半分もらえるわけじゃない?知らないと損する離婚の年金分割のポイント。
離婚件数は減少傾向と言われていますが、婚姻期間の長い夫婦による離婚いわゆる熟年離婚はむしろ定着してきています。日本の公的年金制度は、基本的に就労可能な間は年金を納め、老後に年金納付実績に応じた年金を受給する制度です。
しかし、それでは専業主婦など家事労働で配偶者を支えてきた人は離婚すると損をしてしまいます。年金分割制度は、離婚後に受給する年金が夫婦間で公平になるように作られたものです。
この記事では、年金制度とはどういうものか、離婚を考えている人が年金分割する場合はどうすればいいのかを見ていきます。
- 目次
年金分割とは
年金分割という言葉を聞いたことがありますか?年金分割とは離婚後の夫婦の受け取る公的年金(以下、年金と呼ぶ)を公平にするための制度です。
年金分割制度は比較的歴史が浅く、平成19年に改正された厚生年金保険法によってできた制度です。
年金分割の必要性
なぜ離婚の際に年金分割をおこなうのでしょうか。
現在の日本の年金制度は 「収入が多いほど年金の納付実績が増え、年金の納付実績が多いほど老後に支給される年金金額が多い」 という仕組みになっています。
つまり収入が多い配偶者のほうが支給される年金も多くなります。この状態で離婚すると、夫婦のうち収入が低い方が損をしますよね。
例えば、会社員と家事労働で配偶者を支えてきた専業主婦(夫)の夫婦では特に年金の差が大きくなります。
このような状況を鑑み、離婚する際に夫婦の年金の納付実績を分割し、公平に配分する制度が年金分割なのです。
年金制度の基礎知識
年金分割の必要性について説明しました。日本には3つの階層からなる年金制度があります。詳細な年金分割の方法を説明する前に確認しておきましょう。
国民年金とは
年金制度の1つめの階層となるのが国民年金です。
国民年金とは日本在住(在日外国人含む)の20歳以上60歳未満のすべての人に加入を義務付けられた年金です。国民年金は「基礎年金」とも呼ばれます。
国民年金の保険者は以下の3つにわかれます。
第一号被保険者
日本国内在住の20歳以上60歳未満で、後述する第二号、第三号被保険者以外の方が該当します。具体的にはフリーターや自営業者、農業などに従事する人が該当します。
第二号被保険者
後述する厚生年金に加入している方が該当します。一定条件を満たす民間企業の給与所得者が該当します。
なお、第二号被保険者は、厚生年金に加入すると自動的に国民年金にも加入することになります。
第三号被保険者
第三号被保険者は、以下の要件をすべて満たす方が該当します。
- 20歳以上60歳未満である
- 第二号被保険者の配偶者である
- 年間収入が130万未満である
具体的には民間企業に勤める人の配偶者が専業主婦(夫)の場合などに該当します。
厚生年金とは
2つめの階層になるのが厚生年金です。厚生年金とは、民間企業に勤める一定要件を満たす給与所得者(第二号被保険者)が加入する年金です。
前述のとおり、厚生年金に加入する際は基礎年金である国民年金にも同時に加入します。つまり、厚生年金は国民年金に上乗せして加入するものです。
この厚生年金保険料は収入に対して一定の保険料率を乗じて計算します。したがって収入が多いほど納付する厚生年金保険料は高くなるのです。
共済年金とは
共済年金も2つめの階層に該当する年金です。共済年金は公務員などが加入していた年金です。
共済年金は国家公務員・地方公務員だけではなく、私立学校の教職員なども加入対象となっていました。
ただし、共済年金に加入していた人は、平成27年10月以降、厚生年金に加入することになっています。平成27年9月30日まで受給権があった場合のみ共済年金による給付を受けます。
企業年金とは
企業年金とは年金制度の3つ目の階層部分です。企業年金は、厚生年金などの2つ目の階層に上乗せで加入する任意の年金保険です。
企業年金は主に大手の企業が採用している年金で、「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「(企業型)確定拠出年金(通称iDeCo)」にわかれます。
第三号被保険者は基礎年金部分のみを納付しているとみなされる
第三号被保険者は第二号被保険者に扶養されていることになります。この場合、第三号被保険者は基礎年金のみを支払っているとみなされます。
ただし、実際に第三号被保険者に年金支払いの請求が来ることはありません。実は、第二号被保険者が加入している厚生年金の財源から第三号被保険者の国民年金が支払われているのです。
年金分割の対象となる年金とは
ここまで年金の種類について説明しました。年金分割では夫婦に支給される年金すべてが分割対象となるのでしょうか。
年金分割できるのは比例報酬部分のみ
年金分割の際に分割されるのは年金制度の2階層部分(老齢厚生年金などの比例報酬部分)のみになります。
1階層目の基礎年金部分や3階層目の企業年金は分割対象ではありません。したがって、配偶者が自営業などの第一号被保険者である場合には年金分割ができません。
なお、旧共済年金には3階層目に職域加算部分があります。これに関しては平成27年9月末までの加入期間のみが分割対象です。
また、年金分割の対象となるのは婚姻期間中に納付した年金です。婚姻前に納付していた年金については対象外となります。
年金分割の2つの制度
ここからは実際の年金分割の方法について説明していきます。 年金分割制度には下記の2つの制度があります。
合意分割制度とは
合意分割制度とは、以下の条件を満たす制度です。
- 平成19年4月1日以降に離婚をしている
- 夫婦のいずれかが婚姻中の厚生年金あるいは共済年金の記録がある
- 当事者(この場合夫婦)双方の合意あるいは裁判によって按分割合を決める
- 請求期限(離婚から2年以内)を過ぎていない
分割の割合について
合意分割制度は夫婦間による話し合いや裁判で決まるということを説明しました。では、年金分割の按分割合(分割する割合)はどのように決まるのでしょうか。
合意分割による按分割合は後述する「年金分割のための情報通知書」に記載された按分割合の範囲内で当事者の合意によって決めていきます。
年金分割可能な割合とは
情報通知書には年金分割の按分割合を「○○%を超え、50%以下」と記載しています。したがって記載の範囲で分割する割合を決めることができます。
年金分割の上限は50%ですから、最大で半分もらえることになります。
3号分割制度とは
3号分割とは、国民年金の第3号被保険者が請求をする際、以下の条件を満たしている場合に、配偶者の厚生年金記録を1/2ずつわける制度です。
- 平成20年5月1日以降に離婚している
- 平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間における配偶者の厚生年金記録がある
- 請求期限(離婚から2年以内)を過ぎていない
分割の割合について
合意分割と違い、3号分割では按分割合が1/2と決まっています。つまり夫婦で割合を決めることができないということです。
「合意分割」と「3号分割」のどちらが適用されるのか
合意分割と3号分割は併用できる
年金分割をするとなると「自分はどちらの制度を利用すればいいのか」と悩みますよね。実は年金分割制度は併用ができるのです。
例えば、婚姻期間中に合意分割しかできない期間と3号分割が請求できる期間が混在していることもあるでしょう。このような場合、合意分割の請求だけすればいいことになります。
合意分割の請求をすることで自動的に3号分割の請求もおこなわれます。以上を踏まえると、以下の2点だけを考えればいいことになります。
- そもそも年金分割ができるのかどうか
- 3号分割だけができるのかどうか
年金分割ができる人とは
年金分割を考えるなら、まず自分は年金分割ができるのかどうかを考える必要があります。前述の合意分割制度の条件を見てみましょう。
合意分割制度とは、以下の条件を満たす場合に利用できる制度です。
- 平成19年4月1日以降に離婚をしている
- 夫婦のいずれかが婚姻中の厚生年金あるいは共済年金の記録がある
- 当事者(この場合夫婦)双方の合意あるいは裁判によって按分割合を決める
- 請求期限(離婚から2年以内)を過ぎていない
つまり、以下のいずれかに該当する人は年金分割制度自体が利用できないことになります。
- 平成19年3月末以前に離婚した方
- 夫婦のいずれにも婚姻中の厚生年金や共済年金の記録がない
- 離婚から2年以上経過している
3号分割ができる人とは
合意分割の対象期間と3号分割の対象期間が混在している場合は合意分割を請求すればいいと説明しました。
ただし、請求者が3号分割のみ対象であるなら3号分割の請求手続きだけで済みます。3号分割の請求なら夫婦で按分割合に合意する必要がないため手続きがスムーズです。
前述の3号分割制度を利用できる条件をみてみます。
- 平成20年5月1日以降に離婚している
- 平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間における配偶者の厚生年金記録がある
- 離婚から2年以内である
「年金記録は4月1日以降が対象なのに離婚時期は5月1日以降である」ということに違和感があるかもしれません。
年金分割では離婚の前月までの年金記録が対象となります。そのため、このような規定になります。
合意分割の手続き方法
年金情報通知書の請求
合意分割は、夫婦で年金分割の按分割合に合意していることが前提です。年金分割の割合を決めるためには「年金分割のための情報通知書(以下、情報通知書)」が必要になります。
情報通知書は以下の方法で入手することができます。
情報通知書請求に必要な書類を用意
情報通知書を請求するにあたり、必要な書類は以下のとおりです。
- 年金分割のための情報提供請求書
- 情報通知書を請求する者の年金手帳もしくは基礎年金番号通知書
- 戸籍謄本
- 抄本など婚姻期間が確認できる書類(法律婚でない場合、戸籍では婚姻期間の確認ができないため、世帯全員の住民票の写しなどを準備します)
年金分割のための情報提供請求書はどこで入手するのか
「年金分割のための情報提供請求書」は日本年金機構のHPからダウンロードができます。近くに年金事務所がある場合は年金事務所で直接受け取ることもできます。
参考:日本年金機構「年金分割のための情報提供請求書(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/kyotsu/20181011-05.files/12_650.pdf)」※1
年金分割のための情報通知書を受け取る
年金分割のための情報提供請求書を提出すると年金分割のための情報通知書が届きます。情報提供通知書には以下の項目が記載されています。
第1号改定者と第2号改定者の情報
情報通知書には、第1号改定者と第2号改定者の氏名、生年月日、基礎年金番号の記載があります。
ここで第1号改定者とは年金分割をする(標準報酬額が多い)配偶者のことをいいます。第2号改定者とは年金分割をされる(標準報酬額が少ない)配偶者のことになります。
年金分割可能な按分割合の範囲
情報通知書には年金分割ができる按分割合の範囲が記載してあります。「○○%を超え、50%以下」というように50%を上限として書かれています。
その他にも以下の項目が記載されています。
- 婚姻期間
- 対象期間標準報酬総額
- 年金分割の対象となる期間
対象期間標準報酬総額で年金が増えるかどうかを確認する
年金分割のための情報通知書には夫婦それぞれの対象期間標準報酬総額の記載があります。これが厚生年金保険料の納付記録になります。
つまり、年金分割ではこの対象期間標準報酬総額を記載された按分割合で分割することになります。
対象期間標準報酬総額を確認することで自分の年金が増えるのか減るのかを確認できるのです。
50歳以上の人は年金見込み額を知ることができる
年金分割のための情報通知書には夫婦双方の対象期間標準報酬総額が記載されています。
ただし、50歳以上の人や障害年金を受けている場合は、年金分割のための情報提供請求の際に年金の見込み金額を照会できます。
50歳未満の人や障害年金を受給していない人は、この対象期間標準報酬総額から年金の金額を概算することになります。
年金分割の按分割合を夫婦で話し合う
情報通知書記載の按分割合にしたがって年金分割の按分割合を決めていきます。合意分割では情報通知書に記載された内容を夫婦で話し合い、合意が得られたら合意書を作成します。
離婚協議書に年金分割で決まったことを記載している場合は合意書の代用が可能です。合意書には下記の項目を記載します。
- 年金分割の按分割合に夫婦が合意したこと
- 合意した按分割合
話し合いで合意した場合の手続き
話し合いで年金分割の按分割合が決まったら年金事務所で手続きをおこないます。
話し合いで合意した場合は誰が年金分割の改定請求をするのか
基本的には年金事務所には元夫婦が一緒に行き、年金分割の改定請求をします。
元夫婦とはいえ離婚しているわけですから、「一緒に年金事務所に行くのは嫌だ」という人もいるでしょう。この場合は代理人が代わりに行くこともできます。
代理人に年金分割の手続きを依頼する場合は年金分割専用の委任状が必要です。
年金分割の改定請求の手続きに必要な書類
年金分割の改定請求の際には下記の書類が必要になります。
- 年金分割についての合意書
- 元夫婦それぞれの戸籍謄本
- 元夫婦それぞれの年金手帳
話し合いで決まらない場合の手続き
調停で按分割合を決める
夫婦の話し合いをしても按分割合が決まらない場合、裁判所に場所を移して話し合いをおこないます。これを年金分割調停といいます。
年金分割調停の申し立て
年金分割調停を申し立てできるのは離婚した夫婦のいずれかです。これを申立権者といいます。
申立権者は、相手方の住所地にある家庭裁判所あるいは夫婦が話し合いで決めた家庭裁判所に調停を申し立てます。
年金分割調停は調停委員会が間に入り、助言などを受けながら按分割合を決めていきます。
年金分割調停の申し立てに必要な書類
年金分割調停の申し立てには以下の書類が必要になります。
- 年金分割の割合を定める調停の申立書(以下のリンクからダウンロードできます)
- 年金分割のための情報提供通知書
- 元夫婦それぞれの戸籍謄本
参考:裁判所「家事調停(請求すべき按分割合)申立書(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_nenkinbunkatu_845kb.pdf)」※2
年金分割調停の申し立てに必要な費用
年金分割調停の申し立てには以下の費用がかかります。
- 収入印紙代:1200円
- 連絡用の郵便切手代:裁判所によって変わります
審判で按分割合を決める
年金分割調停で按分割合について合意できなかったら自動的に審判手続きに移ります。反対に、審判をおこなうためには調停を経なければなりません。これを調停前置主義といいます。
審判では裁判官が双方の意見を聞いたうえで按分割合を決めます。
審判をおこなう際は申立人あるいは相手方の住所地にある家庭裁判所あるいは夫婦が話し合いで決めた家庭裁判所に申し立てます。
なお、年金分割の割合を定める審判では按分割合が50%となることが多いです。
参考:裁判所「年金分割の割合を定める審判又は調停(http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_17/index.html)」※3
年金分割の割合を定める審判に必要な書類
年金分割の審判を申し立てる際には以下の書類が必要になります。
- 年金分割の割合を定める審判の申立書
- 年金分割のための情報提供通知書
- 元夫婦それぞれの戸籍謄本
参考:裁判所「家事調停(請求すべき按分割合)申立書(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_nenkinbunkatu_845kb.pdf)」※2
年金分割の割合を定める審判に必要な費用
- 収入印紙代:1350円 (確定証明申請手数料を含む。審判の際には確定証明申請手数料150円が必要になります)
- 郵便切手代:申し立てをおこなう裁判所によって変わります。
裁判で按分割合を決める
年金分割は離婚をすることが前提になるため、そもそも離婚自体に争いがあり、調停でも離婚が成立しない場合には、離婚について訴訟を提起する必要があり、離婚訴訟のなかで年金分割の請求をすることが多いです。
話し合い以外の年金分割請求手続きとは
話し合い以外(調停・審判・裁判)の方法で年金分割の按分割合が決まったら、年金分割手続きに入ります。
話し合い以外で決まった場合は誰が年金分割の請求をするのか
話し合いで年金分割が決まった場合は、離婚した夫婦が二人そろって年金事務所に行き、手続きをおこなうと説明しました。
一方、話し合い以外で決まった場合は、離婚した夫婦のどちらか一方が一人で年金事務所に行き、手続きをおこないます。
年金分割改定請求手続きに必要な書類
年金分割改定請求手続きに必要書類は下記になります。
- 年金分割の按分割合を決めた書類
- 元夫婦それぞれの年金手帳
- 元夫婦それぞれの戸籍謄本
なお、年金分割の按分割合を決めた書類とは以下のようなものになります。
- 按分割合が決定した審判・判決の謄本または抄本
- 年金の分割金額を決めた書類(調停調書など)の謄本または抄本
合意分割の手続きは離婚前にすべき!
年金分割の請求期限は離婚から2年です。ただし、合意分割の手続きをする場合は離婚前に手続きを取るようにしましょう。
合意分割では、年金分割のための情報通知書を受け取り、分割するかどうかの判断をすると説明しました。
情報通知書を請求した段階では、年金分割の手続きをしているという事実を配偶者に知られたくないという人もいるでしょう。
離婚前に年金分割のための情報通知書を請求した場合、情報通知書は請求者のみに送付されます。しかし、離婚後に請求した場合、離婚した夫婦それぞれに情報通知書が送付されます。
つまり、離婚前の請求であれば年金分割を考えていることを配偶者に知られずに判断することができます。
しかし、離婚後の請求の場合、年金分割を考えていることを配偶者に知られてしまうのです。
同居している配偶者に知られないためには
年金分割のための情報通知書を離婚前に請求すれば、配偶者に知られずに情報通知書を受け取ることができます。
しかし、配偶者と同居している場合は「情報通知書が郵送でされたら、同居している配偶者に年金分割を考えていることを知られるかも」と不安になるかもしれません。
実は、年金分割のための情報通知書は郵送だけでなく年金事務所の窓口で受け取ることもできます。
同居している配偶者などに年金分割のことを知られたくない場合などは検討してみるといいでしょう。
3号分割の手続き方法
3号分割の手続きは書類の提出のみ
3号分割は合意分割と違い、夫婦で合意する必要がありません。したがって、第3号被保険者が一人で年金事務所に行き、年金分割の標準報酬改定請求の手続きをすれば完了です。
3号分割では合意書を作成しません。そのため年金分割の手続きに必要な書類は以下になります。
- 年金手帳
- 元夫婦それぞれの戸籍謄本
年金分割によってお金を受け取るのは年金支給年齢になってから
年金分割をおこない、分割された年金はいつ受け取ることができるのでしょうか。
誤解されやすいのですが、年金分割によって分割されるのは年金の金額ではありません。年金記録を分割するのです。
したがって、年金分割をおこなったからといってすぐにお金を受け取ることができるわけではありません。そもそも年金を受給するためには下記の条件を満たすことが必要です。
- 年金受給年齢(2018年現在は65歳)であること
- 所定の年金納付期間があること
したがって、年金分割は現在の生活の足しになるものではありません。離婚後の老後の生活にのみ効果があるものです。
なお、公的年金を受給するための年金保険料の納付期間はこれまで25年以上となっていました。
しかし、平成29年8月1日からは年金納付期間が10年以上で年金を受け取ることができるようになっています。また、これらの年金受給年齢や受給資格は今後変更される可能性もあります。
年金分割だけでは生活は厳しい
年金分割しただけでは老後の生活は厳しい
年金分割について説明してきました。では、年金分割をした人はどのくらい年金が増えたのかを見ていきましょう。
厚生労働省が平成28年度の年金分割の状況を報告しています。これによると平均年金月額(円)の増減は、
- 年金分割をした側:-30,503円
- 年金分割を受けた側:+31,967円
となっています。この金額を多いと捉えるか少ないと捉えるかは人それぞれでしょう。確かに受け取る年金が毎月3万円増えるのですから決して少ない金額とはいえません。
年金分割を受けることに価値はあるでしょう。ただし、3万円を受け取れるようになったというだけで生活ができるようになるとはいえません。
次に3号分割のみをおこなった場合の増減をみてみます。
- 年金分割をした側:-4,605円
- 年金分割を受けた側:+5,194円
どうでしょうか。3号分割に限ってみると、年金分割によって受けられる金額は非常に限られたものであることがわかると思います。
年金を受給するまで年金分割による恩恵は受けられない
年金分割によって受け取ることのできるお金は年金受給年齢になるまで支払われません。さらに、分割を受ける側に年金受給資格がなければ年金を受けることすらできません。
つまり、年金受給年齢に達するまでの間は年金分割による恩恵を受けられないのです。
離婚をする際は年金分割以外にも財産分与や慰謝料など受け取ることのできるお金があります。財産分与は退職金なども対象となります。
年金分割だけに頼らず、離婚の際は財産分与などをしっかりと決めていくことが大切です。
まとめ
年金分割について説明してきました。 年金分割は比較的新しい制度ですので、どのように手続きをすればいいのかわからないことも多くあると思います。
また、年金分割だけで離婚後の生活を賄おうとするのは非常に難しいです。年金分割を考えるなら財産分与や慰謝料などをしっかりと決めておくことが大切になります。
※1 日本年金機構「年金分割のための情報提供請求書」
※2 裁判所「家事調停(請求すべき按分割合)申立書」
※3 裁判所「年金分割の割合を定める審判又は調停」
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