DVシェルターとは?利用期間と条件、利用するメリットと注意点を解説

DV・モラハラ
弁護士監修
DVシェルターとは利用期間と条件、利用するメリットと注意点を解説

配偶者からDVを受けている場合、身の安全を図るため、避難することが重要になります。

DVの避難先として親族や友人宅を選ぶ人もいますが、配偶者に居場所を特定される可能性が高いため、DVシェルターへの避難を検討することをおすすめします。

この記事では、

・DVシェルターとは何か
・DVシェルターの利用条件
・DVシェルターに避難するメリット
・DVシェルターに避難する際の注意点
・DVシェルターを利用する流れ

について解説します。

目次
  1. DVシェルターとは
    1. DVシェルターの種類と利用料
  2. DVシェルターを利用できる期間
  3. DVシェルターを利用するメリット
    1. 身の安全を図ることができる
    2. 離婚や就職などの支援を受けることができる
  4. DVシェルターを利用する際の注意点
    1. 一時的な保護にすぎない
    2. 規律が厳しい
    3. 入居者同士のトラブル
    4. 住環境が良くないこともある
    5. ペットは一緒に入れない
    6. 配偶者名義のキャッシュカード・保険証は使わない
  5. DVシェルターの利用条件
  6. DVシェルターを利用するまでの流れ
    1. DVの証拠を確保する
    2. 荷物をまとめておく
    3. 公的機関の相談窓口へ連絡する
  7. DVシェルター入居中・退所後の住民票について
  8. DV問題を解決する方法
    1. 安全な場所で別居状態を続ける
    2. 保護命令を申し立てる
    3. 弁護士に依頼して離婚を進める
  9. まとめ

DVシェルターとは

DVシェルターとは、DVの被害者を保護するための施設です。

DVシェルターに入ることでDV被害者は加害者と離れて暮らすことができます。また、子供が小さい場合は子供と一緒に入ることができます。

DVシェルターは一時保護施設や母子シェルターなどと呼ばれることもあります。

DVシェルターの所在地は非公開となっており、連絡先も公開されていません。また、インターネット検索などで所在地を突き止めることはできません。

DVシェルターを利用する場合は、公的機関の相談窓口を介して申し込むことになります。DVシェルターを利用する流れについては「DVシェルターを利用する流れ」にて後述します。

DVシェルターの種類と利用料

DVシェルターは行政が運営する公的なものと民間団体が運営するものの2種類があります。

  運営 利用料 件数
公的シェルター 行政(地方自治体) 無料 各都道府県に1か所以上
民間シェルター 民間 1,000円/日
(子供は一人につき500円/日)~
全国124か所
(令和2年11月1日時点)

公的なシェルターは各都道府県に一か所以上あります。また、令和2年11月1日時点で、各都道府県、政令指定都市が把握している民間シェルターの運営団体は全国で124か所になります。

利用料について、公的DVシェルターは無料、民間シェルターの場合は一日1,000円~というケースが多いです。

民間シェルターは多少費用がかかりますが、家具や家電、日用品については提供されるケースが一般的です。民間シェルターを利用する際は利用料についても事前に確認しておきましょう。

なお、公的・民間ともにシェルターの所在地は非公開となっています。

DVシェルターを利用できる期間

DVシェルターはあくまで一時保護施設です。長期間の利用はできません。DVシェルターを利用できる期間は数日から2週間程度です。

状況によって延長が認められるケースもありますが、具体的な内容は運営元や施設によって異なります。DVシェルター入居中は次の住まい探しや自立に向けて対応する必要があります。

DVシェルターを利用するメリット

DVシェルターを利用するメリット

DVシェルターを利用するメリットは主に以下の2つです。

  • 身の安全を図ることができる
  • 離婚や就職などの支援を受けることができる

身の安全を図ることができる

DVシェルターの最大のメリットは身の安全を図ることができる点です。

DV加害者との生活を続けると、状況によって生命や身体に重大な危害を加えられる恐れがあります。我慢を続ければ、精神的にも疲弊してしまい、正常な判断ができなくなる可能性があります。

DVシェルターの所在地は非公開のため、DV加害者の暴力からの逃れ、身の安全を図ることができます。

離婚や就職などの支援を受けることができる

DVシェルターにはカウンセラーや弁護士との連携があるため、身の安全を確保しながら様々な支援を受けることができます。

DVシェルター利用中に受けられる支援には以下のようなものがあります。

  • 離婚するための支援
  • 住まい探しのサポート
  • 就職・就業するための支援
  • 生活保護受給申請のための支援

受けられる支援は基本的にシェルターから出た後に自立した生活ができるために支援するものです。また、具体的な支援内容は運営団体や施設によって異なります。

DVシェルターを利用する際の注意点

DVシェルターを利用する際の注意点

DVシェルターを利用する際は以下の注意点についても考えておきましょう。

  • 一時的な保護にすぎない
  • 規律が厳しい
  • 入居者同士のトラブル
  • 住環境が良くないこともある
  • ペットは一緒に入れない
  • 配偶者名義のキャッシュカード・保険証は使わない

それぞれ下記で解説します。

一時的な保護にすぎない

前述のとおり、DVシェルターは一時的な保護施設にすぎません。入居できるのは2週間程度ですので、短い時間で次の住まい探しや子供の学校のこと、自立に向けて動かなければなりません。

規律が厳しい

DVシェルターの目的はDV被害者の保護です。そのため、第三者にDVシェルターの場所を教えることは禁止されています。

最近は携帯電話やスマホにGPS機能が付いています。

シェルターの所在地や情報が漏洩しないためにも、入居の際にGPS機能をオフにするだけでなく、携帯電話やスマホを没収されたり、解約させられたりするケースもあります。

外出する場合も門限があるケースがほとんどです。

基本的には子供と一緒に入居できますが、子供については年齢制限が設けられている場合があります。

入居者同士のトラブル

入居者同士のトラブル

シェルターに入居している人は国籍もバラバラで、入居する事情も様々です。異なる価値観や常識を持つ人と共同生活を送ればトラブルも起こります。

基本的に入居者同士の交流は禁止されていますが、規律に反して交流を図ってくる人もいます。例えば以下のようなケースがあります。

  • DVシェルターに入居することになった経緯を根掘り葉掘り聞いてくる
  • 住所や電話番号、メールアドレスを教えてほしいと言ってくる
  • 部屋に上がり込んでくる
  • お金を貸してほしいと頼んでくる
  • 子供同士のトラブル
  • お風呂やトイレの使い方などにケチをつけられる など

DVシェルター内で入居者同士のトラブルが起きた際はスタッフに相談するようにしましょう。

住環境が良くないこともある

DVシェルターの住環境は必ずしも快適なものとは限りません。例えば以下のようなケースもあります。

  • 部屋が狭い
  • トイレやお風呂が共同
  • 温度調整が良好でない

運営体制も施設によって異なるため、スタッフの人数が足りず、相談や連絡がスムーズにいかないこともあります。

ペットは一緒に入れない

DVシェルターはペットと一緒には入居できないのが原則です。ペットを連れて入居できるシェルターも存在しますが、極めて稀なケースです。

配偶者名義のキャッシュカード・保険証は使わない

DVシェルターに入居中は、配偶者名義のキャッシュカードやクレジットカードを使ってはいけません。カードを使うと、利用履歴から避難場所が特定される恐れがあります。

また、配偶者名義の保険証で病院を受診すると、社会保険事務所などから配偶者宛てにどの病院を受診したか通知が届きます。

どこの病院を受診したかで避難先が特定される恐れがあります。

DVシェルターの利用条件

DVシェルターは収容人数に限りがあるため、緊急性が高い場合にのみ利用が認められます。緊急性が認められる条件とは、例えば以下となります。

  • パートナーから日常的に身体的暴力を受けている
  • 生命や身体へ危険がある

言葉だけで説明しても緊急性が伝わりにくいことがあります。DVの証拠があればシェルターへの入居が認められやすいと言えます。

一方、モラハラなど身体的な暴力以外のDVについては入居が認められにくくなります。

DVシェルターを利用するまでの流れ

DVシェルターを利用するまでの流れ

DVシェルターを利用するまでの流れについて順を追って解説します。

DVの証拠を確保する

前述のとおり、DVシェルターの利用が認められるためには、緊急性が高いことが重要です。

そのため、パートナーから日常的に身体的暴力を受けていること、生命や身体へ危険があることを立証できる証拠を集めましょう。

具体的には以下のようなものが証拠として有効です。

  • DVによってできたケガの写真
  • 暴力や暴言を受けている最中の録画や録音
  • 配偶者からの脅迫的なメールやメッセージ
  • 医師の診断書
  • DVを受けた内容をメモした日記 など

荷物をまとめておく

DVシェルターは公的機関の相談窓口を通じて申し込みますが、相談後すぐに入居が決まり、そのまま入居することもあります。

この場合、自宅に立ち寄ることができない可能性もあります。 事前に貴重品や身の回りのものを整理し、すぐに入居できるように準備しておきましょう。

なお、シェルターには生活に必要なものが揃っているため、必要最低限の荷物で十分です。具体的には以下のような荷物を準備しておきましょう。

  • DVの証拠となるもの
  • 現金・預金通帳
  • 印鑑
  • 健康保険証や母子手帳
  • 運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどの身分証明書
  • スマホや携帯電話
  • 子供がいる場合はミルクやおむつ、学習に必要なもの など

多くの荷物を準備していると配偶者に怪しまれる恐れがあり、DVが悪化する可能性もあります。荷物は最小限にとどめ、配偶者にバレないように注意しましょう。

公的機関の相談窓口へ連絡する

DVシェルターを利用するには下記の公的な機関への相談が必要です。

  • 配偶者暴力相談センター
  • 女性相談センター
  • 福祉事務所
  • 警察署(生活安全課)

近くに相談できる施設がない場合は、DV相談+(プラス)やDV相談ナビに連絡することで最寄りの窓口を紹介してもらえます。

  • DV相談ナビ:全国共通電話番号「#8008(はれれば)」
  • DV相談+:0120-279-899(つなぐ・はやく)

参考:内閣府 男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センター(https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html)」※1
内閣府 男女共同参画局「DV相談ナビ (https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv_navi/index.html#dv_navi)」※2
内閣府「DV相談+(https://soudanplus.jp/)」※3

DVシェルター入居中・退所後の住民票について

DVシェルター入居中・退所後の住民票について

避難中に児童扶養手当などの公的支援を受けるためには、住民票の異動が必要な場合があります。

DVやストーカー被害に遭っている場合は役所にその旨を伝えることで配偶者に対して住民票の閲覧制限ができます。

また、DVシェルター退所後は自宅に戻るのではなく、別居状態を継続することが重要になります。

別居先に住民票を異動される際は配偶者に別居先を特定されないように住民票の閲覧制限を申して出ておきましょう。

DV問題を解決する方法

DVシェルターはあくまで一時的な保護施設です。緊急避難先としては有効ですが、根本解決にはなりません。

DV問題を解決するためには、DVを行う配偶者と距離を保ちながら離婚を成立させ、人生を再スタートさせることが必要です。そのためには以下の手順で離婚を進めることになります。

  • 安全な場所で別居状態を続ける
  • 保護命令を申し立てる
  • 弁護士に依頼して離婚を進める

安全な場所で別居状態を続ける

DVを行う配偶者は離婚に応じない傾向があり、離婚協議が長期化する傾向があります。

また、DV加害者と共同生活を続けると、洗脳され、精神的に疲弊し、離婚を諦めてしまうケースもあります。

DVを行う配偶者と離婚するためには、別居し、物理的に距離を保つことが重要です。

DVシェルターを利用できるのは長くて数週間ですので、DVシェルター入居中に別居先を探すことが重要です。

別居先に両親や親族の家を選択する人もいますが、DV加害者に突き止められる恐れがあるため、注意が必要です。

離婚後の生活を考え、就職先や子供がいる場合は転園・転校のことも考慮して別居先を考えましょう。

保護命令を申し立てる

身の安全を確保するため、保護命令を申し立てましょう。

保護命令とは、配偶者や生活を共にしているパートナーからの暴力を防ぐため、加害者に対し、被害者へのつきまといなどを禁止する命令です。

保護命令には以下の種類があります。

  • 申立人への接近禁止命令(6ヶ月間申立人の身辺や勤務先につきまとうことの禁止)
  • 申立人への電話等禁止命令(面会要求や暴言、緊急時以外の電話、嫌がらせ、名誉基礎に該当する行為の禁止)
  • 申立人の子供への接近禁止命令
  • 申立人の親族等への接近禁止命令
  • 退去命令(2ヶ月間、申立人の家から退去させ、当該住居付近の徘徊を禁止する命令)

裁判所から保護命令が出されれば、居場所を特定しようとする加害者の抑止力として働きます。また、保護命令に違反すると「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処されます。

配偶者が居場所を特定しようと追跡したときも、保護命令違反であることを警察に伝えれば動いてくれやすくなります。

弁護士に依頼して離婚を進める

弁護士に依頼して離婚を進める

安全な別居先を確保し、保護命令の申立てを行ったら、弁護士に依頼して離婚を進めましょう。

離婚は当事者双方が合意すれば成立しますが、DV加害者である配偶者と直接話し合うのは非常に危険です。離婚を進める際は弁護士に依頼し、離婚を進めましょう。

弁護士に依頼すれば、配偶者と直接顔を合わせることなく、離婚を進めることができます。また、婚姻費用の請求や調停、裁判の手続きも代行してくれます。

まとめ

DVを受けている場合、身の安全を図るために避難することが重要になります。

DVシェルターはDVの避難先として有効ですが、あくまで一時的な避難先にすぎません。DV問題を根本解決するためには身の安全を図りながら弁護士を介して離婚を進めることが重要です。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」はDV・モラハラ問題をはじめ、離婚・男女問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

※1男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センター
※2 内閣府 男女共同参画局「DV相談ナビ
※3 内閣府「DV相談+

 

離婚コラム検索

離婚のDV・モラハラのよく読まれているコラム

新着離婚コラム

離婚問題で悩んでいる方は、まず弁護士に相談!

離婚問題の慰謝料は弁護士に相談して適正な金額で解決!

離婚の慰謝料の話し合いには、様々な準備や証拠の収集が必要です。1人で悩まず、弁護士に相談して適正な慰謝料で解決しましょう。

離婚問題に関する悩み・疑問を弁護士が無料で回答!

離婚問題を抱えているが「弁護士に相談するべきかわからない」「弁護士に相談する前に確認したいことがある」そんな方へ、悩みは1人で溜め込まず気軽に専門家に質問してみましょう。

TOPへ