子なし夫婦の離婚|離婚前に知っておくべきことや注意点を解説
結婚しても子供を持たない夫婦もいます。子供を持たない夫婦(=子なし夫婦)は離婚しやすいと言われますがなぜでしょうか。
この記事では、子なし夫婦が離婚しやすいと言われる理由や子なし夫婦が離婚する際の注意点や離婚を有利に進める方法について解説していきます。
- 目次
子なし夫婦は離婚しやすいと言われる理由
「結婚しても独身のときと同じように働きたい」など、さまざまな理由で子供を持たない夫婦が増えています。
子供を持たない夫婦、いわゆる子なし夫婦は、子供を持つ夫婦に比べて離婚をするハードルが低いと言われています。
なぜ子なし夫婦は離婚しやすいと言われるのでしょうか。
離婚時に決めなければならない項目が少ない
子なし夫婦が離婚しやすいといわれる理由の一つに、離婚時に決めなければならない項目が少ないことが挙げられます。
子供がいる場合、親権者や養育費、面会交流など離婚時に決めなければならないことが多くなります。
特に離婚する際に揉めやすいのが「親権者を誰にするか」ということです。
これが決まらないために、なかなか離婚できない夫婦が多くいます。
元配偶者との関係を断ち切ることができる
子供がいる場合、親権者のほかに養育費と面会交流についても決めることになります。
これらの項目があることで、離婚後も何らかの形で元配偶者と関わりを持たなければなりません。
養育費は毎月きちんと支払われているかを確認しなければなりません。
支払いが滞っている場合は元配偶者に連絡し催促しなければならず、場合によっては調停を申し立てる必要があります。
面会交流についても、子供が小さいうちは子供だけで面会させるわけにいかないため、元配偶者と子供との面会に立ち会わなければなりません。
一方、子なし夫婦の場合、離婚後にこれらの負担を抱えることはありません。
離婚したあとは元配偶者の顔も見たくないと考える方も多いでしょう。
子なし夫婦は離婚によって元配偶者との関係を断ち切ることができるため、離婚に対するハードルが下がるのかもしれません。
離婚後、再就職や再婚がしやすい
高額の養育費をもらっている場合は別ですが、子供を持つ夫婦が離婚した場合、通常、親権者側は養育費だけで生活することはできず、何かしら仕事をしなければなりません。
さらに、親権を獲得した場合は子供の面倒も一人でみていかなければなりません。
子育てとの両立となると、正社員での採用は難しく、就職できる職種も限られてしまいます。
これに対し、子なし夫婦の場合、離婚しても育児に時間を取られることはないため、職業選択の幅も広がり、再就職がしやすいと言えます。
子供がいなければ自分一人の生活費だけで足りるので、離婚後の生活を圧迫しにくいことも子なし夫婦が離婚しやすいと言われる一因です。
また、一概にはいえませんが、子持ちの女性が再婚しようとすると、子供がいることがネックになってしまい、なかなか再婚相手が見つからないことがあります。
そういう意味では、子なし夫婦のほうが離婚後に新たなパートナーを見つけやすいという利点もあります。
子なし夫婦が離婚を考える瞬間
子なし夫婦が離婚を考える瞬間として以下のようなものがあります。
子供を持つことに対する価値観が違ったとき
夫婦が協力しなければ子供を持つことはできません。
夫婦の一方が「子供が欲しい」と思っていても、他方が子供を欲しくないと考えている場合、子供を持つことは難しくなります。
結婚する前に子供を持つかどうかをよく話し合っていれば良いですが、必ずしもすべての夫婦が話し合いをしているとは限りません。
結婚生活において子供を持つことが大きな要素だと考える方にとって、子供を持つことに対する夫婦の価値観の相違は離婚を考える要因として十分あり得ます。
特に高齢になると、出産は女性側のリスクが大きくなるため、子供を持つことに対する価値観の相違は夫婦のなかで大きなものになります。
子作りがストレスになったとき
夫婦がともに「子供が欲しい」と考えていたとしても、子供に恵まれないケースもあります。
現在は不妊治療も一般的になってきましたが、不妊治療には高額の費用がかかり、肉体的・精神的負担もかかるものです。
さらに、なかなか子供に恵まれない状況が続くと、お互いの両親から「まだ子供はできないのか?」などのプレッシャーがかかり、ストレスになることもあります。
このようなストレスが積み重なり、すれ違いが生じることで離婚を考えるようになることがあります。
価値観や性格の不一致があるとき
子なし夫婦に特有のことではありませんが、お互いの価値観や性格の不一致が原因で離婚を考えることもあります。
お互いのことが好きで結婚したものの、「家事に協力してくれない」「浪費癖があった」「結婚前には気付かなかった配偶者の性格が明らかになった」などさまざまな理由があるようです。
DVや不貞行為があるとき
これも子なし夫婦特有の問題ではありませんが、配偶者によるDVや不貞行為がある場合も離婚を考える原因となります。
子供を持つことへの価値観の相違からセックスレスになり、不貞行為をしてしまうといったケースもあるようです。
子なし夫婦の離婚で慰謝料を請求できるのか
子なし夫婦の離婚で慰謝料を請求することができるかどうかは、どのような原因で離婚するかによって異なります。
子供を持つことに対する価値観の相違や子作りがストレスになったなど、夫婦のどちらか一方に離婚の原因があるわけではない場合は慰謝料を請求することはできません。
慰謝料を請求することができる場合は、不貞行為やDV・モラハラ、悪意の遺棄、セックスレスなど、どちらか一方に離婚原因がある場合に限られます。
子なし夫婦の離婚慰謝料相場
子なし夫婦が慰謝料を請求することができる代表的な事例について、慰謝料相場を説明します。
不貞行為の離婚慰謝料相場
配偶者の不貞行為が原因で離婚をする場合の慰謝料の相場としては、50~300万円と言われています。
不貞行為の慰謝料を決める際には、婚姻期間や不貞行為の期間・回数、どちらが主導的であったかなど、さまざまな要素を考慮して判断することになります。
そのため、悪質な事案では、慰謝料相場のなかでも高額な慰謝料を獲得できる可能性があります。
不貞行為で慰謝料を請求するには、不貞行為の事実があったという証拠を集める必要があります。
配偶者が不貞行為を認めれば良いですが、自分が不利になることを認める人は少ないため、不貞行為を否定されたとしても相手と争えるだけの証拠が必要になります。
DV・モラハラの離婚慰謝料の相場
DV・モラハラが原因で離婚する場合の慰謝料の相場としては、数十万~300万円といわれています。
DV・モラハラの慰謝料を決める際には、DV・モラハラの程度や回数、期間などの事情を考慮して判断することになります。
直接的に暴力を振るわれるDVは身体の傷として証拠が残りやすいですが、言葉や精神的な暴力であるモラハラははっきりとした証拠が残りにくいです。
モラハラを立証するためには、配偶者から言われた言葉を録音しておくなど、証拠を残しておくようにしましょう。
悪意の遺棄の離婚慰謝料の相場
悪意の遺棄とは、正当な理由なく民法752条の同居・協力・扶助義務を履行しないことを言います。
代表的な例としては、生活費を入れない場合や同居を拒否するような場合があります。
悪意の遺棄が原因で離婚をする場合の慰謝料の相場としては、一般的に50~300万円と言われていますが、子なし夫婦の場合は低額になる傾向があります。
悪意の遺棄の慰謝料を決める際は、婚姻期間や別居期間、子供の有無、悪意の遺棄に該当する具体的な事情などを総合的に考慮して判断することになります。
そのため、子供のいない夫婦の場合は、子供がいる場合よりも低くなる傾向があります。
悪意の遺棄の証拠となるものは具体的な事例により異なりますが、生活費を入れてくれない場合は預金通帳の写し、同居を拒む場合には住民票の写しなどが証拠となります。
セックスレスの離婚慰謝料の相場
セックスレスが原因で離婚をする場合の慰謝料の相場としては、数十万~200万円といわれています。
セックスレスの慰謝料を決める際は、セックスレスになった原因やセックスレスの期間などを考慮して決めることになります。
セックスレスで慰謝料を請求する場合には、単にお互いがセックスに乗り気でなくセックスをしていないということでは足りず、「セックスを求めたが配偶者が正当な理由なく拒否し続けた」という事情が必要になります。
夫婦のセックスはプライベートな事柄ですので、証拠によって立証することは難しく、慰謝料を請求できないケースも多くあります。
メールやLINEなどでセックスを拒否されたことがあれば、それを証拠として残しておくと良いでしょう。
子なし夫婦の離婚慰謝料の増額事由
離婚慰謝料の相場は上記のように幅があります。
慰謝料を請求する原因ごとにさまざま要素を考慮し、より悪質であると判断されるものについては高額な慰謝料を請求できる可能性があります。
また、不貞とDVのように、離婚にあたって複数の原因がある場合は慰謝料が増額される可能性があります。
離婚を切り出す前に夫婦でしっかり話し合う
「子なし夫婦のほうが離婚のハードルが低い」とはいえ、お互い好きになって結婚したわけです。
まずは離婚を切り出す前に夫婦でよく話し合うことをおすすめします。
話し合った結果、「どうしても解決できない」ということであれば離婚することもやむを得ません。
しかし、「話し合いをしたら意外と些細なことで悩んでいたことに気づいた」というケースや、「話し合いの結果、配偶者の行動に変化が見られた」というケースも少なくありません。
結婚前の恋人同士のときを思い出し、休日にデートをしてみるのも良いかもしれません。
離婚する前にすべきこと
夫婦で話し合いをしてみたが、夫婦関係を修復することは難しく離婚を決断することもあると思います。
離婚を決断した際には、実際に離婚を切り出す前に以下の準備をしておくと良いでしょう。
相手方の財産を把握しておく
離婚では相手方に財産分与を求めることができます。
財産分与とは、簡単に言えば婚姻生活中に築いた夫婦の財産を半分にわける制度です。
財産分与をする場合、前提としてお互いにどのくらいの財産があるかを知っておかなければ、正確な金額を算定することはできません。
配偶者に開示を求めても、自分から進んですべての資産を開示するとは限りません。
離婚を決意した場合は、配偶者の預貯金口座や有価証券、生命保険など、どこにどれくらいの財産があるかを調べておくと良いでしょう。
慰謝料請求する場合は証拠を集めておく
慰謝料を請求するためには、それぞれの原因に応じた証拠が必要になってきます。
慰謝料請求が問題となる事案では、慰謝料を請求される側がその原因となった事実を認めるということは稀です。
そのため、裁判になった場合は、慰謝料を請求する側が証拠によって事実を立証しなければなりません。
証拠の有無によって慰謝料を請求できるかどうかや金額が決まってきますので、きちんと調査し、収集しておきましょう。
なお、別居してしまうと証拠の収集は困難になるため、できるだけ同居中に証拠を集めるようにしましょう。
仕事などの収入源や住居を確保する
共働き夫婦であれば良いですが、結婚して専業主婦になった場合、離婚後の収入源を確保する必要があります。
また、離婚後の住居を確保する必要もあります。
子供がいなくても別居中は婚姻費用をもらうことができるため、婚姻費用をもらいながら仕事を探すのも良いでしょう。
子供がいなければ時間の制約もないため、比較的仕事を見つけやすい傾向があります。
弁護士に相談する
互いに離婚に合意し、離婚の条件について問題がなければ良いですが、離婚に合意しないケースや離婚条件に争いがあるケースでは、自分一人で離婚を進めることは難しい場合があります。
話し合いで離婚ができない場合は調停を申立てる必要があり、場合によっては裁判にまでもつれ込むこともあります。
子なし離婚は、離婚時に決めなければならない項目が少ないとはいえ、慰謝料や財産分与などは離婚後の生活の糧として重要な項目となります。
離婚で適切な金額を得るためにも弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。
まとめ
子なし夫婦は離婚のハードルが低いと言われています。しかし、離婚するとなると精神的な負担が大きくのしかかります。
離婚後の生活に不安を抱えながらすべてを自分一人でやろうとするのは大変なことです。
このとき、弁護士に依頼することで、法的なアドバイスを受けることができ、煩わしい手続きや交渉を代行してもらうことができます。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」 は離婚に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
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