子供がいるから離婚できない?モラハラを見て育った子供への影響。
夫(または妻)からモラルハラスメント(以下、モラハラ)を受けているにも関わらず、本心では離婚したいのに「子供がいるから」という理由で離婚を切り出さないことがあります。
我慢して結婚生活を続ける理由、離婚を切り出せない理由は人それぞれだと思いますが、家庭内のモラハラ行為は子供にさまざまな影響をおよぼします。
この記事では、「子供がいるから」という理由で離婚をしない場合にモラハラを見て育つ子供への影響や子供を守るためにすべきことについて解説します。
子供がいるから離婚に踏み切れないという方、モラハラを受けている方は最後までお読みください。
- 目次
モラハラは夫も妻も被害者になる
モラハラは「夫から妻へのもの」というイメージがありますが、夫も妻も被害者になり得ます。以下、それぞれの特徴について見ていきます。
夫によるモラハラの特徴
夫から妻へのモラハラ行為の特徴には以下のようなものがあります。
- 間違いや失敗を人のせいにする
- 自分が悪くても絶対に謝らない
- 相手が少しでも間違えると責め立てる
- 妻に注意されたりたしなめられたりするのが気に入らない
- 平気で嘘をつく
- 少しでも気に食わないと無視する
- 妻だけでなく、妻の親族や友人に対して人格否定をしたり馬鹿にしたりする
- 人前で妻を馬鹿にする
- 大声で怒鳴ったり、大きな音を出して物に当たったり、威嚇したりする
- 子供や妻が大切にしているものを人質に脅したり、強要したりする
- 嫉妬や依存・束縛が激しい
- 仕事を辞めさせる 家族や友人との交遊を制限する
- 共感性がなく、自分に興味のないことは無視する
夫は妻よりも力が強く、経済的にも優位になりやすいため、モラハラの加害者になりやすい傾向があります。特に夫が男尊女卑の考えを持っている場合は特にモラハラ加害者になりやすくなります。
モラハラ夫は妻を下に見ています。そのため、妻が「皿を割る」などのささいな失敗をしただけで「家事も満足もできないのか」と人間性まで否定したり、「その皿は誰の稼ぎで買ったと思っているんだ」などと妻を追い込んだりします。
また、モラハラ夫はプライドが高いため、妻から間違いを指摘されたり注意されたりすると、逆切れします。
例えば、夫の健康状態を心配した妻が「運動をして痩せたほうが良いよ」と言っただけで、モラハラ夫は「仕事で疲れて帰ってきた夫に対してさらに疲弊させようとするのか」と曲解します。
さらに、「お前のつくる食事がまずいから外食が多くなって体調を崩す。お前は俺を殺す気か」など、問題のすり替えや責任転嫁をしたり、攻撃をしかけたりすることもあります。
モラハラ夫は妻が自分より下にいて、自分に従うことを望みます。そのため、妻が働いて収入を得たり、家族・友人と交遊したりすることを制限することもあります。
妻によるモラハラの特徴
妻から夫へのモラハラ行為の特徴には以下のようなものがあります。
- 理由もなく日常的に睨みつける
- 「男のくせに」と馬鹿にする
- 話しかけても無視をする
- 侮辱する
- 何かあるたびに「嘘つき」と言う
- 何を言っても否定する
- 反論すると「口答えだ」と言う
- 夫の親族や友人の悪口を言う
- 自分に従わせようとする
- 子供に悪口を吹き込み、子供から悪口を言わせる
日本のビジネス環境は改善されつつありますが、依然として男性より女性のほうが出世し難い傾向があります。
モラハラ妻は学歴も収入も夫より高い傾向があるため、理不尽な現代社会に不満を抱きがちです。しかし、不満を外でぶつけるわけにはいかないため、夫にぶつけるケースがあるのです。
また、働く女性だけでなく、専業主婦がモラハラに走ることもあります。例えば、家事・育児放棄、夫の両親への仕打ち、ヒステリー、自傷行為や自殺未遂といった行動です。
モラハラ妻もモラハラ夫と同様、自分より相手が下であることを望みます。そのため、相手から反論されることを嫌い、子供を使って夫を悪く行ったり、自分に従わせようとしたりするケースもあります。
なお、モラハラには夫婦のどちらか一方が一家の財布を預かり、相手方にはごく少額の小遣いしか渡さないといった経済系DVもありますが、これは男女関係なく起こり得ます。
モラハラが子供に与える悪影響とは
モラハラがあからさまな場合、子供に深刻な悪影響を与えかねません。 具体的には、以下のようなものがあります。
- モラハラ体質になる
- どちらか一方の親を見下すようになる
- 二面性を持つようになる
- キレやすくなる
- ストレスをいじめで発散するケースがある
- 自分の気持ちを人に言えない子供になる
- 言葉遣いが悪くなる
- 異性恐怖症や恋愛恐怖症に陥るケースがある
モラハラ体質になる
モラハラ夫(妻)の悪影響で懸念されるのは、子供がモラハラを受け継いでしまうことです。
モラハラ傾向や男尊女卑(女尊男卑)の考え方が医学生理学的に遺伝するかどうかは不明です。しかし、子供は親の背中を見て育ちます。 モラハラが当たり前の環境に子供がいることでその子供がモラハラ傾向を示すことは十分にあり得ます。
また、モラハラを日常的に見ているため、モラハラに対する罪悪感がなく、改善するまでに時間を要することも多いです。
どちらか一方の親を見下すようになる
モラハラ夫(妻)が配偶者を見下す態度を取っていると、「親を見下すのは当然」「この親には何を言っても構わない」など、一方の親に対して舐めた態度を取るようになります。
親の威厳が失われてしまうと、「何をしても怒られない」「何をしても良い」などと考え、非行に走るケースもあります。
二面性を持つようになる
モラハラ夫(妻)は世間体を気にするため、家のなかではモラハラ行為を行いますが、外面が良く、「良いパパ(ママ)」「理想の旦那(妻)」を演じます。
特に、親が社会的な成功者でありながら家のなかではモラハラをしている場合、子供は、父親(母親)の外の顔と家の顔が矛盾していることに違和感を持たなくなる可能性があります。
このような親を見て育つことで、環境や相手によって態度を変える二面性を持つ子供になる傾向があります。
例えば、身体が小さく、自分より弱そうに見える相手には横柄な態度を取る一方、身体が大きかったり、自分より強そうに見える相手には下手に出たりする傾向があります。
キレやすくなる
モラハラ夫(妻)の行動を見て育った子供は、人に暴言を吐いたり、物に当たったりすることを「当たり前の行為」と受け止めてしまいます。
そのため、思い通りに進まなかなったり、気分を害したりした場合、その原因が自分のせいであっても相手のせいにしたり、人や物に当たったりすることがあります。
また、親の様子にもイライラを感じるため、他の子供よりストレスを感じやすい傾向があります。ストレスが多い一方、人や物に当たる以外のストレス発散法がわからないため、心の置き場がなくなってしまうのです。
ストレスをいじめで発散するケースがある
前述のとおり、モラハラを見て育つ子供は他の子供よりストレスを感じやすくなります。しかし、人や物に当たる以外のストレス発散法がわかりません。
また、ストレスの原因の一つは「親」ですので、家にいるとストレスが溜まってしまいます。そのため、学校や塾などで他の子供をいじめることでストレスを発散することがあるのです。
自分の気持ちを人に言えない子供になる
モラハラ夫(妻)は、自分の発言や行動で相手が苦しんだり、悲しそうな顔をしたりすることに快感を覚えます。しかし、相手がモラハラ発言や行動をスルーするようになると、モラハラ夫(妻)は快感を得られなくなります。
こうなると、モラハラ夫(妻)はターゲットを配偶者から子供に変えます。
子供は親に認められたい、褒められたいがために親に従います。「嫌だ」などと自分の気持ちを示すより、親の意見に従うほうが親から褒められ、「認められた」と感じるのです。
その結果、自分の気持ちを人に言えず、相手に振り回されやすくなってしまう傾向があります。
言葉遣いが悪くなる
子供は親の言動を真似しながら言葉や会話を覚えていきます。親が暴言を吐き続けたり、口調が荒かったりする場合、子供が真似をするようになります。
社会生活を送るうえで、口調の粗さや暴言は不利になることが多いです。
また、口調や言葉遣いは大人になってから改善することは難しいものです。そのため、自分の子供にも真似をされてしまい、口調の粗さや悪習慣が代々にわたって続く恐れがあります。
異性恐怖症や恋愛恐怖症に陥るケースがある
自分の親が配偶者から暴言を吐かれている姿や辛そうにしている姿を見ると、「結婚は墓場だ」「結婚なんてするものじゃない」と思う可能性があります。
また、「異性は怖い」と思うようになると、異性恐怖症や恋愛恐怖症に陥る可能性もあります。
もちろん、大人になって、素敵な異性と出会うことで克服するケースもあります。しかし、出会った異性がモラハラ体質だった場合、「やはり異性は怖い存在なのだ」「恋愛なんてするものじゃない」という意識が深く刻まれ、改善が難しくなります。
離婚できない理由とは
モラハラ夫(妻)に苦しんでいる人は「離婚したいけど子供がいるからできない」と考えることがあります。主な理由を紹介します。
被害妻が「離婚できない」と考える理由
専業主婦の場合、「離婚後に収入を確保する自信がない」という人も少なくありません。そのため、特に専業主婦は「子供がいるから離婚できない」と考えやすくなります。
しかも、毎日毎日夫から「バカ」「ただ飯食い」「容姿が悪い」などと言われることでマインドコントロールされたように「自分はバカだ」「使えない」と思い込むこともあります。
一方、モラハラ夫が高学歴・高収入の場合、妻は「子供にとって今の家庭環境は将来武器になる」と考えるかもしれません。
例えば、代々東大に入っていたり、医者になったりすれば、妻としても「私の子供もエリートになれる」と思うかもしれません。そうなると「私さえ我慢すれば子供は幸せになれる」という心理に陥ってしまいます。
また、モラハラ夫の社会的地位が高く、頭が良い場合、巧みにモラハラの証拠を隠すことで離婚後に子供の親権を夫に奪われてしまう可能性もあります。
このような場合、「夫のモラハラに苦しめられて離婚までしたのに子供まで失うのは嫌だ」と離婚を思いとどまってしまうこともあります。
被害夫が「離婚できない」と考える理由
夫もモラハラ被害者になり得るという事実を知らない人も少なくありません。また、「モラハラ被害を受けても夫は自分で稼ぐことができるのだからすぐに離婚すれば良い」と簡単に考えるかもしれません。
一般的に離婚後の親権獲得は妻が有利という実情があります。つまり、離婚によって夫は子供の親権を失う確率が高いのです。
モラハラ被害を受けたうえに子供と別れ離れになることは理不尽すぎます。被害夫が離婚に踏み切れない心理は十分理解できます。
モラハラ配偶者と離婚して子供を守るためにすべきこと
夫(妻)からのモラハラは子供に大きな影響を与えることを解説しました。
モラハラ加害者は自分がモラハラをしているという自覚がないケースがほとんどです。
そのため、モラハラがなくなることを期待するのではなく、モラハラ加害者と離婚する方向で考えることが現実的です。
モラハラ配偶者と離婚して子供を守るためにすべきことは次の2つです。
できるだけ早く子供を連れて別居する 警察や専門機関に相談する 以下で詳しく見てきます。
できるだけ早く子供を連れて別居する
配偶者のモラハラから子供を守るためには、できるだけ早く配偶者から子供を引き離すことが重要です。そのため、子供を連れて別居することを考えましょう。
「生活費が心配で別居できない」という人もいますが、自分より相手方の収入が多ければ、相手方に生活費(婚姻費用)を請求できます。
なお、婚姻費用の請求は「請求した時点から」とするのが一般的です。そのため、婚姻費用はできるだけ早く請求することが重要です。
警察や相談機関へ相談する
モラハラ被害者は「自分がモラハラを受けているか判断できない」というケースも少なくありません。
また、モラハラを受け続けると精神的に疲弊してしまい、適切な対応ができなくなるリスクもあります。
モラハラを受けたら、1人で抱え込むのではなく、警察や専門機関に相談し、子供や自分を守るためにどうすべきかアドバイスをもらいましょう。
専門家による客観的な意見を聞き、自分の状況を把握できれば、自ずとどう行動すべきか見えてきます。
警察へ相談する際は、近隣の警察署に直接行くかあるいは警察相談専用電話「#9110」に連絡しましょう。
警察相談専用電話「#9110」は全国どこからでも、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの窓口へつながります。
なお、子供が配偶者からモラハラ被害を受けているケースは児童虐待(心理的虐待)に該当します。この場合は児童相談所へ相談することも検討しましょう。
自分だけでは別居や離婚ができないという場合は弁護士に相談し、アドバイスを受けながら行動することをおすすめします。
参考:政府広報オンライン「警察に対する相談は 警察相談専用電話 #9110へ(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/3.html)」※2
参考:厚生労働省「全国児童相談所一覧(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/zisouichiran.html)」※3
「それでも離婚できない」という人へ
親がモラハラを受け続けることで子供にどのような影響をおよぼすかを説明しました。
「それでも離婚できない」という方もいるかもしれませんが、少しでも良い方向に進むためには、弁護士や専門機関などに相談し、客観的な視点でアドバイスをもらうことが大切です。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚や子供の問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 日本福祉大学「親の養育態度が性格形成に与える影響とは」
※2 政府広報オンライン「警察に対する相談は警察相談専用電話 #9110へ」
※3 厚生労働省「全国児童相談所一覧」
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