事実婚の相手に浮気されたら慰謝料請求できる?法律婚との違いとは。
事実婚とは、事実上夫婦と同様の関係にありながら、婚姻届けを出していない婚姻状態のことをいいます。事実婚も立派な婚姻状態です。そのため、事実婚をしている夫と妻は、お互いに貞操義務があります。
婚姻届けを出している法律婚の夫婦と同じように、夫婦でない人と性交などの性的な関係を持つことは許されません。
では、事実婚の相手が浮気をして、そのことに傷ついて損害賠償請求をしたとき、慰謝料を獲得することはできるのでしょうか。もし慰謝料を取れるとしたら、どのような準備が必要なのでしょうか。
浮気をした事実婚の相手から慰謝料を取ることはできる
先に結論を述べます。事実婚の相手の浮気が発覚したら、損害賠償請求を行い、慰謝料という金銭を得ることは可能です。
損害賠償請求とは、他人から損害を受けたときに、被害者がその損害分の金銭を求めることです。「他人」は自分以外という意味なので事実婚の相手も含まれます。
損害には財産の損害と精神の損害があり、浮気の場合は精神の損害になります。精神の損害をお金に換算したものが慰謝料ということになります。
慰謝料請求は相手に口頭で伝えることもできます。相手が慰謝料の支払いを拒否すれば、家庭裁判所に慰謝料請求調停を請求することができます。その場合、調停委員が合意に向けて調整してくれます。
慰謝料でもめたら地方裁判所や簡易裁判所に訴訟を起こすこともできます。その場合、慰謝料を払うべきか否かや、払う場合の慰謝料の額は裁判官が裁定します。
慰謝料の相場
事実婚の浮気の慰謝料の相場は、大体50万~300万円の間で落ち着くことが多いようです。この金額は法律婚(婚姻届けを出している婚姻状態)と変わりません。
慰謝料の金額は「離婚も別居もしない」「別居はしたけど離婚はしない」「離婚した」の順に増額していく傾向にあります。また浮気をした者の経済状況によっても慰謝料の金額は異なってきます。
富裕層の場合、高額な慰謝料になるかもしれません。また事実婚の夫(妻)の浮気によって、妻(夫)の社会的な地位が著しく毀損された場合も慰謝料は高くなる可能性があります。
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事実婚の「法的なつながり」は強まっている
事実婚の相手が浮気していたら慰謝料を取ることができる、と聞くと、「婚姻届けを出していない関係なのに、なぜ慰謝料にまで進展するのか」という疑問がわくと思います。
婚姻届けを出さない男女関係には、ただ交際しているだけの場合もあります。単に交際しているだけの状態であれば、相手が浮気をしたとしても慰謝料を請求することは難しいでしょう。
では、婚姻届けを出していない事実婚と単に交際している関係や同棲関係は、どう違うのでしょうか。事実婚は内縁関係とも呼ばれ、婚姻の意思がある男女が共同生活をしている状態と定義されます。
「婚姻の意思」や「共同生活」は法律行為ではないので、それらが存在するかどうかは、事実関係によって判断します。 例えば、
といった状況があると事実婚と認められやすくなります。 また市町村役場に届け出て、住民票の続柄を「妻(未届)」または「夫(未届)」とすることもできます。
ここまで行えば、同棲とは明確に異なる事実婚が存在する、と認定されるでしょう。
事実婚夫婦の法的なつながりは、とても強くなっています。例えば事実婚であっても、次のことが認められています。
ただやはり、事実婚の夫婦の法的なつながりは、婚姻届けを出している夫婦よりは弱くなってしまいます。
事実婚では相手の氏(苗字)に変更することができませんし、子どもの共同親権を獲得することはできません。また所得税の配偶者控除の対象になることもできません。
事実婚の相手の浮気とは
それでは、そもそも事実婚の相手の浮気とは、どのような状況をさしているのでしょうか。これは「婚姻届けを出している結婚相手の浮気」とほとんど同じです。
民法には「浮気」という言葉は出てきませんが、第770条に不貞行為という言葉が出てきます。
民法第770条では、
夫(妻)に不貞行為があった場合、妻(夫)は離婚の訴えを起こすことができる
と定めています。事実婚も婚姻状態なので、夫(妻)が不貞行為をしていれば妻(夫)は事実婚を解消できるわけです。では不貞行為に該当する浮気とはどのような行為をいうのでしょうか。
夫婦以外の相手と性交を行えば間違いなく浮気に認定されるでしょう。では性交がないプラトニックラブや、風俗店通い、一夜の関係などは不貞行為に該当する浮気になるのでしょうか。
これはケースバイケースで判定されることになります。
例えば、これまで一度も浮気をしたことがなかった事実婚の夫が、職場の同僚と寄った勢いでソープランドに行ってしまった場合は、民法が想定する不貞行為とまではいえないでしょう。
よって、そのことだけで事実婚を解消し、慰謝料を取ることは難しいです。
慰謝料の支払いに進展するような事実婚の相手の浮気は、交際期間やその関係性、性交の有無、感情の度合い、会う頻度などから総合的に判断されます。
浮気をした事実婚の相手から慰謝料を取るための準備
では、事実婚の相手が「間違いのない浮気」をしていたら、どのようにすれば慰謝料を取ることができるのでしょうか。
間違いのない浮気とは、特定の相手と年単位で交際し性交もしているような状況のことです。慰謝料請求にまず必要なのは、事実婚の関係にあることを示す証拠です。
なぜなら、浮気をした相手が「自分は事実婚の関係にあるという意識はなかった。単なる同棲と考えていた」と言い逃れ、そのうえ事実婚の証拠がなかったら慰謝料請求が難しくなるからです。
先述したとおり、住民票に「妻(未届)」または「夫(未届)」と書いてあれば事実婚の有力な証拠になります。ただ、住民票をそのように変更していなくても証拠を集めることはできます。
同居している期間が長ければ事実婚と認められやすいでしょう。
さらに生計を一にしていることも事実婚を裏付けます。水道光熱費の支払い状況や家計の管理、銀行口座の共有などが、生計を一にしていることを証明します。
また職場の同僚やお互いの家族などに事実婚の事実を伝えている場合も証拠になります。結婚式や葬式などの冠婚葬祭に事実婚夫婦で出席していれば、その関係性を疑われることはないでしょう。
そして慰謝料を確実に獲得するには、浮気の現場を押さえることも必要です。
探偵事務所や興信所などに依頼してラブホテルに入る2人の写真を撮ったり、浮気相手と会って浮気の事実を証言してもらいその音声を録音してもいいでしょう。
そのような能動的な証拠集めが苦手な人は、日記帳やメモ帳の記載内容やLINEのやりとりを記録してみてはいかがでしょうか。
さらに夫(妻)が外泊した日を記録しておき、飲食店やホテルの支払い履歴と照合できれば、それも浮気の証拠につながります。
支払い履歴とは、レシートや領収書、クレジットカードの明細書などのことです。それだけの証拠があれば、相手を問い詰めて浮気を告白させることができるかもしれません。
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まとめ
事実婚の相手が浮気しているかもしれないと感じ、それなりの証拠があり、慰謝料請求を考えているのであれば、弁護士に相談する手もあります。
離婚を多く扱う弁護士であれば、浮気をしている夫(妻)がどのように言い逃れをするか熟知しています。ですので、弁護士の助言を受ければ有力な証拠を押さえることができるかもしれません。
また、事実婚の夫(妻)の浮気現場の調査を妻(夫)が独自に行うのはリスキーです。すぐに見破られるような尾行をすれば、証拠を握る前に悟られてもみ消されてしまいます。
また尾行や張り込みは危険な行為です。挙動不審で警察の職務質問を受けることも十分考えられます。確実、安全に証拠をつかむには、やはり弁護士の協力が必要になるでしょう。
さらに、慰謝料請求をした後に事実婚の解消(いわゆる離婚)を検討するときも弁護士に財産分与について相談することができます。慰謝料請求の経緯を知っている弁護士なら力強いでしょう。
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