離婚の養育費の相場|できるだけ多くもらう方法とは
子供を持つ方が離婚する場合、親権はどちらが持つのか、養育費はいくらもらえるのかといったことが気になると思います。
この記事では、離婚時の養育費の算出方法や相場、できるだけ多く養育費をもらう方法について解説します。
- 目次
養育費とは
養育費とは、子供を健全で文化的に育てる際に必要な費用のことです。
離婚では、未成年の子供が経済的に自立するまでの間、親権を持たない親が支払い続ける費用のことを指します。
養育費の金額はどうやって決まるのか
養育費は夫婦の話し合いで決めていきますが、話し合いが成立しない場合は調停を申し立て、裁判所の手続きで決めることになります。
話し合いで合意できれば養育費はいくらでもかまいません。しかし、裁判所の養育費算定表を用いて金額を決めるというのが一般的です。
養育費算定表では養育費の支払い義務者と権利者それぞれの収入と養育する子供の年齢、人数などを加味して決めることになります。
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養育費の相場は算定表を使って算出する
具体的に算定表を使って養育費の相場を算出してみます。
なお、ここで紹介する事例はすべて親権者が専業主婦(収入がない)ケースを想定しています。
養育費算定表は子供の人数と年齢でわかれており、縦軸に支払義務者の年収、横軸に権利者の年収が記載されています。
該当する算定表を選び、縦軸と横軸の交差するところが養育費の金額になります。
参考:裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
子供が1人(5歳)の場合の相場
0歳から14歳までの子供が1人の場合、養育費の算定表は以下となります。
引用元:裁判所「(表1)養育費・子1人表(子0~14歳)」
支払義務者の年収が400万円の場合
0歳から14歳までの子供が1人、養育費支払い義務者の年収が400万円の場合、給与所得者で4~6万円、自営業者で6~8万円が養育費の相場となります。
支払義務者の年収が600万円の場合
0歳から14歳までの子供が1人、養育費支払い義務者の年収が600万円の場合、給与所得者で6~8万円、自営業者で8~10万円が養育費の相場です。
支払義務者の年収が800万円の場合
0歳から14歳までの子供が1人、養育費支払い義務者の年収が800万円の場合、給与所得者で10~12万円、自営業者で12から14万円が養育費の相場となります。
子供が2人(5歳と8歳)の場合の相場
0歳から14歳までの子供が2人の場合、養育費の算定表は以下となります。
引用元:裁判所「(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)」
支払義務者の年収が400万円の場合
0歳から14歳までの子供が2人、養育費支払い義務者の年収が400万円の場合、給与所得者で6~8万円、自営業者で10~12万円が相場です。
支払義務者の年収が600万円の場合
0歳から14歳までの子供が2人、養育費支払い義務者の年収が600万円の場合、給与所得者で10~12万円、自営業者14~16万円が相場です。
支払義務者の年収が800万円の場合
0歳から14歳までの子供が2人、養育費支払い義務者の年収が800万円の場合、給与所得者で14~16万円、自営業者で18~20万円が相場です。
子供が3人(5歳と8歳と14歳)の場合の相場
0歳から14歳までの子供が3人の場合、養育費の算定表は以下となります。
引用元:裁判所「(表6)養育費・子3人表(第1子、第2子及び第3子0~14歳)」
支払義務者の年収が400万円の場合
0歳から14歳までの子供が3人、養育費支払い義務者の年収が400万円の場合、給与所得者で8~10万円、自営業者で10~12万円が相場となります。
支払義務者の年収が600万円の場合
0歳から14歳までの子供が3人、養育費支払い義務者の年収が600万円の場合、給与所得者で12~14万円、自営業者で16~18万円が相場となります。
支払義務者の年収が800万円の場合
0歳から14歳までの子供が3人、養育費支払い義務者の年収が800万円の場合、給与所得者で16~18万円、自営業者で22~24万円が相場となります。
離婚後の養育費を多くもらうには
原則として、養育費の支払いは子供が20歳になるまで続きます。そのため、養育費を少しでも多く受け取ることが重要になります。
養育費の相場を知っておく
請求する養育費の金額が相場からかけ離れていると、いくら請求しても合意が得られず、適正な金額がもらえなくなる可能性があります。
相場の金額を把握しておくことで、養育費を請求した際に合意を得やすくなります。
配偶者の収入を把握しておく
養育費は支払義務者と権利者の収入で決めていきます。そのため、相手方の収入を把握しておくことが重要です。
同居している段階で、配偶者が給与所得者の場合は給与明細、自営業者の場合は確定申告書の控えなどを確認しておくようにしましょう。
今後子供の教育にいくらかかるかシミュレーションしておく
教育費は教育計画によって大きく変わります。しかし、子供が小さいときは、今後どのような進路を選択するかわかりません。
例えば、大学卒業まですべて公立に進んだ場合とすべて私立で医歯薬系に進んだ場合とでは学費に数千万円程度の差があります。
また、塾や習いごとをした場合はもっと費用がかかります。
子供が小さい場合は教育に充てられる費用について余裕を持って決めておくことが重要です。
そのためには、現段階で予定している学習計画を立て、それに基づいて養育費の交渉を行います。
例えば、以下のように具体的な教育計画を書面に記載し、交渉を行うと良いでしょう。
- 〇〇幼稚園に通わせる(保育料年間△△円)
- 小学校3年生から塾に通わせる(授業料年間▲▲円)
- 高校は私立の進学校に通わせる(授業料年間■■円) など
なお、保育料や授業料などはおおよその相場を提示しておくと良いでしょう。
協議離婚を目指す
夫婦の話し合いであれば、養育費の金額はいくらでもかまいません。
一方、調停や裁判に進んだ場合は前述の算定表に基づいて養育費を算出します。
そのため、算定表以上の金額を受け取りたいという場合は協議離婚を目指すことが重要です。
養育費の支払い期間
養育費の支払い期間は子供が20歳になるまでというのが原則です。
しかし、状況に応じて大学を卒業するまで、22歳になるまでと決めることも可能です。
例えば、4年制大学をストレートで卒業した場合、子供は22歳になっています。
養育費の支払いを20歳までと決めていた場合、大学卒業までの2年間は養育費の支払いが受けられないことになります。
そのため、養育費の支払い終期を「大学卒業まで」「22歳になるまで」とするケースもあるのです。
また、両親の学歴などを鑑みて「大学に行くのが妥当」と判断された場合は養育費の支払い終期を大学卒業までとすることが認められるケースもあります。
一方、子供が高校を卒業し、就職したケースでは高校を卒業した段階で支払いが終わることもあります。
養育費の不払いを防ぐために
養育費について取り決めたとしても、離婚後、支払いが滞ったり、取り決めた金額を支払ってくれないこともあります。
ここからは養育費の不払いを防ぐ方法について見ていきます。
養育費の不払いが社会問題となっている
厚労省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果」によると、母子家庭の8割程度が養育費の支払いを受けていないことがわかっています。
養育費の不払いは子供の貧困につながると言われており、大きな社会問題となっています。
参考:厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188147_00013.html)」※1
養育費は公正証書に残す
夫婦間の協議で離婚が成立した場合、取り決めた内容について離婚協議書を作成し、公正証書にしておきましょう。
このとき、強制執行認諾文言を付与しておくことが重要です。
強制執行認諾文言付き公正証書を作成していることで、養育費の不払いが起きた際、裁判を経ることなく強制執行を行うことができます。
なお、調停離婚や裁判離婚など裁判所の手続きによって離婚した場合も、調停調書や確定判決があるため、強制施行を行うことができます。
養育費を一括払いしてもらう
一般的に養育費は毎月定額を支払うものです。しかし、長期間きちんと支払ってもらえるか心配だと言う場合は一括払いにすることも可能です。
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養育費を強制執行(差し押さえ)で回収するには|必要な手続と条件を解説
一括払いで養育費を受け取ると贈与税が課税される可能性がある
養育費の一括払いとなると、かなりの金額になります。状況によっては贈与税が課される可能性もあるため注意する必要があります。
養育費が支払われなくなったときの対処法
では、養育費が支払われなくなったらどうすれば良いのでしょうか。
協議離婚で養育費の合意をした場合
協議離婚で養育費を決めた場合、公正証書を作成しているかどうかで対処法が変わります。公正証書がない場合は養育費請求調停を行い、養育費を請求します。
養育費請求調停を行っても相手方が出廷しない場合は審判に進み、審判書が発行されます。
調停調書または審判書があれば、相手方の銀行口座や給与を差し押さえることができます。
協議離婚で養育費の合意をし、公正証書を作成した場合
公正証書を作成している場合、調停や審判を経ずに相手方の財産を差し押さえることができます。
公正証書の作成には費用がかかります。しかし、トラブルを防ぐためにも、協議離婚の場合は公正証書を作成しておきましょう。
調停や裁判で養育費を決めた場合
調停や裁判で養育費を決めた場合、まず裁判所から相手方に履行勧告・履行命令をしてもらいます。
裁判所からの勧告・命令ですので、プレッシャーを感じて養育費を支払ってくれる可能性もあります。
ただし、履行勧告や履行命令には強制力はないため、相手方が命令に応じない場合は強制執行を行い、給料や銀行口座を差し押さえることになります。
まとめ
養育費の相場について解説しました。
養育費は子供を養育するために必要な費用です。適正な金額を請求し、不払いを防いでおくことが重要です。
養育費の適正な金額や交渉については弁護士に相談しながら、しっかりと進めていくことをおすすめします。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は養育費など離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
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