夫婦が別居するさまざまな事情|ケース別の別居方法や対策を紹介
別居と聞くと「離婚に向けてカウントダウン?」と思われるかもしれません。しかし、お互いのために別居婚を選ぶ人もいれば、別居を夫婦関係の修復期間とする人もいます。
今回は、別居にいたるさまざまなケースについて説明しながら、別居と離婚の関係、別居後の生活を考えてするべきことなどを紹介していきます。
- 目次
夫婦が別居するケース
別居には、離婚を前提としたもののほか、配偶者の仕事の都合による単身赴任、別居の良さを活かした結婚生活を送る「別居婚」などのケースがあります。
以下では離婚前提のケースと別居婚について説明します。
不仲やDVなどで同居が困難になった離婚前提の場合
別居というと「離婚の前にするもの」というイメージを持つ人も多いでしょう。「離婚前にする別居」と一口に言っても、さまざまな理由があります。
別居につながる家庭内の問題
不仲で夫婦ゲンカが絶えない
新婚時代はお互い思いやりがあったのに、今は相手の欠点ばかりが気に障り、すぐ夫婦ゲンカが起こる…「一緒にいない方がマシかも」と考えて距離を置くための別居です。
配偶者の不倫
配偶者に不倫されて別居にいたるケースです。すぐ離婚を決める前に、配偶者を許すか離婚するかを冷静に考えるために、いったん離れることを選ぶ人もいます。
昼夜の生活リズムの違い
例えば、「仕事で夫は夜型、妻と子供は昼型の生活」を送っているとします。
この場合、「夫婦が一緒に過ごせる時間が短くなるため、顔を合わせることが少なくなる」という意味のすれ違いだけでなく、気持ちのすれ違いが起こることもあるでしょう。
DV・モラハラ
配偶者からの身体的・精神的暴力から逃れるための避難的別居です。
自分だけでなく子供も被害を受けていたり、親が暴力をふるうのを子供が見て育つと、子供の心身がダメージを受ける恐れがあるため、一刻も早く別居する必要があります。
同居する義両親との不仲
義理の親との同居は気を遣うものです。このとき、配偶者が間にうまく入ってくれれば良いのですが、現実はなかなかそうもいきません。
「配偶者が親との同居を続けたいなら自分が出ていくしかない」と考え、別居を選ばざるを得なくなる人もいます。
離れて暮らすメリットを重視した「別居婚」
一方、前向きな別居もあります。結婚はしているけれども離れて暮らすことを自分たちで選んで行う「別居婚」というスタイルです。
別居婚は、近所や同じマンションの別の部屋など、すぐに会える距離に住み、「夕飯だけ一緒に食べる」「休日だけ一緒に過ごす」といったように、時間を決めて一緒に過ごすライフスタイルが多いようです。
単身赴任も別居婚の形の一つという見方がありますが、やや例外的といえるかもしれません。
自分たちで選んだ別居婚の場合は終わりがなく、終わらせたければ夫婦が合意すればいつでも別居婚を終わらせることができます。
一方、単身赴任は配偶者の転居を伴う異動がきっかけです。自分で選んだというより、やむを得ず始まり、再度の異動や定年がきっかけで終わることになる点が異なります。
別居婚のメリット
離れて暮らすことで「子供がいると寂しい思いをさせる」「配偶者が浮気しやすい」「費用がかかる」というデメリットもありますが、以下のようなメリットもあります。
自由を謳歌できる
相手に合わせて生活しなくて済むので、生活する時間も食べるものも自由に選べる。相手に干渉されず、会わない日は仕事や趣味に没頭できる。
ストレスがない
生活習慣の違いや、いつも一緒にいることから生じるストレスがなく、相手の嫌な面を見ずに済む。
新鮮な気持ちでいられる
配偶者と会う前は、恋人時代のデートのように喜びやワクワクがある。
別居と離婚の関係は?
別居した夫婦のうちどれくらいが離婚にいたるのかというデータは不明ですが、厚生労働省のデータでは、離婚全体のうち、別居期間が1年未満のケースは8割を超えています。
年齢別では、夫婦の年齢が若ければ若いほど別居1年以内に離婚する傾向が見られます。一方、年齢が高くなるにつれ、5年、10年、10年以上と長く別居したすえに離婚する傾向がうかがえます。
若い夫婦は別居から離婚までの期間が早いと考えられます。
一方、離婚請求の際、婚姻関係の破綻が認められる別居期間は10年が目安となるため、熟年離婚では、ある程度の別居期間を経て、子育てが一段落したり、配偶者の定年を機に離婚が成立したと見ることもできるでしょう。
別居婚は離婚を前提としていませんが、離婚の可能性がないわけではありません。
夫婦はお互い助け合い、違いを受け入れ合うことで1つの家族の形を作っていきます。そのため、別居婚は相手との摩擦が少ないという一方、受け入れ合う機会も少ないので、嫌になったらあっさり別れを切り出される可能性もあります。
また、別居していると相手が浮気していても気が付きにくく、離婚の際に不利になることもあります。
離婚前提で別居したいときにやるべきこと
民法には夫婦同居の義務が定められています。
民法752条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
離婚前提で別居をしたいからといって相手の同意なく一方的に家を出てしまった場合、夫婦の義務に反し「悪意の遺棄」とみなされ、離婚条件で不利になる可能性があります。
もし別居したいのであれば、配偶者と話し合い、別居に合意してもらう必要があります。
ただし、DVやモラハラからの避難、単身赴任など事情によっては同居義務に違反しないケースもあります。
離婚せずに別居したいときにやるべきこと
離婚を前提としていないものの、離れて暮らした方が良いと考えた場合にやっておくべき準備について説明します。
連絡先は配偶者に伝えておく(DVがある場合などは伝えない)
冷却期間を置く場合でも連絡先は相手に伝えておきましょう。
逆に、DVなどで配偶者から避難するケースでは伝えてはいけません。別居先や連絡先を開いてに伝えてしまうと、相手が別居先に連れ戻しに来てDVが再び始まる恐れがあります。
生活費(婚姻費用)を請求する
夫婦が別居する場合でも、その生活費については夫婦で分担する義務があります。そのため、もし妻が専業主婦やパートで収入が少ない場合でも、別居中の生活費を夫に請求できます。
住民票を転居先へ移す
住民票を自分の住む市区町村に移しておかないと、住民票が必要な手続きや各種行政サービス、選挙などで困る場合があります。
ただし、夫婦別々の住民票にすると、会社の手当や健康保険などに影響が出るケースもあるため、慎重に検討する必要があります。
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別居中の生活費は夫に請求できる!婚姻費用とは?
ケース別・別居後の問題と解決策
別居と一口にいっても、別居後に離婚したいのか、復縁したいのか、別居婚を継続したいのかで起こりうる問題が違います。それぞれのケースについて別居後に起こりうる問題や解決方法を説明します。
離婚したい
先にも述べましたが、離婚したい場合、別居することで夫婦の同居する義務を放棄することになります。
別居期間が長くなれば、夫婦関係が破綻しているとみなされ、裁判で離婚請求が認められる可能性があります。ただし、「何年別居すれば離婚が認められる」という規定はなく、ケースバイケースになります。
注意しなくてはならないのは、相手の同意なく一方的に家を出た場合、同居義務に反し、「悪意の遺棄」とみなされ、離婚条件で不利になる可能性がある点です。
もし別居したいのであれば、配偶者と話し合い、別居に合意してもらう必要があります。
夫婦で話し合いができるようであれば協議離婚を目指すのも一つの方法です。協議離婚は夫婦が互いに合意すれば離婚が成立する方法です。合意すれば離婚が成立するため、スピーディーに離婚することができます。
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離婚が成立しやすい別居期間は何年?別居に必要な準備や生活費を知ろう
関係を修復して復縁したい
次に、一緒にいるとケンカばかりなのでいったん距離を置くものの、いずれは復縁したいという場合の解決方法を説明します。
別居してから時間を置く
別居して時間を置くことで、自分も相手も冷静になり、「やっぱりやり直そう」という気持ちになるかもしれません。
相手の立場や気持ちを理解する
自分のことばかり主張していなかったか反省し、相手の気持ちを思いやった言動を心がけます。
相手の警戒心をなくす努力をする
「一緒に生活していけない」「一緒にいたくない」という気持ちがあって距離を置いたわけですから、こちらからいくら「復縁したい」といっても「また同じことを言い出すのではないか」と相手が警戒するのも当然でしょう。
相手の警戒心をなくし、自分のことを信頼してもらうためにも、相手のことを尊重するように努めることが大切です。
復縁するメリットを感じてもらう
家事など同居していたときは相手にしてもらって当たり前だったことが、自分1人でやってみて大変さに気付くこともあります。
子供のことも考慮する
別居した後の子供の様子や将来について話し合うことで、「両親が一緒に暮らした方が良い」と考えるようになるかもしれません。
ただし、あなたの暴力や浮気などが原因で別居した場合はいくら復縁したいと思っても難しいことが多いでしょう。
別居婚を継続したい
別居婚は年数に決まりはありません。なので、お互いが離婚に合意していれば別居を続けることはできます。
もちろん、別居を続ければ婚姻費用の分担や不貞行為をしてはならないなど、夫婦関係における義務なども継続します。
ただし、別居期間が長くなった場合、「婚姻関係が破綻している」として配偶者から離婚請求をされると裁判で離婚が認められる場合があります。
裁判を起こしておらず、別居婚を継続したいのであれば離婚請求に同意しないことが大切です。
まとめ
別居のさまざまなスタイルや別居と離婚の関係などについて説明してきました。
別居にはメリットもデメリットもあります。
「一度離れて暮らしてしまったらどうなるんだろう?」「別居しているうちに財産を隠されたり、子供に何か問題が起きたりしないだろうか」……など、心配な方は弁護士など離婚問題の専門家に相談してみましょう。
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