養育費の時効|養育費の未払いが起きたときの対処法と時効の中断方法
- 目次
養育費には時効がある
養育費を請求できる権利には時効があります。
離婚の際、養育費の支払いについて取り決めていた場合は5年の消滅時効となります。一方、調停や裁判など、裁判所で養育費の支払いを決めた場合は10年間の消滅時効となります。
養育費の請求権はいつ発生するのか
養育費の請求権はいつから発生するのでしょうか。ケース別に見ていきます。
養育費の時効 - 取り決めをしていなかった場合 -
養育費の取り決めを行わなくても離婚することは可能です。そのため、養育費の取り決めをせず離婚するケースも少なくありません。
この場合、取り決めをしていませんから養育費の時効は存在しません。
もちろん、両親が離婚しても親子の関係は変わりません。したがって、養育費の取り決めをしていない場合も養育費を請求することはできます。
養育費の取り決めをしていない場合、過去の養育費を請求することは難しく、請求した時点からの養育費を請求することになります。
養育費の時効 - 取り決めを口頭で行った場合 -
日本では離婚する夫婦の9割近くが当事者同士の話し合いによって離婚しています。これを協議離婚と言います。
養育費の支払いを口頭で決めた場合、毎月定額を支払うということが多いため、養育費は定期給付債権とみなされます。
そのため、養育費の請求権は毎月発生し、発生した時点から5年が経過すると時効は消滅します。
養育費の時効 - 取り決めを調停や裁判で行った場合 -
養育費の支払いを調停や裁判で決めた場合、確定判決の時効が適用されます。そのため、養育費の支払いについて決まったときから10年が消滅時効になります(民法174条の2)。
養育費の時効は中断できる
養育費の時効は消滅時効ですので、正しく手続きを行えば中断することができます。時効を中断すると、時効の進行が止まり、時効がリセットされることになります。
時効を中断する方法は以下の3つがあります。
債務承認
債務承認とは、債務者(養育費支払い義務者)が債務の存在を認めることです。養育費においては、下記のようなものが債務承認とみなされます。
- 養育費の支払いに関する念書を交わしたこと
- 養育費の一部を支払うこと
- 養育費の返済延長や減額を請求したこと
裁判所による請求手続き
裁判所による請求手続きを利用する方法もあります。この場合、消滅時効がリセットされたら、新たに10年間の消滅時効が始まることになります。
裁判所の手続きで時効を中断するには下記の3つの方法があります。
支払督促
支払督促とは、裁判所から相手方に督促状を送付してもらう手続きです。一定期間内に相手方が督促状の記載内容に異議を申立てなければ権利が確定します。
支払督促について仮執行宣言を申立てれば時効を中断することができます。なお、仮執行宣言とは、支払督促に執行力を付与する裁判を言います。
調停
調停とは、調停委員を介して当事者同士で話し合いを行う裁判所の手続きです。調停で合意が得られれば調停時にさかのぼって時効を中断できます。
訴訟
訴訟は裁判所に訴えを起こし、裁判所に判断を仰ぐ手続きです。判決がくだされると、訴訟を提起した時点にさかのぼって時効を中断できます。
仮差押・差押・仮処分
仮差押や差押といった手続きにも時効中断の効果があります。
差押とは養育費の支払い義務者に対して強制執行を行い、給与や預貯金口座などを差し押さえることを指します。
また、仮差押は、相手方が財産隠しを行うことを防ぐために仮で差し押さえを行うことです。仮処分は、相手方に対して暫定的に強制的な支払いをさせることを言います。
養育費の時効の完成が迫っている場合
前述のとおり、裁判所の手続きによって養育費の時効を中断することができます。ただし、裁判や差押といった手続きは非常に手間と時間がかかります。
時効の完成が迫っている場合は、裁判所への手続きを行っている間に時効が完成してしまう可能性があります。
このような場合、裁判所の手続きを経ずに相手方に対して養育費請求の意思表示を行うことで、一定期間時効を止めることができます。これを催告と言います。
養育費の支払い義務者に対して養育費の支払いを催告した場合、6か月時効の完成を停止することができます。
時効完成が迫っている場合は、まず催告によって時効を停止し、その間に裁判所の手続きを行うと良いでしょう。
養育費の時効が成立していても請求事態は可能
すでに養育費の時効が成立していたとしても、請求することは可能です。
養育費に限らず、時効というのは相手方が時効の完成を主張することで初めて効果があるものです。このことを時効援用と言います。
したがって、相手方が時効援用をしてこなければ、時効が完成したあとでも養育費を請求できるのです。
養育費の未払いが発生したら強制執行で回収しよう
ここまで、養育費の時効について解説しました。養育費の未払いが発生したら、強制執行を行い、相手方の財産を差し押さえることになります。
強制執行認諾文言を付与した公正証書や調停調書、確定判決がある場合は裁判手続きを経ずに強制執行を行うことができます。これについては後述します。
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養育費を強制執行(差し押さえ)で回収するには|必要な手続と条件を解説
養育費の取り決めは公正証書に残すべき!作成方法や注意点を解説
養育費は給料を差し押さえるのが効果的
養育費を回収するには相手方の給料を差し押さえるのが効果的です。
給料を差し押さえることで、将来の養育費まで差し押さえることができるため、一度差し押さえを行えば、毎月自動的に養育費を受け取ることができます。
通常なら手取りの4分の1までしか差し押さえができませんが、養育費の回収の場合は2分の1まで差し押さえることができます。
また、ボーナス支給月は賞与と給与を足した分の金額から差し押さえる分を算出することもできるのです。
養育費を強制執行で回収するには債務名義が必要
強制執行で養育費を回収するには債務名義が必要です。
債務名義がある場合
債務名義とは、強制執行で実現されるべき請求権の存在や債権者、債務者などについて記した公的文書のことです。前述の強制執行認諾文言を付与した公正証書や調停調書、確定判決などが該当します。
債務名義がある場合、裁判を起こすことなく強制執行を行うことができます。
強制執行を行う際は、必要書類をそろえ、債務者(養育費支払い義務者)の住所地を管轄する地方裁判所あるいは勤務先を管轄する地方裁判所に申し立てを行います。
強制執行の詳しい手続き方法については下記の記事を参考にしてください。
債務名義がない場合
債務名義がない場合は強制執行を行う効力がありません。公正証書を作成したとしても、強制執行認諾文言がない場合は強制執行を行うことができません。
債務名義がない場合は、口頭や内容証明郵便などを使って養育費を請求します。それでも相手方が養育費の支払いに応じない場合は裁判所で支払督促手続きを行います。
申立てた内容が妥当だと判断された場合は裁判所から支払督促が発行され、強制執行手続きに進むことができます。
養育費の未払いが発生した場合は弁護士へ
養育費の未払いが発生した場合は早い段階で弁護士へ相談しましょう。
前述のとおり、養育費の請求権には時効があります。しかし、期限内にしかるべき手続きを取ることで養育費の時効をリセットできます。
また、時効が完成したとしても、相手方が時効援用をしていなければ養育費の請求も可能です。
弁護士なら養育費の未払いが起きたときに、現状を踏まえてどのような手続きをすべきかアドバイスしてくれます。
また、強制執行を行う際は、相手方の財産について事前に調査しておく必要があります。このとき、弁護士に依頼すれば弁護士会照会制度を使って相手方の財産について調べてもらうことができます。
一方、弁護士が間に入るだけでも相手方にプレッシャーを与えることができます。そのため、弁護士から相手方に連絡してもらうだけで解決しやすくなるケースもあります。
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親権・養育費は弁護士に!親権・養育費の解決実績・解決事例が豊富な弁護士とは
離婚に強い弁護士の選び方って?弁護士選びで失敗しないポイント。
まとめ
養育費には時効があります。養育費の未払いが続いている場合はすぐに弁護士に相談することをおすすめします。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は養育費や離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
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