家事手続案内とは?家庭裁判所で相談できること、できない時の相談先
家庭裁判所は家事事件と少年事件を扱う裁判所です。
家事事件について悩みがあるものの、どのような手続きをとれば良いかわからないといった場合は家事手続案内を利用すると良いでしょう。
この記事を最後まで読むことで以下のことがわかります。
・家事手続案内で相談できること・できないこと
・家事手続案内を利用するメリット
・家事手続案内で相談できないときの相談先
・家事事件手続案内利用後の流れ
家事手続案内で相談できること
裁判所には以下の種類があります。
- 最高裁判所
- 高等裁判所
- 地方裁判所
- 家庭裁判所
- 簡易裁判所
このなかで、家庭裁判所は家庭に関する問題を管轄します。例えば、子供や夫婦、後見、養子縁組、相続といった問題は家庭裁判所の管轄になります。
家庭裁判所の家事事件手続案内は、家事事件(家庭の問題)の手続きに関する相談窓口です。
スーパーのサービスカウンターや百貨店のお客様相談窓口を想像してもらうとわかりやすいでしょう。
家事手続案内では、家庭裁判所が取り扱う家事事件の手続きについて教えてもらうことができます。
家庭裁判所が運営していますが、調停や裁判といった法的手続きを行うわけではありません。
家事手続案内で相談できることには以下のようなものがあります。
- 家庭裁判所の利用条件や手続きについて
- 審理期間に関すること
- ほかの相談先や関係機関の情報
それぞれ以下で詳しく説明します。
家庭裁判所の利用条件や手続きについて
家事手続案内では家事事件の利用条件や手続きの流れについて相談できます。 例えば、以下のような相談が可能です。
- 家庭裁判所で利用できる手続の概要・流れ
- (窓口に来た人が)離婚調停を申立てできるのか
- (窓口に来た人が)問題解決のために家庭裁判所を利用できるか
- 離婚調停はどのように申立てをすれば良いのか
- 離婚調停の申し立て費用はいくらかかるのか
- 離婚調停の申立てに必要な書類を教えてほしい
- 離婚調停の申立書の記載方法がわからない
- 家庭裁判所の手続終了後の流れ など
審理期間に関すること
離婚調停や裁判など、家庭裁判所の手続きを利用した場合、解決までどれくらいかかるのか不安な方もいるでしょう。
家事手続案内では、希望する手続きについて、解決まで一般的にどれくらい時間がかかるのかを教えてくれます。
ほかの相談先や関係機関の情報
相談に来た人の抱える問題が家庭裁判所の管轄外である場合や家庭裁判所以外解決策を望む場合に関係機関を紹介することもあります。
家事手続案内が紹介する相談先としては以下のようなものがあります。
- 弁護士会
- 法テラス
- 配偶者暴力相談支援センター など
家事手続案内で相談できないこと
家事事件手続案内はあくまで家事事件の手続きに関する相談窓口です。以下の内容については相談の対象外となります。
- 家事事件以外のこと
- 身上相談
- 法律相談
- 係属中の事件に関すること
- 弁護士の紹介
それぞれ以下で詳しく解説します。
家事事件以外のこと
家事手続案内で相談できるのは家事事件に関するものに限られます。そのため、家庭外の第三者とのトラブルは家事手続案内の対象外です。
ただし、不倫相手への慰謝料請求に関する手続きについては相談に応じてもらえます。
身上相談
「離婚したほうがいいのか」「関係修復すべきか」などの身上相談もできません。
離婚すべきか、やり直すべきかなどの相談は弁護士やカウンセラーなどに相談することをおすすめします。
法律相談
家事手続案内で受け付けている相談は家庭裁判所の手続きに関する内容です。法律相談はできません。
例えば、以下のような内容は家事手続案内で相談できません。
- 離婚調停を申し立てれば離婚できそうか
- 自分の場合、婚姻費用や養育費はいくらになるのか
- このような事情があるが、どのくらいの慰謝料がもらえるか
- 自分の場合は慰謝料請求が認められるのか
- 財産分与は請求できるのか
- 配偶者の不貞行為を証明するにはこの証拠で足りるのか
- 裁判をしたらどのような判決が出るか など
係属中の事件に関すること
すでに係属中の事件に関する相談もできません。例えば、以下のような内容は家事手続案内では相談できません。
- 次回の調停期日でどのように主張すればよいか
- どうすれば次の調停を有利に進められるか など
弁護士の紹介
家事手続案内では法律相談はできません。このとき「それなら弁護士を紹介してほしい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、家事手続案内が特定の弁護士を紹介することはできません。どこに相談すれば良いかといったことは教えてもらえます。
家事手続案内を利用する流れ
家事手続案内を利用する流れは以下となります。
- 家庭裁判所に出向いて受け付けを行う
- 番号が呼ばれるまで待合室で待つ
- 相談を行う
それぞれ順を追って説明します。
家庭裁判所に出向いて受け付けを行う
家事手続案内は家庭裁判所内にあります。そのため、まずは受付時間内に家庭裁判所に出向き、受付を行います。
家事手続案内は事前予約が不要ありません。最寄りの家庭裁判所に直接出向きます。
受付時間は裁判所によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。下記は一例です。
【東京家庭裁判所】
受付は1解の家事訴訟事件係(受付)となります。
平日(祝日、12月29日~1月3日を除く)の午前8時30分~12時00分までと、午後1時00分~午後17時00分が受付時間です。
参考:裁判所「東京家庭裁判所家事手続案内( https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/kasai_tetuzuki/index.html)」※1
【大阪家庭裁判所(本庁)】
月曜日から金曜日(祝祭日及び年末年始を除く)の午前9時30分~午前11時30分までと、午後1時から午後3時30分が受付時間です。
参考:裁判所「家事手続案内について( https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/l3/Vcms3_00000406.html)※2
番号が呼ばれるまで待合室で待つ
受付を行ったら、番号札を取って待合室で待ちます。 受付は番号札をとるだけで、その他の手続きは不要です。
自分の番号が呼ばれるまで待ちましょう。
相談を行う
番号が呼ばれたら相談を行います。家事手続案内は1件20分程度の相談が可能です。なお、家事手続案内では電話相談は行っていません。
家事手続案内を利用するメリット
家事手続案内を利用するメリットには以下のようなものがあります。
- 無料・予約なしで利用可
- どこの家庭裁判所でも利用できる
- 家庭裁判所の雰囲気を知ることができる
無料・予約なしで利用可
家事手続案内は無料で利用できます。また、事前予約や受付書類も不要です。
相談したい家庭裁判所に直接出向いて番号札を取り、自分の番が来たら相談するだけです。
どこの家庭裁判所でも利用できる
調停の申し立ては原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
一方、家事手続案内は全国どこの家庭裁判所でも利用できます。
家庭裁判所は全国50か所あるため、まずは最寄りの家庭裁判所を利用すると良いでしょう。
参考:裁判所「各地の裁判所一覧(https://www.courts.go.jp/courthouse/map/map_list/index.html)」※3
家庭裁判所の雰囲気を知ることができる
離婚調停を申し立てたいと思っても、裁判所を利用することに抵抗を感じる人もいるのではないでしょうか。
家事手続案内を利用すると、裁判所の職員に相談できます。そのため、裁判所の雰囲気や職員がどのような対応なのかを把握できます。
家事手続案内利用後の流れ
家事手続案内で相談し、「調停を申し立てるしかない」と思ったら、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
離婚調停の申立ての流れは以下となります。
- 離婚を希望する側が申立書を作成して家庭裁判所に提出する
- 申立て後1~2週間程度で裁判所から呼出状が届く
- 調停期日が開かれ、調停委員と話し合う
- 調停期日を数回繰り返す
- 調停が成立または不成立
離婚調停が不成立になった場合は離婚訴訟を提起するか、再度夫婦で協議することになります。
なお、日本の家事事件は調停前置主義を採っており、離婚調停を経ずにいきなり離婚訴訟を提起することはできません。
家事手続案内で相談できない問題の相談先
家事手続案内では相談できない問題の相談先としては以下のようなものがあります。
- 法テラス
- 弁護士会
- 市区町村役所・役場
- 夫婦カウンセラー
- 配偶者暴力相談支援センターや警察
- 探偵事務所・興信所
- 心療内科・精神科
- 離婚問題に強い弁護士
法テラス
法テラスは国が設立した機関で、正式名称を日本司法支援センターと言います。
法律問題について相談できるのは弁護士だけです。法テラスでは刑事以外(民事、家事、行政)の問題について弁護士に相談できます。
資産や収入要件を満たせば、同一の問題について3回まで無料で相談できます。また、収入や資産の条件を満たせば、弁護士に依頼時の費用の立替も行っています。
参考サイト:日本司法支援センター「法テラス(https://www.houterasu.or.jp/)」※4
弁護士会
弁護士会は弁護士法に基づいて設立された団体で、弁護士や弁護士法人を構成員として形成されています。
原則として地方裁判所の管轄区域ごとに設置されており、法律相談や弁護士の紹介を行っています。
法律相談の実施の有無や日時については弁護士会によって異なります。
自分の住所を管轄する弁護士会が無料相談を実施しているかどうかについては、お住まいの地域の弁護士会か、日弁連の「ひまわりお悩み110番」に電話をして確認しましょう。
日本弁護士連合会「ひまわりお悩み110番」 TEL:0570-783-110(通話料がかかります)
「ひまわりお悩み110番」はお近くの弁護士会が運営する法律相談センターに電話がつながります。
URL:https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/search/himawari110.html※5
市区町村役所・役場
自治体によっては市区町村役所・役場で法律相談を実施していることもあります。
市区町村役所・役場の法律相談は無料で気軽に相談できるのがメリットです。
ただし、自治体によっては法律相談を実施していない場合があるため、必ず事前に確認しましょう。
夫婦カウンセラー
夫婦カウンセラーには様々な夫婦問題を相談できます。離婚するかどうかだけでなく、関係を修復したい場合にも相談できます。
また、相談者の精神的なケアを行いながら離婚相談に応じてもらえます。
なお、カウンセラーは法律面での相談は行っていません。相談費用についてはカウンセラーによって異なるため、事前に確認しましょう。
配偶者暴力相談支援センターや警察
DVでお悩みの方はお住まいの地域の配偶者暴力相談支援センターや警察に相談しましょう。
配偶者暴力相談支援センターや警察ではDVの相談だけでなく、状況に応じて一時的に保護してもらえます。
参考:内閣府男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センターの機能を果たす施設一覧(http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/pdf/center.pdf)」 ※6
探偵事務所・興信所
探偵事務所・興信所は依頼内容に沿って証拠を集めてくれます。
相手方が不倫をしていて、離婚したいと考えているが、証拠がないという場合は探偵事務所や興信所に相談すると良いでしょう。
探偵の選び方については下記記事を参考にしてください。
心療内科・精神科
離婚問題で悩み、疲弊してしまった 食欲不振や不眠がある このような場合は精神科や心療内科を受診しましょう。
離婚問題でストレスが溜まり、心身が疲弊してしまうと、正常な判断ができなくなる恐れがあります。
離婚問題の直接的な解決にはなりませんが、心療内科や精神科を受診することで心身の回復のサポートをしてもらえます。
離婚問題に強い弁護士
- どうすれば離婚を有利に進められるか知りたい
- 相手方が離婚に同意してくれない
- 慰謝料を請求したい
- 離婚条件で折り合いがつかない
上記のようなお悩みには法的知識が必要です。離婚問題に強い弁護士に相談しましょう。
法テラスや市区町村役所・役場でも弁護士に相談できますが、必ずしも離婚問題に強い弁護士が対応するとは限りません。
離婚問題を有利に進めたいなら離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
離婚問題に強い弁護士の選び方については下記の記事を参考にしてください。
まとめ
家事手続案内では「離婚すべきかどうか」「慰謝料は取れそうか」といった身上相談や法律相談はできません。
一方、離婚調停の手続きの流れや手続き方法などは相談が可能です。
家事手続案内で相談できない問題については弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士を選ぶ際は離婚問題に強い弁護士を選びましょう。離婚問題に強い弁護士なら法的な知識だけでなく、豊富な経験に基づいたアドバイスがもらえます。
最近は無料相談を実施している法律事務所も増えていますので、費用が気になる方はそういった検討されてはいかがでしょうか。
※1 裁判所「東京家庭裁判所家事手続案内」
※2裁判所「家事手続案内について」
※3裁判所「各地の裁判所一覧」
※4日本司法支援センター「法テラス」
※5日本弁護士連合会「ひまわりお悩み110番」
※6内閣府男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センターの機能を果たす施設一覧」
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