離婚時に父親が親権を獲得する方法|養育実績と環境が子供の行き先を決める

親権・養育費
弁護士監修
離婚時に父親が親権を獲得する方法|養育実績と環境が子供の行き先を決める

夫婦仲はもはや修復不能にまでなってしまい、離婚は避けられそうにない・・・

「離婚は仕方がないとしても、愛するわが子と離れることは回避したい、親権を妻に渡したくない」

子供を持つ夫婦が離婚すると親権は母親が持つケースが多いですが、父親が親権を獲得するケースもあります。

この記事では、離婚時の親権獲得において、父親が有利になるのはどのような場合か、父親が親権を獲得するにはどうすれば良いのかについて説明します。

親権獲得で揉めている男性や将来的に親権を獲得したいと考えている男性は最後までお読みください。

目次
  1. 離婚後の親権は多くの場合母親になる
  2. 父親が子供の親権を獲得しづらい理由
    1. 普段どちらが子供の面倒を見ているか
    2. 養育環境が整っている方に親権が渡る
    3. 母親側に致命的な育児放棄がない
    4. 子供が乳児の場合
  3. 離婚時に父親が親権を獲得する方法
    1. 父親側の養育実績を作る
    2. 父親側の養育環境を整える
    3. 離婚理由に母親の育児放棄が見られる
  4. 子供の意思は尊重されるのか
  5. 父親が親権を獲得した場合でも養育費は請求できる
  6. 父親が親権を獲得した離婚事例
    1. 実家で両親の子育てサポートも受けられる環境
    2. 子供に暴力を振るう母親から親権を父親に
    3. 父親の養育実績から幼い子供の親権を獲得
  7. 親権の調停や裁判にかかる期間
    1. 調停
    2. 裁判
  8. お互い親権がいらない場合
  9. まとめ

離婚後の親権は多くの場合母親になる

離婚後の親権は多くの場合母親になる

日本では子供の親権は母親が獲得することが多い傾向があります。実際、令和3年の司法統計では、未成年の子供を持つ夫婦のうち、母親が親権を獲得したケースが約9割を占めています。

参考:裁判所「第 23 表 「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち「子の親権 者の定め」をすべき件数―親権者別―全家庭裁判所 (https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/597/012597.pdf)」※1

父親が子供の親権を獲得しづらい理由

父親が子供の親権を獲得しづらい理由

父親が子供の親権を獲得しづらい理由には何があるのでしょうか。親権者指定のポイントとともに解説します。

普段どちらが子供の面倒を見ているか

父親がフルタイム勤務の場合、育児に関われる時間は休日かまたは平日であっても朝晩の短い時間になってしまいます。

一方、母親は、子供が乳児の間は四六時中育児ができます。また、専業主婦またはパートなどの短時間労働であれば、子供が幼稚園・保育園児、小学生になっても、育児の大部分を担うことができます。

夫婦ともにフルタイムの共働きだとしても、保育園への送り迎えや習い事への付き添いなど、実際の育児時間は父親より母親のほうが長いことが多いようです。

子供の利益を考慮すると、子供と過ごす時間を長い親が親権者に選ばれやすい傾向があります。また、裁判でも、誰が主に子供を養育・観護してきたのか、これまでの経過を重視します。

養育環境が整っている方に親権が渡る

日本の社会的状況として、男性は朝から晩まで長時間働くことを求められており、育児休業の取得や育児のための時短勤務もなかなか進まないのが現状です。

養育環境を鑑みると、例えば保育園や学童へ決まった時間までに迎えに行くのが難しい、突然熱を出したときに保育園からの呼び出しに応じられない、といった状況は親権者として不利と言わざるを得ません。

母親側に致命的な育児放棄がない

親権者指定では、育児がきちんとできるかどうかという点も重要になります。

この点については、母親が育児放棄や虐待を行うなど、子供を守れないような重大な問題がなければ、母親側に有利になるようです。

子供が乳児の場合

特に子供が乳児の場合は、授乳、おむつ替え、寝かしつけ、洗濯など家事も含め24時間態勢で育児をすることになります。

昼間は保育園や託児所に預けるとしても、夜間の育児がなくなるわけではありませんし、病気だけでなく予防接種や検診で病院に連れていくこともあります。

昼夜問わず対応できる状況を鑑みると母親が親権を得ることが多いです。

離婚時に父親が親権を獲得する方法

司法統計の結果を見ても、父親が親権を持つのは実際に少ないことがわかります。しかし、必ずしも父親が親権を持てないわけではありません。

どうすれば父親が親権を獲得できるのでしょうか。

父親側の養育実績を作る

裁判では、今まで誰が主に子供を養育・監護してきたかプロセスを重視される傾向にあります。母親にまかせっきりにせず、父親も積極的に子育てに関わってきたのならば、実績を明らかにする必要があります。

例えば、母親が子供を置いて家出をしたなどにより、長期にわたり父親が養育した実績があれば、裁判で考慮されることもあります。長期とはあくまで目安ですが、半年以上といわれます。

父親側の養育環境を整える

裁判では子供を養育する環境が整っているかが重要視されます。 例えば以下のような点がポイントになります。

  • わが子と過ごす時間を長く取れるように、勤務時間や残業などの調整ができるかどうか
  • 仕事でやむを得ないときなどに、父親の両親である子供の祖父母の協力を得られる体制を作っているか

このように、子供に不利益にならないように養育環境を整えていると有利になる可能性があります。

離婚理由に母親の育児放棄が見られる

前述のとおり、母親が育児放棄や虐待を行うなど、子供を守れないような問題がなければ、母親が親権獲得において有利です。

しかし、離婚の理由として「母親の育児放棄があること」が証明できれば、子供にただちに生命の危険があるわけではなくても、「子供の養育環境として父親側にいたほうが好ましい」という判断材料になるでしょう。

子供の意思は尊重されるのか

子供が「父親と暮らしたい」と主張した場合、子供の意思は尊重されるのでしょうか。これについては、子供の年齢によって対応が異なります。

【〜10歳】

子供が幼い場合、特別な事情がない限り、母親が親権者となるケースが多いです。

【10歳〜】

子供が10歳以上になってくると、裁判所も子供の意思を確認し、ある程度尊重することがあります。

【15歳以上】

子供の年齢が15歳以上の場合、裁判所は必ず子供の意思を聞かなければならないと定められています(家事事件手続法第169条第2項、人事訴訟法第32条第4項)。

子供の年齢が15歳以上であれば、子供の意思を尊重して親権者を決めることになります。

なお、子供にどちらか一方の親を選ばせることは、他方の親を切り捨てることを決断させることでもあります。ある意味残酷であり、子供の心に深い傷を負わせる可能性があります。

親権は子供の幸せを最優先に考えて決めるものです。

親側も子供に親を選ばせることの重大さや残酷さについて十分に理解し、「パパとママ、どちらを選ぶの?」などと子供に親を選ばせたり、親権者を決める責任を押し付けたりすることはやめましょう。

父親が親権を獲得した場合でも養育費は請求できる

子供を育てていくうえで、着るものや食べるものだけでなく保育園や幼稚園の費用、小学校に上がれば、学費など諸々のお金がかかってきます。

離婚して離れて暮らすことになっても親子関係は変わりません。そのため、未成年の子供の子育てにかかる費用は分担が原則となります。

養育費は子供の権利であり、離れて暮らす側の親に請求されます。すなわち、父親が親権を持つ場合は母親に養育費を請求できます。

養育費は夫婦の収入、子供の年齢や人数から算出されます。養育費は「余裕のあるときに支払って余裕がなければ支払わない」というものではなく、子供の生活のために支払い義務があるのです。

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離婚の養育費の相場|できるだけ多くもらう方法とは

父親が親権を獲得した離婚事例

父親が親権を獲得した離婚事例

今まで子供と過ごしてきた時間や育児の内容、離婚後の養育環境などを考慮すると、父親が親権を得るのは簡単ではありません。

しかし、父親が親権者となったケースもあります。 具体的に事例を見ていきましょう。

実家で両親の子育てサポートも受けられる環境

親権獲得までの経緯

夫婦喧嘩のすえ、母親が家出、一旦戻るも結局別居にいたしました。父親が子供を連れて実家へ帰り、自分の両親(子供の祖父母)と同居することになりました。

親権を争ったものの、それまでの育児の実績や、実家のサポートを受けられる環境を考慮され、父親が親権を獲得したものです。

父親に親権が認められたポイント

  • 養育実績:育児に熱心で、普段からよく子供と外出していた。妻との別居後、父親が子供と一緒に暮らしている。
  • 養育環境:実家で同居する両親の支援を受けられる体制が整っている。

子供に暴力を振るう母親から親権を父親に

親権獲得までの経緯

母親が子供の世話を怠ったうえ、暴力を振るっていました。不安になった父親は、育児休暇を取り、自らが子育てをしました。こちらも、育児の実績や、離婚後の養育環境を考慮され、父親が親権者となったケースになります。

父親に親権が認められたポイント

  • 養育実績:父親が長期間自ら育児を行ってきた。
  • 養育環境:母親が育児を怠り、暴力を振るうことがある。父親は育児休暇中、子供の世話を問題なくできていた。

父親の養育実績から幼い子供の親権を獲得

親権獲得までの経緯

子供が生まれる際からすでに夫婦は別居していました。父親が子供を育てることになり、のちに離婚に際して親権を争い、調停から訴訟に至った事例です。

乳幼児の場合はなおのこと、育児が長時間になるので母親に親権が渡るケースが多いのですが、父親が養育してきた実績があり、どうやって子供を育ててきたのか日常の育児内容がわかる証拠を訴訟に備えて用意した結果、親権を認められたのです。

父親に親権が認められたポイント

  • 養育実績:子供が乳児のときから父親が育児を行っていた。
  • 養育環境:十分子供を育てられる環境にあると示す証拠になるよう、育児記録を取っておいた。

親権の調停や裁判にかかる期間

離婚届を提出するにあたり、未成年の子供がいる場合は親権者を決めなくてはなりません。

それでは、親権をめぐって調停や裁判になった場合、どれくらいの期間がかかるのでしょうか。

調停

離婚調停に関して1か月1回×4回くらいが目途といわれますが、うまくいかない場合、もっと長くかかることもあります。

裁判

離婚の審理期間として、相手方が裁判に出頭しなかったために早期に終了したといった事情のあるケースを除けば、平均1年半ほどかかることが多く、親権を争う場合、それ以上に長引くこともあります。

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離婚調停期間はどれくらい?調停を有利に進め最短で終わらせる方法。

お互い親権がいらない場合

お互い親権がいらない場合

これまで、親権を獲得するためにはどうしたら良いかを説明してきました。もし、夫婦ともに親権が「いらない」といった場合はどうなるのでしょうか。

離婚に際し、夫婦ともに「親権がいらない」といってもどちらかは親権者になる必要があります。

調停や裁判になった際、養育の実績や環境など「子供の生活に不利益にならないよう、父母どちらが養育したら良いのか」ということを判断基準にします。通常の親権争いと変わりません。

ただ、子供の幸せの観点からすると、「親権をいらない」という親の元では子供を育てること自体が難しいと考えられます。そこで、親権者と別の第三者である監護者を定める検討が必要になってきます。

監護者には、例えば夫婦いずれかの両親(子供の祖父母)や、兄弟などの親族などが挙げられます。もし、親族で監護者になれる人がいなければ、児童養護施設という選択肢も考えられます。

まとめ

日本では父親が親権を獲得するのは難しい現状があります。

しかし、これまで育児へ関わってきた実績や、離婚後に子供とどれだけ一緒に過ごすことができるか、周囲に子育てをサポートしてくれる人はいるかなどの養育環境を整えることによって、親権を獲得できる可能性があります。

親権について悩んでいる方は、まずは弁護士に相談し、アドバイスを受けると良いでしょう。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚・男女問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

※1 裁判所「第 23 表 「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち「子の親権 者の定め」をすべき件数―親権者別―全家庭裁判所

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