離婚時に父親が親権を獲得する方法|養育実績と環境が子供の行き先を決める

自分は父親です。夫婦仲はもはや修復不能にまでなってしまったので離婚は避けられませんが、親権を妻に渡したくないのです。
一方の妻。絶対に子供と離れたくありませんが、どうにかして夫に奪われてしまうのではないかと戦々恐々……。
一般的に親権は母親に渡ることが多いのですが、どういった場合に父親に有利になるのか、これから説明していきます。
- 目次
離婚後の親権は多くの場合母親になる
子供が生まれてからこれまで、どれだけの時間一緒にいられたでしょうか。
働いて家にいないことが多い父親より、母親の方が子供と接する時間が長いものです。
そのため、子供の生活や利益について考えると、特に10歳未満の子供の親権については、特別な事情がない限り通常母親になるとされます。
たとえ裁判で争ったとしても、8割から9割が母親側へ渡るといわれます。
父親が子供の親権を獲得しづらい理由
日本では、幼い子供には母親の存在が不可欠という考え方が根強く、父親が外でフルタイム労働に従事していると、なかなか育児の時間を確保するのが難しいところです。
また、子供自身も父より母を選ぶ可能性が高いため、父親が子供の親権を獲得するのは困難といえます。
普段どちらが子供の面倒を見ているか
父親がフルタイム勤務の場合、育児に関われる時間は平日であればあっても朝晩の短い時間になります。
一方母親は、乳児の時はほぼ24時間態勢で、幼稚園・保育園児や小学生になってからも、専業主婦またはパートなどの短時間労働であれば、育児の大部分を担っているといえるでしょう。共働きだとしても、保育園への送り迎えや習い事への付き添いなど、実際の育児時間は母が父より長いことが多いようです。
子供の利益を最大限考慮すると、子供と過ごす時間を長く取れる親の方が、親権者に選ばれやすい傾向があります。また、裁判では、誰が主に子供を養育・観護してきたのか、今までの経過を重くみられます。
養育環境が整っている方に親権が渡る
日本の社会的状況として、男性は朝から晩まで長時間働くことを求められており、育児休業の取得、育児のための時短勤務もなかなか進まないのが現状です。
養育環境が整っているかどうかの現実問題として、例えば保育園や学童へ時間までに迎えに行くのが難しい。突然熱を出した時に保育園からの呼び出しに応じられない。これでは親権者として不利と言わざるを得ません。
一方で、父親が親権を持ち、母親に養育費を支払ってもらうのが困難な面もあります。
母親側に致命的な育児放棄がない
育児がきちんとできるかどうかという点をみると、母親が育児放棄や虐待を行うなど子供を守れないようなよほど重大な問題がなければ、母親側に有利になるようです。
子供が乳児の場合
特に子供が乳児の場合は、授乳、おむつ替え、寝かしつけ、洗濯など家事も含め24時間態勢で育児をすることになります。
昼間は保育園や託児所に預けるとしても、夜間の育児がなくなるわけではありませんし、病気だけでなく予防接種や検診で病院に連れていくこともあります。
昼夜問わず対応できる状況を考えても、母親が親権を得ることが多いのです。
離婚時に父親が親権を獲得する方法
離婚調停や裁判で離婚した夫婦では、親権は9割以上が母親になっており、父親が親権を持つのは実際に少ないことがわかります。ところが、必ずしも父親が親権を持てないわけではありません。
それでは、どうすれば親権を取れるのでしょうか。
父親側の養育実績を作る
子供がこれからどのように育てられていくのか、幸せに暮らせるかを最大限考慮すると、裁判では、今まで誰が主に子供を養育・監護してきたかプロセスを重視される傾向にあります。
母親にまかせっきりにせず、父親も積極的に子育てに関わってきたのならば、実績を明らかにする必要があるでしょう。
例えば、母親が子供を置いて家出をしたなどにより、長期にわたり父親が養育した実績があれば、裁判で考慮されることもあります。長期とはあくまで目安ですが、半年以上といわれます。
父親側の養育環境を整える
養育できると裁判で認められるには、子供を養育する環境が整っているかが重要視されます。
わが子と過ごす時間を長く取れるように、勤務時間や残業などの調整ができるかどうか。仕事でやむを得ない時などに、父親の両親である子供の祖父母の協力を得られる体制を作っているか。
子供に不利益にならないように養育環境を整えていると有利になる可能性があります。
離婚理由に母親の育児放棄が見られる
先にも述べましたが、母親が育児放棄や虐待を行うなど、子供を守れないようなよほど重大な問題がなければ、母親側に有利といわれます。
しかし、離婚の理由に母親の育児放棄があると証明できれば、子供にただちに生命の危険があるわけではなくても、安心して健全に育っていく環境として、父親の元へいた方がよりよいという判断材料になるでしょう。
父親が親権を獲得した場合でも養育費は請求できる
子供を育てていく上で、着るものや食べるものだけでなく保育園や幼稚園の費用、小学校に上がれば、学費など諸々のお金がかかってきます。
離婚したとしても親なので、未成年の子供の子育てにかかる費用は分担が原則となります。養育費は子供の権利で、親権者ではない方の親に求められるとされます。すなわち、父親が親権を持つ場合でも、母親に養育費を請求できます。
養育費は夫婦の収入、未成年の子供の数から算出されますが、余裕のある時に支払って、ない時は支払わないものではなく、子供の生活のために義務があるのです。
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父親が親権を獲得した離婚事例
このように、今まで子供と過ごしてきた時間や育児の内容、離婚後の養育環境などから、父親が親権を得るのは簡単ではありません。それでも、親権者となったケースもあります。具体的に事例を見ていきましょう。
実家で両親の子育てサポートも受けられる環境
親権獲得までの経緯
母親が喧嘩で家出して、戻るも結局別居。父親が子供を連れて実家へ帰り、自分の両親(子供の祖父母)と同居することに。親権を争ったものの、それまでの育児の実績や、実家のサポートを受けられる環境を考慮され、父親が親権を獲得したのです。
父親に親権が認められたポイント
子供に暴力を振るう母親から親権を父親に
親権獲得までの経緯
母親が子供の世話を怠った上、暴力を振るっていた。そのため不安になった父親は、育児休暇を取り、自らが子育てをしていたのです。こちらも、育児の実績や、離婚後の養育環境を考慮され、父親が親権者となったケースになります。
父親に親権が認められたポイント
父親の養育実績から幼い子供の親権を獲得
親権獲得までの経緯
子供が生まれる際から既に夫婦が別居。父親が子供を育てることになったが、後に離婚に際して親権を争い、調停から訴訟に至った事例です。
乳幼児の場合はなおのこと、育児が長時間になるので母親に親権が渡るケースが多いのですが、父親が養育してきた実績があり、どうやって子供を育ててきたのか日常の育児内容がわかる証拠を訴訟に備えて用意した結果、親権を認められたのです。
父親に親権が認められたポイント
親権の調停や裁判にかかる期間
そもそも離婚届を提出するにあたり、未成年の子供がいる場合は親権者を決めなくてはなりません。それでは、親権をめぐって調停や裁判になった場合、どれくらいの期間がかかるのでしょうか。
調停
親権の調停に関して1か月1回×3回くらいがメドといわれますが、なかなかうまくいかない場合、もっと長くかかることもあります。
裁判
離婚の審理期間として、平均1年ほどかかるとされ、親権を争う場合は、それ以上に長引くこともあります。
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お互い親権がいらない場合
これまで、親権を獲得するためにはどうしたらいいかを説明してきました。
もし、夫婦ともに親権が「いらない」といった場合はどうなるのでしょうか。離婚に際し、親権がいらないといってもどちらかは親権者になる必要があります。
子供の生活に不利益にならないよう、父母どちらが養育したらいいのか。調停や裁判になった際の判断基準は、養育の実績や環境など親権を取り合った場合と変わりません。
ただ、子供の幸せの観点からすると、親権をいらないという親の元では子供を育てること自体が難しいと考えられます。そこで、親権者と別の第三者である監護者を定める検討が必要になってきます。
監護者には、例えば夫婦いずれかの両親(子供の祖父母)や、きょうだいなどの親族などが挙げられます。もし、親族で監護者になれる人がいなければ、児童養護施設という選択肢も考えられます。
まとめ
父親は日々長時間外で働き、子育てを母親が主に担ってきた場合、離婚に際して父親が親権を獲得するのは難しいものです。
調停や裁判になっても母親が有利とされることがほとんどです。しかし、父親がそれまで育児へ関わってきた実績や、これから子供の幸せのためにできるだけ一緒に過ごすことができるか、周囲に子育てをサポートしてくれる人はいるかなど、養育環境によっては親権を持てる可能性があります。
子供をどうしても手離したくない母親は、離婚調停や裁判になっても子供は自分のもの、と高をくくらず、普段からの育児を見直してみてはどうでしょうか。夫婦どのように育児をしてきたか記録を残す、もし離婚した場合でも、よりよい養育環境があると第三者が見てもわかるようにするなどの対策が必要でしょう。
親権について悩んでいる方は、愛するわが子と暮らしていくために、まず専門家へ相談し、アドバイスを聞いてみてはいかがでしょうか。離婚の話を進める上で、今から計画的にできることがあるかもしれません。
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