調停委員とは|離婚調停における調停委員との接し方

裁判・調停
弁護士監修
調停委員とは|離婚調停における調停委員との接し方

夫婦で離婚の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申立てます。

離婚調停は調停委員を介して話し合いを行う離婚の方法です。

この記事では離婚調停の調停委員とはどういうものか、調停委員と接する際はどうすれば良いのかを解説します。

目次
  1. 調停委員とは
  2. 調停委員が任命される要件
    1. 調停委員に決まった資格は必要ない
    2. 離婚調停では男女1名ずつの調停委員が選任される
  3. 離婚調停は調停委員を味方につけることが重要
  4. 離婚調停で調停委員と接するときのポイント
    1. 自分の主張をわかりやすく伝える
    2. 自分の主張が正当なものであることを伝える
    3. 冷静かつ誠実に対応する
    4. 相手方の言い分に反論しすぎない
    5. 譲歩に応じない人間だと思わせる
    6. 調停委員の考え方や価値観を認識しておく
  5. 調停不成立に備え、調停委員の言葉から読み取っておくべきこと
    1. 相手方が何を主張しているのか
    2. 相手が握っている証拠や事実
    3. 調停を不成立とするタイミング
  6. 調停委員を交代することはできるのか
    1. 調停委員に対して不満がある場合
  7. 調停委員への対応が不安なときは弁護士に依頼
  8. まとめ

調停委員とは

冒頭で述べたとおり、夫婦が離婚する際、まず当事者同士で話し合いを行い、離婚が成立しない場合は家庭裁判所に離婚調停を申立てます。

離婚調停とは、調停委員会を介して夫婦が話し合いで合意を図る手続きです。

調停委員とは、裁判官とともに調停委員会という組織を構成するメンバーのことを言います。

裁判所に申し立てられた調停は、裁判官と調停委員で構成される調停委員会が担当し、事件の解決にあたります。

ただし、裁判官は常に調停に同席するわけではなく、調停成立・不成立のときや、調停委員から意見を求められたときなどに同席するだけです。

そのため、離婚調停では、当事者は主に調停委員と話をしていくことになります。

調停委員はどちらの言い分が正しいかの判断をくだすわけでありません。

双方の言い分を聞き、中立的な立場で意見の調整を図ったり、解決に向けた助言を行ったりしてくれます。

調停委員が任命される要件

調停委員は最高裁判所によって任命されます。調停委員は、さまざま紛争を解決する役割を担うため、誰でもなれるというわけではありません。

調停委員が任命される要件は民事調停委員及び家事調停委員規則に規定されており、原則として40歳以上70歳未満の人で、以下の件のいずれか一つに該当する人です。

  • 弁護士となる資格を有する者
  • 民事または家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する者(医師、司法書士、税理士など)
  • 社会生活の上で豊富な知識経験を有する者(大学教授、会社役員、元公務員、民生委員など)

調停委員に決まった資格は必要ない

前述のとおり、調停委員に任命される要件は非常に抽象的な基準です。

「弁護士となる資格を有する者」という要件以外、基本的には調停委員に特定の資格を要求していないため、調停委員になるための決まった資格は不要と言えます。

つまり、調停委員は法律の知識がない一般の人からも任命されることがあるということになります。

「裁判所の調停委員」という肩書があるため、調停委員に対し、調停の当事者は裁判官のような法律の専門家をイメージすることもあります。

しかし、実際には、当事者と同程度の法律知識しかないということもあります。

調停を進めるにあたり、「調停委員が言ったから正しい」などと調停委員の言い分を鵜吞みにしないことも重要です。

離婚調停では男女1名ずつの調停委員が選任される

離婚調停では当事者は男性と女性という構図になるため、調停委員も男女1名ずつ選任されるというのが一般的です。

調停委員が男性だけまたは女性だけになってしまうと、当事者から偏った印象を抱かれてしまうためです。

男女1名ずつの調停委員を選任することで男性と女性の双方の意見を取り入れることができ、中立的な立場で調停を進めることが可能になります。

離婚調停は調停委員を味方につけることが重要

調停手続きは、当事者同士が顔を合わせて話し合いをするのではなく、調停委員が間に入り、調停委員を介して主張や反論を行います。

そのため、調停手続きの大部分は調停委員と話をすることになります。

離婚調停を有利に進めていくためには、調停委員を味方につけることが重要になります。

調停委員は中立的な立場で問題解決を図ることを求められます。

しかし、調停委員は裁判官などの法律の専門家ではないため、どうしても当事者のどちらか一方に肩入れしてしまうこともあります。

「調停は話し合いによる手続き」と言われていますが、話し合いの際に調停委員から相手を強く説得してもらうことができれば、有利な内容で調停を進めることが可能になります。

調停委員と接する際のポイントを押さえておくと、離婚調停で調停委員を味方につけることができる可能性があります。これについては次項で説明します。

離婚調停で調停委員と接するときのポイント

離婚調停で調停委員と接するときのポイント

調停委員を味方につけるためには、自分の主張が正当であることを調停委員に理解してもらう必要があります。

調停委員と接する際は以下のポイントに注意すると良いでしょう。

自分の主張をわかりやすく伝える

離婚調停で離婚を決断した経緯を説明する際、婚姻後から現在までの夫婦の生活状況を説明しなければならないことがあります。

婚姻期間が長い夫婦の場合、話すべき内容も多くなるため、すべてを話そうとするのはとても大変です。

また、調停委員も弁護士のように職業として紛争を取り扱っているわけではないため、当事者の話を聞いただけで、紛争の要点や解決策などを瞬時に理解できるわけではありません。

そのため、調停では話にメリハリをつけ、調停委員に理解してもらえるよう、必要なことを端的に伝えることが重要です。

周辺事情についても理解してもらったほうが良いという場合は、別途書面を作成し、書面を調停委員に読んでもらうことで対応すると良いでしょう。

自分の主張が正当なものであることを伝える

どれだけ自分の主張を伝えても、「正当な主張である」と理解してもらえなければ、調停委員を納得させることはできません。

このとき重要になるのは、その主張を裏付ける証拠があるかどうかということです。

たとえば、相手のDVやモラハラを離婚理由として主張する場合は、診断書や相手とのメールのやり取りなどを証拠として提示することで、より説得力のある主張を行うことができます。

冷静かつ誠実に対応する

調停委員と話をするときには、冷静かつ誠実に対応することも重要です。

調停委員も人ですから、感情的な態度や敵対的な態度をとっていると調停委員に与える印象も悪くなってしまいます。

悪い印象を持たれてしまうと、どれだけ正当な主張をしていたとしても、その正当性に疑問を抱かれることがあります。

離婚調停の際は、社会人として最低限のマナーを踏まえて接するように心がけましょう。

例えば、調停委員から気に障るような質問をされたとしても、感情的にならず落ち着いて誠実に受け答えすることが重要です。

服装について特に決まりはありませんが、男性であればスーツやネクタイ、女性であれば外出用の落ち着いた服装であれば「きちんとしている人」という印象を与えることができます。

相手方の言い分に反論しすぎない

離婚調停ではお互いが自分の言い分を言い合うことになります。

そのため、どうしても双方の言い分に対立が生じてしまいます。

もちろん、事実でないことについて反論することは必要ですが、必要以上に反論をしないことも重要です。

相手の言い分のすべてを否定していると、調停委員から「問題を解決する意思がない」と判断され、問題解決に向けて積極的に調整してもらえないおそれがあります。

主要な争点についてしっかりと反論をしたうえで、些末な争点については一定程度譲歩した姿勢を見せることで、調停委員に与える印象は変わってくるでしょう。

譲歩に応じない人間だと思わせる

調停は双方が歩み寄って解決を図る手続きですので、解決にあたって、調停委員が当事者に譲歩を求めることがあります。

お互いに同程度譲歩したうえで解決できるのが理想ですが、実際にはそううまくはいきません。

調停委員は、譲歩に応じてくれやすいほうに積極的に譲歩を迫る傾向があるため、有利な解決を望むのであれば、「簡単に譲歩に応じない人間である」と思わせる必要があります。

調停委員から譲歩を求められたとしても、簡単に応じるのではなく、具体的な理由をつけて相手に譲歩を求めるよう説得してもらうようにしましょう。

もっとも、何も譲歩しないという態度は、調停を長期化させるだけでなく調停委員に与える印象も悪くなるため、譲歩すべきタイミングを見極めて譲歩をしていく必要があります。

調停委員の考え方や価値観を認識しておく

調停委員に選任される方は50代から60代の方が大部分を占めています。

社会生活上、豊富な経験を有しているという要件からは、ある程度年齢を重ねた人が選任されるというのは当然の結果かもしれません。

夫婦生活や子育てに対する考え方は、それぞれの年代によって異なります。

そのため、自分の担当になった調停委員がどのような考え方や価値観を有しているかということを知っておくことで調停が進めやすくなることがあります。

当事者と調停委員は互いに初対面になります。

そのため、調停委員がどのような価値観を有しているかは、すぐに理解するのは難しく、何回か調停を重ねるなかで理解していくしかありません。

弁護士であれば、何度も同じ調停委員の事件を担当していることもあります。

そのため、担当となった調停委員の考え方や価値観を弁護士に聞いてみるのも一つの方法です。

調停不成立に備え、調停委員の言葉から読み取っておくべきこと

調停不成立に備え、調停委員の言葉から読み取っておくべきこと

お互いが解決方法に納得したとき、調停は成立することになります。

しかし、離婚調停は、離婚するかどうかだけでなく、親権や養育費、慰謝料、財産分与などの離婚条件でも争うことがあり、不成立や取り下げで終了することもあります。

調停不成立や取り下げで終了となった場合に備え、行った調停が無駄にならないよう、以下のことを調停委員の言葉から読み取っておきましょう。

相手方が何を主張しているのか

離婚調停が不成立や取り下げとなった場合、最終的に離婚訴訟に発展していくことになります。

訴訟になった際、どのようなことが争点となるのかを知っておけば事前に対策をとれるため、訴訟を有利に進めやすくなります。

具体的には、相手方が離婚理由として何を主張しているのか(不貞、DV、モラハラ、性格の不一致など)、親権についてはどのような考えなのか、財産分与として何を求めているのかなどを調停委員の言葉から読み取っておくと良いでしょう。

相手が握っている証拠や事実

訴訟では、当事者が自分の主張を裏付ける証拠を提出しなければならず、証拠の有無が勝敗を左右することになります。

どのような証拠を相手が握っているかを調停員の言葉から読み取っておくことで、その証拠が提出されたとしても慌てることなく反論をすることが可能になります。

また、相手方がどのような証拠を握っているかを知ることで、その証拠が持つ証明力を減殺するものをこちら側が事前に準備することも可能になります。

調停の段階でどのような証拠があるかを知ることは訴訟戦略的にも非常に有効です。

調停を不成立とするタイミング

調停で離婚を成立させるのか、訴訟で解決するのかという判断も非常に重要です。

調停では当事者の話し合いによって柔軟な解決が可能です。しかし、訴訟に発展した場合、法律に従った画一的な判断しかできません。

たとえば、慰謝料の支払い方法についても、調停であれば分割での支払いを認めてもらうことが可能です。

しかし、訴訟に発展し、判決となった場合は原則として一括での支払いが求められます。

このように、調停を不成立とするかどうかについては、訴訟に発展した場合のリスクを正確に把握したうえで判断する必要があります。

調停を不成立とするかどうかの判断は非常に専門的な問題ですので、弁護士に相談しながら決めていくと良いでしょう。

調停委員を交代することはできるのか

調停委員も人間です。担当になった調停委員の考え方や進め方に不満を抱くこともあるでしょう。

しかし、一度担当になった調停委員を交代することは原則として認められていません。

例外的に、当事者と調停委員が親戚関係にある場合などは、公平な進行が期待できないため、調停委員の交代が認められています。

しかし、調停委員の選任段階で調査が行われるため、そのような事態が起こるのは極めて稀なケースです。

基本的には、不満があっても調停委員の交代はできないため、できる限り調停委員とトラブルにならないように進めることを考えましょう。

調停委員に対して不満がある場合

調停委員に対して不満がある場合は、調停委員の交代ではなく調停を終了させることで対処することが可能です。

調停の申立人側であれば、いつでも調停を取り下げることができます。

相手方側の場合も、調停には応じない態度を明確にすることで調停を不成立にすることが可能です。

ただし、離婚調停が終了した場合、離婚訴訟に発展することになるため、訴訟となった場合のリスクを慎重に判断したうえで決めるようにしましょう。

また、調停委員の態度や発言に問題があるという場合、家庭裁判所の担当書記官に相談してみるのも一つの方法です。

裁判所から調停委員に注意がなされ態度が改善されることもありますし、余程ひどい場合には調停委員を変更してもらえるケースもあります。

ただし、苦情を述べたことが調停委員に伝わり、そのことが原因でさらに関係が悪くなる可能性もあるため、注意が必要です。

調停委員への対応が不安なときは弁護士に依頼

調停委員への対応が不安なときは弁護士に依頼

離婚調停を有利に進めていくためには、調停委員への対応が重要になります。

調停では配偶者と直接顔を合わせて話さなくても良いという意味では安心ですが、初対面の調停委員に対して紛争の要点をわかりやすく説明しなければならないという負担があります。

初めての調停では、「どのように話せば良いのか」「調停委員からの提案に応じたほうが良いのか」などわからないことが多く、不安を感じることも少なくありません。

弁護士に依頼し、調停の際に弁護士に同席してもらうことで、調停委員の質問に対する受け答えなどについてサポートしてくれます。

また、弁護士が入ることで、争点に絞った充実した話し合いができ、当事者同士で進めるよりも少ない期日で解決にいたる可能性が高くなります。

さらに、証拠提出のタイミングや調停を終了させるタイミングなどについても、弁護士の経験に基づいた適切なタイミングで行うことができ、調停を有利に進めることができます。

調停委員への対応に不安を感じたら弁護士に相談をすることをおすすめします。

まとめ

離婚調停では調停委員との関わり方が重要です。調停委員と接する際は、ここで解説したポイントを踏まえて対応するようにしましょう。

弁護士に依頼すると、調停委員への対応だけでなく、離婚問題全体の解決にあたってサポートしてもらえます。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚や調停に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

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