離婚調停を有利に進める方法|慰謝料や財産分与は増額できる
離婚はまず夫婦で協議を行い、話し合いがまとまらない場合に調停に進むというのが一般的です。離婚調停は調停委員を介して夫婦で話し合う離婚方法です。
離婚では特にお金に関してもめることが多くなります。
離婚調停を有利に進めるためにも、あらかじめ決めておくべき項目や金銭の支払い条件、お互いの落とし所を明確にしておくことが重要です。
この記事では、離婚調停を有利に進めるために必要なことをまとめています。離婚を考えている方はぜひ参考にしてください。
- 目次
離婚時に決めなければならない条件
離婚では決めなければいけないことがいろいろあります。
例えば、慰謝料や財産分与、子供の親権など、さまざまな内容を夫婦がお互いに納得する条件で決めなければ円満な離婚となりません。
また、事前に決めておかないと離婚自体が認められないものもあります。以下で離婚の際に決めなければいけない項目について説明していきます。
慰謝料の有無と金額
離婚といえば、最初に連想するのが慰謝料という方も多いのではないでしょうか。
離婚と慰謝料はセットで考えられることが多いですが、慰謝料はケースによって発生しないこともありますし、発生した場合の金額もさまざまです。
慰謝料の有無や金額は「なぜ離婚することになったのか」という離婚原因が大きく関係してきます。
慰謝料を請求できるケース
慰謝料は、離婚をすると必ず発生するわけではなく、その理由によって慰謝料を請求できるかどうかが決まります。一般的に慰謝料を請求できるケースは次の通りです。
- 相手の不貞行為(浮気、不倫)
- 悪意の破棄(理由もなしに同居を拒否、夫が健康にもかかわらず働かない)
- 暴力(DVなど)
- 生活費を渡さない
- 性交渉の拒否、不能
- 一方的な離婚の申し入れ
慰謝料が発生するケースというと不貞行為や暴力だけと思われることが多いですが、同居を拒否する、生活費を渡さない、性交渉を拒否し続けるといったケースでも慰謝料を請求することができます。
慰謝料は男性だから請求できる・女性だから請求できるというものではありません。
例えば不貞行為(浮気・不倫)を女性が行ったケースであれば、夫である男性から妻である女性に慰謝料請求ができます。
慰謝料は男性が女性に支払うものと思われることも多いですが、精神的苦痛を与えた側が苦痛を受けた側に支払うというものが慰謝料なのです。
慰謝料の金額の決め方
慰謝料の金額は、その原因によって金額が違ってきますが、相場としては50~300万円といわれています。それぞれのケース別に見てみましょう。
浮気・不倫が原因で離婚したケース
浮気・不倫が原因で離婚したケースでは、「不貞行為の期間」「浮気相手との間に子供ができた」「不貞にいたった経緯」などが慰謝料金額のポイントとなります。
身体的・精神的暴力が原因で離婚したケース
身体的・精神的暴力による離婚では「暴力の度合い」「DVにいたった理由」「DVの期間・回数」「ケガや障害・後遺症の度合い」といったものが考慮されます。
悪意の遺棄が原因で離婚したケース
悪意の遺棄が原因で離婚する場合、さまざまなケースがあります。
例えば同居義務違反の場合、「別居にいたる経緯」「別居の期間」「別居状態の改善努力の有無」「精神的苦痛の度合い」がポイントです。
一方、相互扶助・扶養義務違反であれば、「それによってどの程度の精神的苦痛を受けたのか」が考慮されます。
財産分与の割合
夫婦が持つ財産は、離婚の際に財産分与という形で分割することになります。
原則として財産分与の割合というのは妻と夫で2分の1ずつとなりますが例外もあります。
その例外は、「夫婦の一方の資格や能力により、高額の収入や多額の資産形成がされている場合」です。
この場合は2分の1とは限らず、その度合いに応じて修正されることになります。
清算的財産分与とは
財産分与には清算的財産分与と扶養的財産分与の2種類あり、一般的に財産分与を指すのは清算的財産分与です。
これは「婚姻中に築いた共有財産を公平に精算する」という性質のものです。清算的財産分与では、基本的に特有財産でない財産は名義の如何に関わらず、すべてが対象になります。
また、このとき未払いとなっている婚姻費用(生活費)の支払いについても精算が行われることがあります。
精算的財産分与は、その性質上離婚原因の有無は関係なく夫婦どちらにも請求権が存在します。
離婚の原因を作った有責配偶者だからといって財産分与を請求できないというわけではなく、その権利は平等に保有しているのです。
扶養的財産分与とは
もう一方の財産分与が扶養的財産分与と呼ばれるものです。
これは、離婚をすることで相手の生活が困窮してしまうという場合に、相手の生計を補助し一定水準の生活を送れるように扶養するための財産分与です。
これは、離婚の際に「相手が病気で就労ができない」「専業主婦(主夫)で経済力が乏しい」「ある程度の年齢で就職が難しい」などの場合に行われます。
扶養的財産分与は一般的に夫から専業主婦の妻に支払われることが多く、男性が働き女性が家に入るという社会的背景も考慮された結果になります。
その家庭の状況によりますが、離婚後も相手を扶養する要素が盛り込まれた財産分与といえます。
親権の獲得
子供がいる夫婦が離婚する場合、「どちらが子供の親権を得るか」というのは大きな問題です。
親権には身上監護権と財産管理権の2つの権利があり、親権の獲得といえば基本的にこの2つの権利を獲得することを指します。
身上監護権は主に子供の保護や世話、教育に関する権利で、居所指定権・懲戒権・職業許可権・身分上の行為の代理権の4つを含みます。
もう1つは財産管理権といって、包括的な財産の管理権・子供の法律行為に対する同意権の2つを含みます。これは、子供が持つ財産を管理し、子供に代わって法的手続きができる権利です。
さまざまな条件を考慮し、これらの権利を任せることで子供に利益をもたらすことができると判断される側に親権が与えられます。
親権を決める条件
親権は、以下のようにさまざまな条件を考慮して決まることになります。
- 子供への愛情
- 安定した経済力
- 親の監護能力
- 子供の意志
- 学校関係などの生活事情
これらの条件を満たしていれば、父親・母親を問わず親権が認められる可能性があります。
ただし、子供が乳幼児であるなど年齢が幼い場合は、面倒を見るのに適しているという理由で母親が親権獲得に有利といわれています。
一方、子供の年齢が15歳以上で、ある程度物事の判断を行える年齢であれば子供の自由意思が大きく関係します。
一般的に母親が親権を取ることが多いですが、必ずしも母親が有利というわけではなく、基本的には「どちらに親権を与えることで子供の利益が守られるか」が判断基準となります。
親権が父親に渡るケース
母親が親権を獲得するケースが多いなか、状況によっては父親が親権を得ることもあります。父親が親権を得るケースとしては次のようなものがあります。
- 父親のもとで長期間に渡って養育実績が積み重ねられており、養育環境・養育状況にも問題がない場合
- 母親による虐待や育児放棄など、問題がある場合
- 子供が父親との生活を強く望んでいる場合
幼稚園や保育園の送り迎え、休日に一緒に出かけるといったことを最低半年以上続けた実績があれば、父親であっても親権が認められる可能性が高くなります。
どのケースにせよ子供の利益が最優先となり、「父親のほうが適任である」と裁判所が判断すれば、父親が親権を得ることができます。
養育費の金額
子供が未成年の場合、非監護親に対して養育費の支払いを請求できます。
養育費の金額は、基本的に夫婦間で話し合いを行い、話し合いがまとまれば合意した金額にすることができます。
話し合いで決まらなかった場合、離婚調停で養育費を決めることになりますが、それでも決まらない場合は離婚審判や離婚訴訟で裁判官に判断を委ねることになります。
支払い期間の決め方
養育費が支払われる期間ですが、基本的には請求した時点から子供が20歳になる月までとなります。遡って請求することはできません。
また、子供が高校卒業後に働いて収入を得る場合はその時点で養育費の支払いを打ち切ることもありますし、大学進学をする場合であれば大学卒業まで延長することも可能です。
どのようなケースにおいても、最終的な支払期間を決定付けるのは話し合いによる合意ですが、養育費を請求できるのは「20歳になる月まで」というのが原則です。
金額の決め方
夫婦間で合意できれば養育費の金額は基本的にいくらでもかまいません。ただし、一般的には裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」を用いて金額を決めることが多いです。
「養育費・婚姻費用算定表」は、夫婦の年収や職業、子供の年齢や人数に応じて金額を計算するものです。
養育費を支払う側の年収が高くなれば支払う金額は高くなりますし、逆に支払いを受ける側の年収が高くなれば受け取れる金額は低くなります。
算定表よりも養育費を増額できたケースには、例えば子供の進学先が公立か私立か、どのような教育方針で育てるのかなどの事情を考慮し、夫婦で合意ができた場合などがあります。
参考:裁判所「養育費・婚姻費用算定表(https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html)」※1
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離婚調停を有利に進めるための方法
離婚調停を有利に進めるためにはいくつかポイントがあります。これを押さえておけば離婚調停をスムーズに進めやすくなります。
離婚調停で押さえておきたいポイントには次のようなものがあります。
婚姻前に取得した財産や相続などで得たものは証拠を残しておく
離婚の際、婚姻期間中に獲得した財産はについて財産分与を行います。
財産には「共有財産」と「特有財産」の2種類があり、前者は財産分与によって夫婦に平等に分配されますが、後者の特有財産は財産分与の対象外となります。
特有財産の対象は民法第762条によって定められており、対象となるのは次の2つです。
- 結婚する前から一方が所持していた財産
- 婚姻中に夫婦の協力とは無関係に取得した財産
例えば、結婚前に個人的に購入したものは1つめの「結婚する前から一方が所持していた財産」になり<ますし、親の遺産などは2つめの「夫婦の協力とは無関係に取得した財産」に含まれます。
このように、本来は特有財産に分類されるものが共有財産として扱われないよう、証拠を残しておく必要があります。
協議や調停の場では、その財産がどういった性質のものかをはっきりさせるようにしましょう。
子供を連れて別居する
離婚調停を考えているということは話し合いが成立しなかったということです。離婚調停は夫婦が同居しながら申立てを行うこともありますが、実際は別居する方が多いです。
裁判所で離婚を話し合っている相手と家で顔を合わせる…想像しただけで気まずいですよね。
ただし、子供がいる夫婦で離婚後に子供の親権を持ちたいと考えているなら、別居の際に子供を連れて行くことが望ましいです。
なぜなら、親権者指定では子供と同居していることや養育状況が考慮されるからです。
しかし、親権者指定は子供の健全な成育を目的としています。子供を連れて別居することが子供にとって不利益なものとなれば親権獲得に不利になることもあります。
弁護士に依頼する
離婚調停を有利に進めるためには弁護士に相談するのも有効です。
弁護士という相談相手がいることで安心できるというメリットもありますが、それ以外にも弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
- 調停委員に自分の本気度合いを印象付けられる
- 審判に移ったときなど、質の高い説明資料を用意できる
- 離婚に関する専門的なアドバイスをもらえる
弁護士と一口にいっても得意分野はさまざまですが、離婚を専門に扱う弁護士であれば、依頼内容や状況に応じたアドバイスが得られます。
裁判になったときも心強いですし、協議の段階から弁護士に依頼しておけば、いかに離婚に本気なのかを調停委員にアピールすることができます。
弁護士に依頼すると費用がかかりますが、得られるメリットが大きいので、離婚を有利かつ円滑に進めるために強い味方となってくれます。
まとめ
離婚調停を有利に進めるにはさまざまなポイントを押さえておくことがとても重要ですが、自分だけ行うとなると難しいかもしれません。
そんなときは弁護士などの専門家のアドバイスを聞いて計画的に進めていくと良いでしょう。
離婚弁護士相談リンクは離婚に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひ活用してください。
※1 裁判所「養育費・婚姻費用算定表」
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