか
- 支払期日
- 支払い方法
まず財産分与の対象となる範囲と、どちらが何を譲り渡すのかについて話し合います。なお、独身時代に貯めた財産や、結婚後でも夫婦が一緒になって築いたものではない財産は、「特有財産」という扱いになり、財産分与の対象とはなりません。
財産の分け方について話し合いが終わったあと、支払期日や一括・分割などの支払い方法を決めて記載します。
なお、金銭以外の財産(不動産や家財道具など)は売却して金額を折半する・一方が現物をもらう・現物をもらう代わりに相手に現金を支払うなどの方法で財産を分けていきます。
子供との面会交流
離婚後、子供と一緒に暮していない親は定期的に子供と面会する権利があります。子供との面会については離婚後のトラブルになりやすいため、しっかりとした取り決めをしておくことが重要です。
<面会交渉について決めること>
- 頻度
- 日時
- 1回当たりの時間
- 面会交流の方法
- 普段の連絡の可否
- ルール(子供に離婚理由を話さない、など)
面会の頻度や日時・1回の交流時間から、同席者の有無などの子供と非親権者の交流方法、電話やメールなど、日常的な連絡の有無を決めておきます。
また、子供と話すときに触れて欲しくない話題があれば、それもルールとして設定できます。
年金分割
年金分割とは、婚姻している期間中に支払った保険料を、夫婦が共同で納めたものとして計算し、保険料の記録を分割する制度のことです。年金には国民年金と厚生年金の2種類がありますが、分割対象になるのは厚生年金のみです。
年金分割において決めるのは分割の割合であり、最大2分の1まで分割が可能です。
協議書には次の項目を記載する必要があります。
<年金分割について記載しておくこと>
- 当事者それぞれの氏名
- 生年月日
- 基礎年金番号
上記の他に、分割に合意する旨や分割割合についても記載しておくと、後々のトラブルを回避できるでしょう。
年金分割に関しては、当事者間で協議するだけでなく、年金事務所への届出が必要です。1人で手続きをする場合は「年金分割合意書」を公証役場で作り、年金事務所に提出します。夫婦2人で年金事務所に行く場合は、合意書はなくても問題ありません。
精算条項
離婚した後にもさまざまな理由を付けてお金を請求されるケースがあります。それを防ぐために記載するのが精算条項です。精算条項は、「離婚協議書に書かれている以外の支払いは一切しないこと」を確認する文言です。
なお、離婚協議書の精算条項を記載する場合は、請求漏れが無いかどうかを入念に確認しておきましょう。
公正証書にするか否か
離婚に向けて協議しその内容を記した離婚協議書も、そのままでは法的拘束力が弱いです。
協議書を法的に有効な書類として使うためには、公正証書にする必要があります。公正証書にするには費用がかかりますが、それに見合うだけの、2点のメリットがあります。
<公正証書にするメリット>
- 高い証拠能力
- 高い執行力
公正証書にすると公式の文書となりますので、高い証拠能力を持ちます。そのため、離婚成立後、相手に「そんな約束をした覚えはない」と言い逃れをされる心配がなくなります。
2つ目の高い執行力ですが、こちらは養育費や慰謝料などの支払いが遅れた場合に、裁判所を介して強制回収の手続きを行うことができます。
離婚協議書を公正証書にする場合にかかる費用
離婚協議書を公正証書とする場合、「公証人手数料」という費用がかかります。
公証人手数料は、離婚協議書内に記載されている養育費、財産分与、慰謝料などの金額によって手数料の額も変わります。そのため、請求する合計金額が高くなればなるほど、払う手数料が高くなります。
一般的な養育費、財産分与、慰謝料、年金分割について記載されたものであれば、5~8万円が相場ですが、養育費など最低限の項目だけが記載されたものであれば3万円程度で作れます。
またこの他、依頼者に交付される公正証書(正本・謄本)の用紙代として約5,000円と、公正証書を提出する際に必要な印鑑証明・戸籍謄本などの発行費用が別途発生します。
自分で離婚協議書を作成して公正証書にした場合はかかる費用は少ない
弁護士に依頼せず、自分で離婚協議書を作成して公正証書にする場合、必ずかかるのは以下の3つの費用です。
<自分で作成した際の費用>
- 印鑑証明の発行料金
- 戸籍謄本の発行料金
- 公証人手数料
印鑑証明と戸籍謄本は、公正証書とする際に提出する必要があります。
まず印鑑証明の発行料金ですが、これは1通につき200~400円程度です。次に戸籍謄本の発行料金ですが、こちらは1通につき450円です。公証人手数料は前述した通り、一般的な相場であれば5~8万円です。
弁護士に離婚協議書作成を依頼したときの相場
離婚問題を取り扱うプロの弁護士に離婚協議書の作成を依頼する場合は、次のような費用がかかります。
<弁護士に作成を依頼した際の費用>
- 離婚協議書の作成
- 日当(弁護士が公証役場に行く場合など)
- 離婚協議書への署名を行う際の同席
まずは離婚協議書の作成にかかる費用ですが、これは5~10万円あたりが相場となっています。次に、離婚協議書を公正証書とするために、公証役場へ弁護士が行く場合は、弁護士への日当が発生します。相場はおよそ5万円です。
また、離婚協議書への署名を行う際、弁護士に同席してもらった場合、別途5万円ほどかかります。
弁護士に離婚協議書作成を依頼するメリット
離婚協議書は、自分自身で作成した方が弁護士に依頼するよりはるかに安いといえます。しかし、費用を払ってプロである弁護士に依頼することには、次のようなメリットがあります。
<弁護士に作成を依頼するメリット>
- 法律的に的確な文言で作成できる
- 状況に沿った内容の離婚協議書を作成できる
- 得られる金額が上がる可能性が高い
弁護士に依頼せずに離婚協議書を作った場合、法的な知識がないことから、自分自身の不利になる文言を記載してしまうという可能性があります。しかし、法律のプロである弁護士に作成してもらえば、作成する文書についても法律的に最も正確な文言を選んで作成してもらえます。
また、離婚問題は夫婦によってさまざまな状況があります。経験豊富な弁護士であれば状況に合った形の離婚協議書を作成してもらえます。
また、専門家のアドバイスをもらうことで、慰謝料や財産分与で得られる金額が上がる可能性があります。よって、離婚協議書の作成を弁護士に依頼すると、かかる費用を差し引いても十分なメリットがあるのです。
まとめ
離婚協議書は、離婚後の生活を左右する重要なものです。今回ご紹介した通り、弁護士に依頼しても最低限の手続きであれば、自身で作成する費用とほんの数万円しか違いはありません。
費用をおさえるために自分で作成するのも良いですが、それにより記入漏れや書き方のミスなどトラブルが起きれば、おさえた費用以上の損失になってしまう可能性があるので注意が必要です。
費用を無理におさえるのではなく、より完璧な離婚協議書を作成するのが賢い方法といえるでしょう。
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