離婚後も慰謝料請求は可能!請求方法と証拠がない場合の対処法
「離婚時に慰謝料について取り決めをしなかったが、やっぱり慰謝料を請求したい」
「離婚後に元配偶者が不倫をしていたことが発覚した。今から請求できる?」
このようなお悩みはありませんか? 慰謝料は離婚時に取り決めるのが鉄則ですが、様々な事情により離婚後に請求したいと思うこともあるでしょう。
実は、条件を満たせば離婚後に慰謝料を請求することは可能です。この記事では、離婚後に慰謝料請求が可能となる条件と慰謝料の請求方法を解説します。
- 目次
離婚後に慰謝料請求ができる条件とは
離婚後に元配偶者に慰謝料請求するためには以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 離婚原因が相手方にあること
- 離婚から3年が経過していないこと
- 慰謝料請求しないという約束をしていないこと
それぞれについて詳しく解説します。
離婚原因が相手方にあること
離婚の慰謝料請求が認められるためには、相手方に離婚原因について有責行為があった(有責配偶者である)ことが必要です。 具体的には以下のようなケースが該当します。
- 不貞行為があった
- DVやモラハラなどがあった
- 正当な理由もなく別居した、生活費を全く渡さないなど夫婦の義務を怠った
一方、性格の不一致など、どちらが悪いと言えないような理由の場合、有責行為があったとは言えません。そのため、慰謝料請求は認められない可能性が高いです。
なお、不貞行為があった場合、不倫相手にも慰謝料請求ができる場合があります。
離婚から3年が経過していないこと
慰謝料請求権には時効があり、損害および加害者を知ったときから3年です。離婚の慰謝料請求は離婚が成立した日から3年で時効が完成します。
そのため、離婚成立から3年を過ぎてしまうと、相手方が「時効が完成している」と法的に主張すれば、慰謝料請求が認められません。
このように、時効の完成によって利益を受ける人が時効の完成を主張することを「援用」と言います。逆に、時効が過ぎてしまっても、相手方が時効の援用をしなければ慰謝料請求権は消滅しません。
なお、時効が完成しているかどうかの判断は専門家でないと難しいため、弁護士にご相談ください。
慰謝料請求しないという約束をしていないこと
離婚時に離婚協議書を作成すると「これ以上お互いに何も請求をしない」という条項を記載することがあります。これを清算条項と言います。
清算条項がある場合、「取り決めた内容以外に金銭の請求をしない」と約束したことになります。そのため、清算条項があれば、離婚後に慰謝料請求ができません。
離婚後に不倫がわかった場合
離婚後に不倫の事実を知った場合、不倫の事実を知った日から3年が時効です。
離婚の慰謝料請求は離婚から3年が時効ですが、離婚後に不倫が発覚した場合は離婚から3年を経過しても慰謝料を請求できる可能性があります。
清算条項があっても請求できる場合がある
離婚協議書に清算条項がある場合、離婚後に慰謝料請求ができないのが原則です。しかし、以下の場合は慰謝料請求が認められる可能性があります。
- 清算条項の記載された離婚協議書を突き付けられて無理やり合意させられた
- 離婚当時は知らなかったが離婚後に不倫が発覚した
なお、離婚当時は慰謝料請求をしないつもりだったが、気が変わったなどの理由では清算条項を取り消すことはできません。離婚協議書を作成する際は慎重に判断しましょう。
離婚後に請求できる慰謝料相場
離婚後に請求できる慰謝料相場は、離婚原因によって以下のとおりとなります。
- 不貞行為:50~300万円程度
- DV・モラハラ:30~300万円程度
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない・勝手に別居するなど):30~300万円程度
離婚後の慰謝料金額の増額要素
前述のとおり、離婚後に請求できる慰謝料は金額に幅があります。慰謝料の金額は以下の要素を考慮して決められます。
- 有責行為の悪質性
- 婚姻期間
- 婚姻関係の状況
- 未成年の子供の有無 など
離婚後に慰謝料請求する方法
離婚後に慰謝料請求する方法について順を追って説明します。
証拠を集める
慰謝料を請求する前に有責行為があったことを立証できる証拠を収集します。慰謝料を請求してすんなり応じてくれればいいのですが、相手がすんなり応じるかはわかりません。
このとき、有責行為を立証する証拠があれば、相手方も慰謝料請求に応じる可能性が高くなります。 具体的には以下のようなものが証拠として有効です。
離婚原因 | 証拠の例 |
---|---|
不貞行為 | ホテルに不倫相手と2人で出入りしている写真や動画 |
ホテルに不倫相手と2人で宿泊したことがわかる領主所やクレジットカードの明細 | |
不倫相手と肉体関係を持ったことがわかるメールやLINEのやり取り | |
不貞行為を自白した書面や録音 | |
DV | ケガした部分の写真(顔と日付もわかるようなもの) |
医師の診断書 | |
DV行為の録音・動画 | |
DV行為の経緯や内容を記した日記 | |
第三者機関への相談記録 | |
モラハラ | 心療内科の通勤記録や診断書 |
モラハラ行為の録音・動画 | |
モラハラの経緯や内容を記した日記 | |
第三者の証言や相談記録 | |
悪意の遺棄 | 【正当な理由のない別居】 |
別居先を特定できる資料(住民票や賃貸契約書など) | |
別居についてのLINEのやり取りや録音 | |
【生活費を渡さない場合】 | |
自分が生活費を補填しているがわかる家計簿や預金通帳の写し、レシートなど | |
生活費について元配偶者とやり取りをしたメールやSNSの記録 |
元配偶者と交渉する
証拠を集めたら元配偶者と慰謝料について交渉します。直接会ったり、電話で話したりしてもいいのですが、可能な限り交渉した内容を記録しておくほうが良いでしょう。
やり取りの記録があれば、後々トラブルになった際に証拠として使うことができます。
書面で慰謝料請求を行う際は、内容証明郵便を利用すると良いでしょう。内容証明郵便とは、郵便局が文書の内容や配達日時、差出人、受取人などを証明してくれるサービスです。
配達証明もつけておくと、相手が文書を受け取ったことも証明できるため、つけておくと良いでしょう。
訴訟を提起する
話し合いがまとまらない場合、または内容証明郵便を送付しても相手方が反応しない場合は訴訟を提起します。
訴訟を提起するには、訴状を作成して証拠などの書類と併せて裁判所に提出します。
訴訟の提起は自分で行うことも可能ですが、書面の準備や複雑な手続きが必要なため、弁護士に依頼することをおすすめします。
法的に有効な証拠が収集できない場合
慰謝料請求をするには法的に有効な証拠を集めることが重要です。しかし、離婚後は証拠を十分に収集できないこともあります。
また、収集する証拠は、「有責行為が婚姻期間中にあったこと」を立証するものである必要があります。
書面や物的証拠を収集できない場合、友人や知人など第三者の供述や証言も証拠として利用できます。
家庭裁判所では本人尋問や証人尋問、本人や相手方の不法行為の事実を把握している第三者の供述を正面にした陳述書などにより、証言や供述を証拠とすることができます。
本人尋問、証人尋問、陳述書の作成は専門知識が必要ですので、弁護士にご相談ください。
また、相手方が有責行為を認めている場合、LINEやメールを使って相手からの自白の証拠を作ることができる場合があります。
このとき、相手に怪しまれず、如何に自然に話をふるかがポイントですので、弁護士に相談しながら行うことをおすすめします。
離婚後に不倫相手に慰謝料請求できないケースとは
元配偶者の不倫が原因で離婚した場合、不倫相手にも慰謝料請求が可能です。ただし、以下の3つに注意しましょう。
- 時効が完成している
- 不倫相手に故意・過失がない
- 元配偶者から十分な慰謝料を受け取っている
以下で詳しく解説します。
時効が完成している
慰謝料請求権の時効は損害および加害者を知ったときから3年です。不倫相手に慰謝料請求をする場合、不倫の事実と不倫相手を特定した日から時効が進行します。
例えば、離婚成立の2年前に不倫の事実と不倫相手を特定した場合、離婚から1年で時効が完成してしまうということです。
「離婚から3年間は慰謝料請求ができる」と悠長に考えていると、不倫相手への慰謝料請求権の時効が完成してしまう恐れがあるため、注意しましょう。
不倫相手に故意・過失がない
不倫相手への慰謝料請求が認められるためには、不倫相手の行為に不法行為が成立することが必要です。
不倫が事実であっても、不倫相手に故意・過失がない場合は不倫相手への慰謝料請求は認められません。不倫相手に故意・過失がないケースとは以下のようなケースです。
- 元配偶者が既婚者であることを知らなかった(知らないことに過失がない)
- 元配偶者の暴行や脅迫などにより性行為を強要された
元配偶者から十分な慰謝料を受け取っている
不貞行為は元配偶者と不倫相手の共同不法行為になります。そのため、慰謝料の支払い義務は元配偶者と不倫相手の連帯責任になります(民法第719条1項)。
当事者のどちらか一方が慰謝料を全額支払えば、被害者との関係において当事者2人は債務を履行し終えたことになります。
そのため、あなたが元配偶者から慰謝料を全額受け取っている場合は不倫相手への慰謝料請求は認められません。
このとき、元配偶者から受け取った慰謝料が全額と言えるかどうかが問題です。
不倫慰謝料の相場は50~300万円と言われています。もし、数十万円しか受け取っていないのであれば、全額とは言えない場合があります。
適切な慰謝料金額は個々の状況によって異なるため、弁護士にご相談ください。
離婚後の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
離婚後の慰謝料請求は弁護士に依頼すると以下のメリットがあります。
- 相手方と関わらずに済む
- 早期解決が期待できる
- 証拠集めのアドバイスがもらえる
- 裁判に進んだ場合の手続きを任せられる
弁護士に慰謝料請求を依頼すると、相手方との交渉をすべて弁護士に任せることができます。相手方が慰謝料請求に応じない場合、弁護士が代理人になると対応してくることもあります。
当事者同士で話し合うと感情的になりやすく、話し合いが長期化するケースもありますが、弁護士との交渉では、冷静な話し合いがしやすく、結果的に早期解決を図ることができます。
また、面倒なやり取りもすべて弁護士に任せられるので、余計なストレスを感じる必要がありません。
裁判に進んだ際も、面倒な手続きや書類作成を弁護士に任せることができます。証拠がない場合も、合法的な証拠の集め方についてアドバイスしてもらえます。
まとめ
一定の条件を満たせば離婚後に慰謝料請求することは可能です。
しかし、時効やどのような証拠をどう集めればいいかの判断は難しく、相手方との交渉や法的な手続きなども自分1人で行うのは困難です。
弁護士に相談することで、慰謝料請求が可能か、慰謝料請求を行うためにはどのような準備が必要かアドバイスをもらうことができます。
また、弁護士に依頼すれば、相手方との交渉から法的な手続きまですべて任せることができ、安心です。
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