義両親との同居が理由で離婚できる?離婚する方法と円満な同居生活を送るコツ
義両親の高齢化や介護、育児など、さまざまな事情で義両親と同居している家庭も少なくありません。
結婚したからには義両親とも円満に過ごしたいものですが、一緒に生活すればトラブルも起きやすくなります。
義両親との同居でトラブルが積み重なり、我慢できなくなって離婚したいと考える方もいるでしょう。
この記事では、義両親との同居を理由に離婚できるのかについて解説します。
義両親との同居でお悩みの方や同居を解消したい、同居を理由に離婚したいとお考えの方は最後までお読みください。
- 目次
義両親との同居は離婚率を高めると言われる理由
義両親と別居している夫婦より同居している夫婦のほうが離婚率は高いとよく言われますが、正確なデータがあるわけではありません。
一方、令和2年の司法統計の結果によると「家族親族と折り合いが悪い」という離婚理由が夫側の理由で5位、妻側の理由で11位に入っています。
義両親と別居しても折り合いが悪くなり離婚するケースもあります。しかし、同居していると義両親と適度な距離が取れないため、別居と比べてストレスが溜まりやすくなります。
同居すれば義両親と衝突する頻度も増えてしまいます。相手のことが好きで結婚したとしても、義両親のことは好きになれないことも珍しくありません。
以上のことから、義両親の同居は離婚の原因になりやすいと言えるでしょう。
参考:裁判所「家事令和2年度第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別(https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/253/012253.pdf)」※1
義両親との同居が理由で離婚できるのか
義両親との同居を理由に離婚できるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
夫婦で合意できれば離婚できる
夫婦が話し合いで合意できれば、どのような理由でも離婚は成立します。そのため、夫婦が合意すれば義両親との同居が理由であっても離婚は可能です。
しかし、夫婦のどちらか一方が離婚したくないと考えている場合や、離婚条件が折り合わない場合は話し合いで離婚するのは難しくなります。
法定離婚事由がなければ裁判で離婚は認められない
話し合いで離婚の合意が得られない場合、最終的には裁判で離婚を争うことになります。
しかし、裁判で離婚を認めてもらうためには民法で定める法定離婚事由が必要です。法定離婚事由とは下記の5つになります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
義両親との同居は法定離婚事由には該当しません。また、離婚が認められるかどうかは、あくまで夫婦の問題になります。
そのため、義両親との同居だけを理由に裁判で離婚が認められることは難しいでしょう。
義両親との同居で起こりやすいトラブルとは
義両親と同居するとどのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか。
嫁姑問題
義両親との同居トラブルのなかでも典型的なものが嫁姑問題です。姑と妻の性格や価値観の不一致により意見の衝突を引き起こします。
別居していれば適度に距離をとることができますが、同居していると適切な距離をとることができません。
意見の違いが積み重なり、不信感や嫌悪感が生まれ、関係が悪化していきます。
一度関係が悪化してしまうと、料理や掃除、子育てなど些細なことがきっかけでトラブルに発展しやすくなります。
こうした嫁姑問題は解決が難しく、同居の解消や離婚にいたる夫婦も珍しくありません。
金銭問題
義両親と同居していると金銭問題も生じやすくなります。
特に義両親の住宅ローンや浪費癖、借金などの金銭問題が発覚したり、生活費の分担で不満が生じたりすると関係性が崩れやすくなります。
お金の問題は話しづらいこともあり、自分達がすべて補うことになるケースもあります。
義両親との関係が悪くなることを避けるためにも、同居を始める前に金銭面についてしっかりと話し合っておきましょう。
夫婦関係の悪化
義両親との同居が夫婦関係を悪化させるケースも多いです。
義両親と良好な関係を続けるには配偶者の協力が必要不可欠です。
しかし、配偶者が自分の味方をしてくれない場合や面倒臭がって何も言ってくれないなどの場合は、夫婦間に亀裂が生じてしまいます。
ただでさえ義両親との同居はストレスが多いというのに、夫婦関係まで悪化すればよりストレスが増大します。
溜まったストレスを発散できず、我慢できなくなれば、離婚したいと考えることもあるでしょう。
円満な同居生活を送るには
義両親との同居ではさまざまなトラブルが起きやすくなります。トラブルを防ぎ、円満にすごすためにすべきことを解説します。
義両親と同居前にすべきこと
義両親と円満に同居生活を送るためにも同居前にすべきことがあります。
夫婦で認識をすり合わせておく
義両親との同居ではありますが、優先すべきは夫婦の在り方です。義両親との同居について認識に違いがあれば、同居後に夫婦間のトラブルに発展しかねません。
同居を決める前に、まずは夫婦で義両親との同居に対する認識や考え方のすり合わせをしておきましょう。
生活スペースをわける
円満な同居生活を過ごすには、互いに適度な距離を保つことが大切です。
生活スペースをわけずに同居すれば、毎日何度も義両親と顔を合わせることになります。そうすると適度な距離を保つことができません。
適度な距離を保てずにいると、互いに不満や嫌悪感が生まれてトラブルに発展してしまう可能性があります。
生活スペースをわけておけば、無理してどちらか一方の生活スタイルに合わせる必要もなくなり、不満やストレスが生じにくくなるでしょう。
ルールを決めておく
同居するにあたり、義両親を含めて家族全員でルールを決めておくことも重要です。
生活や家事だけでなく、生活費や住宅ローンなどのお金に関するルールなどもしっかりと話し合って決めておきましょう。
あらかじめルールを決めておけば同居後にトラブルになることを避けられます。
義両親と同居後にすべきこと
義両親との同居によるトラブルを防ぐためにも、同居後にやるべきことを知っておきましょう。
夫に相談・協力を仰ぐ
義両親と円満な同居生活を送るには夫のサポートが必要です。義両親とトラブルが起こっても夫に相談し、話を聞いてもらうことができればストレスを軽減できます。
協力を仰ぎ、自分の味方についてもらえば心強いものです。 嫁という立場で義両親には強く言えないことも多いでしょう。
しかし、夫に協力してもらえれば言いにくいことも言いやすくなります。
義両親とコミュニケーションを取る
同居するのであれば義両親とのコミュニケーションも大切です。
基本的なコミュニケーションを疎かにしてしまうと、小さなトラブルが大きな問題に発展する可能性もあります。
日頃からこまめにコミュニケーションを取るように心がけ、互いを知り、信頼関係を築いていけば円満な同居生活が送れるはずです。
義両親と顔を合わせる時間や機会を減らす
前述のとおり、同居後も義両親と生活スペースを別にしたり、別途夫婦の部屋を設けたりすることにより、義両親と顔を合わせる時間や機会を減らせます。
顔を合わせる時間や機会を減らすことで、トラブルを避けることができますし、問題が生じても気持ちが落ち着くまで顔を合わせずに済みます。
生活スペースをわけることができない場合は仕事や趣味を作って外に出ることも良いでしょう。
ストレス解消法を見つける
表面上は円満に過ごしていたとしても、義両親との同居はストレスが生じるものです。
ストレスを溜め続けていれば、いつか限界を迎えてしまいます。ストレスは溜めこまず、上手に解消する方法を見つけてください。
友人と出かける、外に散歩に行く、運動するなど上手に気分転換をしましょう。
義両親との同居を解消する方法
どうしても義両親との同居生活が上手くいかず、同居を解消したいと考えている方もいるでしょう。
義両親との同居を解消するためにできることを紹介します。
夫婦で話し合う
義両親との同居を解消するには、まず夫婦で話し合う必要があります。夫に同居を解消したい旨を伝えたうえで、夫の意見も聞いてみてください。
義両親に話すのは夫婦間で話がまとまってからにしましょう。
同居を解消したからといって義両親と関係性が崩れるとは限りません。冷静に話し合いを進め、同居しないほうが互いにとってメリットがあることを説明しましょう。
夫をモデルルームに連れて行く
夫と一緒にモデルルームに行くのもおすすめです。
夫は義両親との別居や家の購入を考えていないかもしれません。しかし、何かと理由をつけてモデルルームに連れていけば新居へのあこがれが生じるかもしれません。
ただし、夫がその気にならなければ意味がないため、夫が気に入りそうな物件を選んで連れて行くようにしましょう。
就職・転職する
同居を解消できない理由が金銭問題であれば、就職や転職を検討してみましょう。
現在よりも収入が増える条件で転職したり、あなたが専業主婦の場合は就職したりすることで同居解消について説得しやすくなるでしょう。
関連記事≫≫
離婚後の仕事の探し方|主婦がすぐに働ける方法
離れを建てる
同居の解消が難しい場合、離れを建てるという選択肢もあります。
敷地にゆとりがなければ実現は難しいですが、離れを建てれば敷地内とはいえ別居ができます。建屋が違えば、義両親と顔を合わせる頻度はかなり減るはずです。
子供の受験や教育環境を理由に説得する
子供が成長すると手狭になったり、受験に備えて教育環境を整えたりする必要があります。
子供の教育や成長を理由に同居解消について説得すれば、理解が得られやすくなります。
子供への悪影響を懸念していることを伝える
母と祖父母がいがみ合っている状況や、両親が喧嘩ばかりしている状況は子供にとって良い環境とは言えません。
また、祖父母が子供の教育に干渉してきたり、過剰に甘やかしたりするような状況も好ましくありません。
義両親との同居が子供に悪影響をおよぼすことを理由に同居解消を提案すれば、夫も受け入れやすくなります。
自分だけ別居する場合
義両親との別居に夫が同意してくれない場合、離婚せずに自分だけが別居するということはできるのでしょうか。
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夫婦が別居するさまざまな事情|ケース別の別居方法や対策を紹介
別居中の生活費相場の算出方法|婚姻費用を請求する
夫婦には同居義務がある
夫婦には同居の義務があり、民法752条に「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。
そのため、夫の同意を得ずに自分だけ別居すると同居義務に違反することになります。
同居義務に違反すれば、離婚事由の一つである悪意の遺棄と判断されて離婚請求される可能性があります。
夫の同意を得る
同居義務違反にならないようにするためには、別居について夫の同意を得る必要があります。
「別居したいが離婚はしたくない」ということであれば、夫の同意が得られるように話し合いましょう。
なお、同意してもらいやすくするためにも、話し合いの際は感情的にならず、冷静に話し合うことを心がけましょう。
別居先の住居を探し、貴重品を確保しておく
夫から別居の同意が得られたら別居先の住居を探します。
夫がなかなか別居に同意してくれない場合も、別居先を探す姿勢を見せると良いでしょう。別居に対する妻の覚悟に心動かされ、夫も決心がつくかもしれません。
なお、万が一の場合に備えて貴重品は必ず自分で確保しておきましょう。
別居を切り出した場合、別居を阻止しようとされる可能性もあります。貴重品についてはしっかりと自分で保管し、いつでも持ち出せるようにしておきましょう。
別居の準備ができたら義両親にも別居の意志を伝える
別居の準備がある程度整った段階で義両親に別居の意思を伝えましょう。
義両親が別居に反対した場合、嫌がらせを受ける可能性があるため、準備が整ってから伝えることで被害を最小限に抑えられます。
別居の意思を伝える際は、「義両親に嫌われても仕方がない」という覚悟を持って伝えるようにしましょう。
子供を連れて別居する場合
子供を連れて別居した場合も同様に離婚や慰謝料を請求される可能性があります。
なお、別居を始めた理由や話し合いの状況、別居の仕方によって「違法な連れ去り」と判断されれば、親権争いで不利になる場合もあります。
とはいえ、子供を置いて自分だけ家を出てしまう行為も親権争いで不利になります。「子供を連れて別居したい」と考えたら弁護士に相談し、慎重に行動しましょう。
義両親との同居を理由に離婚するには
義両親との同居を理由に離婚するためには、どのように離婚を進めればいいのでしょうか。
夫婦で話し合う
義両親との同居だけが理由で離婚したいのであれば、まずは夫婦で話し合いましょう。
義両親との同居だけが理由の場合、裁判では離婚が認められないため、話し合いで合意を得るしかありません。
なお、離婚すること自体に合意できたとしても、財産分与や親権など離婚条件で合意が得られない場合もあります。
そのため、互いの主張する条件を照らし合わせながら冷静かつ慎重に話し合うことが大切です。
夫が離婚に応じない場合
夫が離婚に応じない場合でも、相手方に法定離婚事由に該当する行為があれば離婚できます。
夫婦関係が破綻している場合や不倫、DVなど法定離婚事由に該当する行為を立証することができれば離婚が認められるということです。
法定離婚事由がある場合は、できるだけ多く証拠を集め、離婚成立に向けて準備をしましょう。
弁護士に相談・依頼する
法定離婚事由に該当する行為があれば離婚できますが、証拠集めや法定離婚事由があることを客観的に立証することは自分だけの力では難しいものです。
義両親との同居を理由に離婚を考えたら弁護士に相談し、アドバイスを受けながら対処するようにしましょう。
なお、弁護士に依頼することで離婚を有利に進めやすくなり、手続きなども全て任せることができるため、ストレスを軽減し、手間も時間も省くことができます。
まとめ
義両親との同居だけが理由で離婚するのは難しいのが実情ですが、法定離婚事由に該当する行為があれば離婚することもできます。
離婚を少しでも有利に進めるためにも、弁護士に相談しながら進めるようにしましょう。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 裁判所「家事令和2年度第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」
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