夫婦円満調停とは|調停の流れや手続き方法、離婚調停との違いを解説
夫婦円満調停とは、調停手続きを利用して夫婦関係修復を図る方法です。
夫婦が話し合って関係修復できれば良いですが、面と向かうと話し合いが難しいということもあるでしょう。
この記事では、夫婦円満調停とはどういうものか、調停の流れや手続きについて解説します。
- 目次
夫婦円満調停とは
夫婦円満調停とは、正式名称を「夫婦関係調整調停(円満)」と言います。
これは家庭裁判所で行われる調停の一種で、夫婦関係が悪化したときに円満な夫婦関係を回復することを目的として行われます。
夫婦円満調停では、裁判官や調停委員が夫婦それぞれから事情を聞き、夫婦関係が悪化してしまった原因は何か、どうすれば夫婦関係が改善することができるのかを模索しながら、解決案を提示したり、助言したりするなどして進んでいきます。
なお、夫婦円満調停は、夫婦関係を修復したいと考えている夫婦に限らず、離婚するかどうかを迷っている夫婦も利用できます。
離婚調停との違い
離婚調停とは、正式名称を「夫婦関係調整調停(離婚)」と言います。
これも家庭裁判所で行われる調停の一種であるという点では夫婦円満調停と共通しています。
しかし、夫婦円満調停が主に夫婦の関係修復を目的としているのに対して、離婚調停は夫婦関係の解消を目的としているという違いがあります。
このように離婚調停と円満調停は、その目的が全く別ものだと理解しておきましょう。
夫婦円満調停を利用するメリット
夫婦関係が悪化した夫婦が夫婦円満調停を利用すると以下のようなメリットがあります。
調停委員が間に入るため冷静になって話し合いができる
調停手続きは、直接当事者が顔を合わせて話し合いをするのではなく、調停委員が夫婦別々に話を聞き、一方から聞き取った内容や要望を他方に伝えるという方法で進められます。
夫婦関係が悪化した夫婦が顔を合わせて話し合いをすると、お互いに対する不満ばかりが先に出てしまい、関係修復に向けた話し合い自体が難しいことがあります。
夫婦円満調停では直接夫婦が顔を合わせて話し合いをすることはないため、お互い冷静になって自分の気持ちを伝えることができます。
第三者である調停委員が間に入ってくれるというのも、落ち着いて話し合いができる要因の一つと言えます。
客観的な意見がもらえる
夫婦円満調停を担当する調停委員は、最高裁判所の規則により
「家事の紛争の解決に有用な専門的知識、経験を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で人格識見の高い40歳以上70歳未満のものの中から最高裁判所が任命する」
とされています。
そのため、調停委員となる方は、事案解決にあたって一定の知識経験を有した人物であり、多くの夫婦関係のトラブルを解決してきた実績のある方たちです。
夫婦円満調停では、調停委員や裁判官は、事案の解決に向けて専門的な知識や経験から導かれる解決案を提示してくれます。
夫婦だけの話し合いでは思いつかないような解決案を提示してくれることもありますし、第三者の客観的な意見であれば夫婦も素直に受け入れやすいでしょう。
夫婦円満調停を利用するデメリット
夫婦円満調停を利用すると、上記のようなメリットがある反面、デメリットもあります。
手続きに手間がかかる
夫婦同士の話し合いは、お互いの都合が合えばいつでもすることができます。
しかし、夫婦円満調停は裁判所を利用する手続きですので、裁判所が開いているときでなければ利用できません。
裁判所は平日しか開いていないため、仕事をしている方は、調停のある日は仕事を休んで対応しなければなりません。
また、調停期日は1か月に1回のペースでしか行われないため、解決するまでに相当の期間を要することになります。
必ずしも関係修復ができるとは限らない
夫婦円満調停はあくまでも話し合いの手続きですので、裁判のような強制力のある手続きではありません。
長期間調停で話し合いを進めた結果、裁判官や調停委員から一定の解決案が提示されたとしても、どちらか一方がそれを拒絶した場合は調停自体が不成立となります。
つまり、それまでの手続きがすべて無駄になってしまうということです。
裁判官や調停委員が夫婦の関係修復に向けて調整してくれるものの、夫婦がそれに納得できなければ、円満に解決することはできません。
夫婦円満調停の申立て手続き
夫婦円満調停の申立ては、以下のような手続きを踏んで行います。
夫婦円満調停の申立てに必要なもの
夫婦円満調停を申し立てる際は、家庭裁判所に以下の必要書類を提出し、費用を納付します。
なお、申立てができるのは円満調停を望んでいる当事者(夫また妻)です。
申立ての際、相手方の同意は不要ですが、連絡を入れておいたほうが良いでしょう。
必要書類
夫婦円満調停の申立てに必要な書類は、主に以下の2つです。
- 申立書およびその写し:各1通
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書):1通
なお、調停申立後に裁判所から別途追加の書類提出をお願いされることもあります。
費用
- 収入印紙:1,200円分
- 連絡用の郵便切手:1,000~2,000円程度 ※組み合わせや金額は申し立てをする裁判所に確認
夫婦円満調停の申立て先
夫婦円満調停はどの家庭裁判所でも申立てができるわけではなく、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所が申立先となります。
そのため、別居している場合は現在の相手方の住所を知っておく必要があります。
相手方の住所がわからない場合、相手方が転出届を提出してれば、住民票などで相手方の住所が知ることができます。
何らかの事情で相手の住所を調べられないという場合は弁護士にご相談ください。
夫婦円満調停の流れ
夫婦円満調停の申立て後、以下のような流れで調停手続きが進んでいきます。
裁判所から調期期日の連絡が入る
夫婦円満調停の申立てが受理されると、申立てから2週間程度で裁判所から第1回調停期日の日程についての連絡が入ります。
調停期日は平日の午前中または午後に行われることになるため、裁判所から連絡が入ったら仕事を休めるように調整しましょう。
調停期日 - 調停開始 -
調停期日当日は、裁判所からあらかじめ指定された日時に裁判所に行きます。
裁判所では、申立人側と相手方側で別々の待合室が用意されているため、裁判所に着いたら家庭裁判所の窓口で出頭した旨を伝え、待合室の場所を確認しておきましょう。
第1回調停期日では、調停が始まる前に裁判所から調停手続きの流れについて簡単な説明があります。説明が終わったあと、まずは申立人から話を聞くことになります。
30分程度話を聞いたあと、申立人と入れ替わって相手方が話を聞かれます。
相手方も申立人と同様に30分程度話が聞かれることになります。
これを何回か繰り返し、夫婦関係が悪化した経緯やそれぞれの関係修復にあたっての希望などが聞かれます。
第1回目の調停期日で調停が成立するというケースは少ないため、調停の終了時間になると次回の調停期日が決められ、第1回目の調停は終了となります。
調停委員から質問される内容
夫婦円満調停で調停委員から質問される内容としては以下のようなものがあります。
質問された場合の回答を事前に考えておくと調停がスムーズに進みやすくなります。
- 夫婦関係が悪化する前後の生活状況
- 夫婦関係が悪化した経緯
- 夫婦関係修復にあたって相手に望むこと
- 夫婦関係修復にあたって自分ができること
- 夫婦関係修復に向けてこれまでやってきたこと など
2回目以降の調停期日
2回目以降の調停も、1回目と同様に夫婦が交互に調停委員に話を聞いてもらう形式で進行します。
2回目以降はお互いの言い分もある程度整理できてくるため、互いの言い分を踏まえた具体的な解決案を提示してもらえる可能性もあります。
何回か調停期日を重ねてお互いが納得できる解決方法が見出せたら調停成立となりますが、それができないときは調停不成立となります。
調停成立の場合
夫婦円満調停が成立する場合としては、以下のような合意ができたときです。
円満調整
夫婦がお互いに関係を修復し、やり直していくことに合意ができたときは調停が成立します。
調停成立時はお互いに合意ができた内容を調停調書に記載することになります。
たとえば、「申立人と相手方は、別居を解消し、同居生活をする」、「申立人は、相手方に対し、家事や育児に協力することを約束する」といった条項です。
なお、これらの調停条項は夫婦の努力義務に過ぎず、それに反したからといって何らかの法的効力が生じるものではありません。
別居調停
夫婦関係の修復を目指して調停を進めていたものの、すぐに関係回復が難しいというケースでは、熟慮期間を設けるため「当面別居する」という内容で調停が成立することがあります。
夫婦関係の修繕ができたわけではありませんが、これも調停成立の一種です。
この場合の調停条項としては、「申立人と相手方は、当面の間、別居する」といった内容になります。
離婚
夫婦円満調停を申し立てたものの、お互いの主張が大きく食い違い、関係修復が困難だと感じたときは、そのまま離婚が成立することもあります。
夫婦が離婚に合意できたときは、親権や養育費、慰謝料、財産分与、年金分割などの離婚条件を取り決めたうえで調停が成立します。
調停不成立の場合
夫婦関係が修復できず、別居や離婚の合意もできないときは調停が不成立となります。
調停が不成立となった場合の対応としては、以下のようなものがあります。
再度夫婦円満調停の申立てを行う
夫婦円満調停が不成立となっても、やはり相手との関係修復を希望するときは、再度夫婦円満調停の申立てを行うこともあります。
ただし、調停不成立からあまり時間を置かずに申立てを行っても相手の気持ちが変わるとは考え難いため、少なくとも1年程度は時間を空けてから申立てをするのが良いでしょう。
離婚訴訟を提起する
夫婦円満調停を申し立て、お互いの言い分を伝えあった結果、関係修復は困難だと考えたときは離婚訴訟を提起することになります。
夫婦円満調停を申し立てて不成立になった場合は調停前置の要件を満たすため、改めて離婚調停を申し立てる必要はありません。
なお、離婚訴訟を提起して、裁判所に離婚を認めてもらうには、民法が定める法定離婚事由(民法770条1項各号)が必要です。
- 第770条1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
-
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
夫婦円満調停で関係修復を成功させるには
夫婦円満調停で夫婦関係を修復させたい場合は、相手の言い分にも理解を示しながら互いに歩み寄ることが必要です。
夫婦円満調停を有利に進めるためにも、以下のことに注意しながら実践すると良いでしょう
調停委員の心証を良くするよう心がける
調停委員も人間です。調停委員に対して良い印象を与えることができれば、関係修復に向けて相手を説得してくれることが期待できます。
まず、調停委員の質問に対して誠実に対応することが重要です。
相手に対する不満があるのは当然ですが、それに終始するのではなく自分の非も認めつつ改善点を提案するなど協力的な姿勢を示すことで、調停委員の心証は良くなる可能性が高いです。
くれぐれも調停委員を敵視したり、非難したりするような発言はしないように注意しましょう。
夫婦関係を改善したいという意欲がどれだけあるのかをアピールする
夫婦円満調停では、夫婦関係を改善したいという意欲がどれだけあるかが重要となります。
夫婦関係が悪化して相手が関係修復を望んでいない場合、相手に気持ちを変えてもらわなければ夫婦関係の修復は不可能となります。
そのため、相手が考える夫婦関係の不満を理解し、今後の生活において改善していくことを明確な根拠とともに約束することが必要になります。
一度壊れてしまったものを修復するというのは非常に難しいため、関係修復に対してどれだけ強い意欲があるかを調停委員や相手にアピールできるかがポイントとなります。
離婚問題に強い弁護士に依頼する
夫婦円満調停を自分だけで進めるのではなく、離婚問題に強い弁護士に依頼して行うのも一つの手段です。
離婚問題に強い弁護士は多くの離婚案件を取り扱っており、離婚だけでなく関係修復に向けた知識もあります。
そのため、夫婦円満調停の成功のポイントについてアドバイスをもらうことができます。
調停手続きに不安がある場合は弁護士に相談することをおすすめします。
夫婦関係を修復したいなら夫婦カウンセリングも選択肢の一つ
夫婦関係を修復する方法としては、夫婦円満調停だけでなく、夫婦カウンセリングを受けてみるのも良いでしょう。
夫婦カウンセリングでは、夫婦の話を聞いたカウンセラーが心理学的見地からアドバイスをしてくれます。
自分たちだけでは現状を変えることが難しいという夫婦は夫婦カウンセリングの利用も検討すると良いでしょう。
ただし、夫婦カウンセリングは、夫婦が一緒に利用しなければならないことが多いため、相手の協力が得られなければカウンセリングを受けることが難しくなります。
まとめ
夫婦関係が悪化し、離婚を考えることもあるでしょう。
しかし、お互い愛し合って結婚した夫婦ですので、まずは、関係修復を前提に話し合ってみてはいかがでしょうか。
夫婦関係を修復するには家庭裁判所の夫婦円満調停という手続きを利用することで関係修復の手助けをしてもらうことが可能です。
ただし、調停手続きは必ずしも関係修復ができるとは限りません。
円満調停をスムーズに進めたい場合や離婚に発展しそうな場合は弁護士に相談することをおすすめします。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
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