家庭内別居だけで離婚できる?家庭内別居を切り出す前に知るべきこと
離婚にいたらないまでも、夫婦関係に問題があり、家庭内別居を選択している夫婦もいます。
家庭内別居は離婚の手続きを取らず、別居するわけでもありません。それでも家庭内別居を選択する背景には何があるのでしょうか。
この記事では、家庭内別居にいたる理由や家庭内別居のメリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。
- 目次
家庭内別居とは
家庭内別居とは、夫婦関係に問題があるのに、何らかの理由で同居を続けている夫婦のことを指しますが、法的な定義があるわけではありません。
家庭内別居に当たるケースとは
一般的に家庭内別居と言われるのはどのようなケースなのでしょうか。
必要最低限の会話しかない
家庭内別居に当たるケースのなかで、一番わかりやすいのが「夫婦の会話がない」ことでしょう。子供のことや連絡事項などの必要最低限の会話はあっても、夫婦らしい会話がほとんどない場合は家庭内別居状態と言えます。
通常、相手のことに関心があれば、聞きたいこと、共有したいことなどで会話がはずむはず。会話がないということは、相手に関心がなく、関わりを持ちたいと思っていないことになります。
寝室が別
寝室が別というのも家庭内別居であるケースがあります。就寝前は夫婦が最もコミュニケーションを取りやすい時間です。
寝室が別々でセックスレスだと夫婦のコミュニケーションが取りにくく、家庭内別居とみなされることがあります。
ただし、仕事や家庭の事情によって寝室を別にしなければならないこともあります。そのため、「夫婦の寝室が別」という理由だけで家庭内別居と判断されることはほとんどありません。
食事や洗濯などを別々に行っている
通常、一緒に暮らしていれば、夫婦の食事の準備や洗濯は一方がまとめて行いますよね。
しかし、同居しているにも関わらず、食事の準備や洗濯をそれぞれが自分で行っているようだと「家庭内別居状態である」と判断されることがあります。
家庭内別居と仮面夫婦との違い
家庭内別居と同じような言葉に「仮面夫婦」というのがあります。仮面夫婦も家庭内別居も、夫婦関係に問題があるものの、離婚せず一緒に暮らしているという共通点があります。
明確な定義があるわけではありませんが、仮面夫婦は対外的には仲が良い夫婦を演じているが、家庭内別居の場合は対外的に仲が良いフリをするわけではないという違いがあります。
家庭内別居にいたる理由
夫婦関係に問題があるにも関わらず、なぜ離婚せず家庭内別居を選択するのでしょうか。以下で詳しく見ていきます。
経済的に離婚できない
結婚後、妻が専業主婦やパートタイマーとなり、生活費のほとんどを夫の収入で賄っているケースも多いでしょう。離婚すると夫からの収入はなくなるため、経済的な負担は大きくなります。
このように、経済的な理由で家庭内別居を選択する人もいます。
子供のために離婚できない
一般的に「子供の健全な成長のためには、父親・母親両方から愛情を注がれて育つほうが良い」と考えられています。また、離婚して経済的に困窮すると、子供が進学や夢をあきらめなければならない可能性も出てきます。
このように、子供のことを考えて、離婚ではなく家庭内別居という形を取ることもあります。
離婚が成立しそうにない
離婚には協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚の4つの種類があります。夫婦が話し合いで合意を図り、離婚が成立することを協議離婚といいます。
協議離婚であれば、夫婦が合意すればどのような理由であっても離婚できます。しかし、いくら夫婦関係に問題があっても、相手が離婚に合意していなければ話し合いで離婚することはできなくなります。
話し合いで離婚が成立しない場合は調停や裁判へと進みます。しかし、調停は調停委員を介して夫婦が話し合いを行う方法ですので、調停に進んだからといって離婚が成立するとは限りません。
調停でも離婚が成立しない場合は訴訟を起こし、裁判を行います。裁判所に離婚を認めてもらうためには民法に定める法定離婚事由が必要です。法定離婚事由には以下の5つがあります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病で、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
つまり、離婚に合意が得られず、法定離婚事由に該当する理由もない場合は離婚が成立しないことになるのです。
離婚を切り出しても離婚が成立する見込みがないため、家庭内別居という選択をせざるを得ないケースもあるのです。
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離婚の種類とは|それぞれの違いについて説明
離婚手続きが面倒
離婚には親権や財産分与、養育費など決めることがたくさんあります。また、今住んでいる家から出て行く場合は新しく住む家を探したり、引っ越し手続きを取ったりしなければなりません。
このように、離婚には必要な手続きが多く面倒なため、家庭内別居を続けているケースもあります。
家庭内別居するメリット
家庭内別居という選択をするとどのようなメリットがあるでしょうか。以下で詳しく見ていきます。
経済的な負担が少ない
離婚して家を出たら、当然家賃や光熱費などが発生します。夫婦が一緒に住んでいればこれらの経済的負担が軽減されます。
子供への影響が少ない
子供が両親と一緒に生活できるのも家庭内別居のメリットと言えるでしょう。
子供の前で夫婦が毎日ケンカしているようだと子供にとってよくありませんが、そういうわけでなければ、両親が揃っているほうが子供への悪い影響は少なくなります。
家庭内別居によって夫婦仲が改善するケースも
家庭内別居をすることで、かえって夫婦仲が改善することもあります。
人間は距離が離れすぎるとすれ違いが起きますが、一緒にいる時間が長すぎても衝突が増えることがあります。
一定のルールのもとで家庭内別居をすることでケンカや衝突が減り、夫婦仲が改善することもあるのです。
家庭内別居のデメリット
家庭内別居にはデメリットもあります。どのようなデメリットがあるのでしょうか。
ストレスが溜まる
家庭内別居は「別居」という言葉が含まれますが、夫婦が同居し続けることになります。夫婦関係に問題があるのに同じ家で生活し続けるのはストレスが溜まります。
子供の精神面に少なからず影響をおよぼす
両親が揃った環境で育つとはいえ、子供はその場の雰囲気や会話から両親の微妙な関係性や不穏な空気を敏感に感じ取ります。
両親が不仲な状態を見て育つと、子供は精神的に不安定になったり、「自分のせいで両親の仲が悪くなったのではないか」と考えたりすることもあります。
家庭内別居を始めるならルールを決めよう
ここまで、家庭内別居のメリット・デメリットについて見てきました。家庭内別居を始めるなら、ルールを決めて始めることが大切です。
離婚していないとはいえ、夫婦関係に問題がある夫婦が同じ家に暮らすわけですから、ルールを決めておかなければ継続するのが難しくなります。
例えば、顔を合わせたとき。家のなかで顔を合わせたのに挨拶もしないというのは不自然です。仲が悪くても同居し続ける限り最低限の礼儀をもって接することが大切です。
特に子供がいる夫婦は子供との接し方が重要です。家庭内別居は少なからず子供に悪影響をおよぼす恐れがあります。子供とどう接するかについては、しっかりと話し合って決めておきましょう。
家庭内別居中の生活費はどうなる?
民法では夫婦に婚姻費用分担義務を定めています。
第760条
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
婚姻費用とは婚姻中の生活費のことです。婚姻費用の分担義務は別居中も発生しますから、当然、家庭内別居中であっても婚姻費用分担義務は発生します。
婚姻費用の分担割合は、子供の有無や夫婦それぞれの収入などによって変わります。基本的に、別居中の婚姻費用の金額は裁判所の養育費・婚姻費用算定表を基に決めるケースが多いです。
参考:裁判所「養育費・婚姻費用算定表」
裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」は夫婦が別居していることを想定して作られたものです。
家庭内別居は夫婦が同居していますので、家庭内別居中の婚姻費用は算定表に記載の金額と変わってきます。詳しくは弁護士にご相談ください。
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別居中の生活費相場の算出方法|婚姻費用を請求する
家庭内別居中の不倫に対して慰謝料請求できるのか
家庭内別居中は離婚しているわけではありません。したがって、婚姻中の配偶者の不倫に対しては慰謝料を請求することはできます。
ただし、配偶者が不倫をする段階で「すでに婚姻関係が破綻していた」とみなされた場合は慰謝料を請求することが困難なケースもあります。例えば、別居中に配偶者が不倫をしたケースなどが該当します。
一方、家庭内別居は同居していますので、「婚姻関係が破綻している」とみなされる可能性が低くなります。家庭内別居中かどうかは外からわかりにくく、裁判所が判断し難いためです。
家庭内別居を婚姻関係の破綻とみなすのは難しいケースが多いです。
しかし、「離婚協議をしていた」または「家計が別で夫婦関係がなく、家事の分担もない」などの場合は「婚姻関係が破綻している」と判断される可能性もあります。
もし「婚姻関係が破綻している」と判断されると、家庭内別居であっても慰謝料の請求は難しくなります。
家庭内別居を解消して夫婦仲を取り戻すには
関係性に問題がある夫婦が家庭内別居を続けていてもストレスが溜まる一方です。家庭内別居を解消するためにも、まずは夫婦関係の修復を図ることが大切です。
このままの関係で良いのか夫婦で話し合う
家庭内別居を解消し、夫婦関係を修復するにはお互いの意思を確認する必要があります。
一方が離婚を望んでいるのに夫婦関係の修復を図ろうとしてもうまく行きません。このままで良いと思っているのか、この関係性をどう思っているのかなど、しっかりと話し合いましょう。
少しずつコミュニケーションを増やしていく
家庭内別居が長期間におよぶと「今日から仲良くしましょう」と言われても難しいですよね。
まずは「おはよう」「行ってらっしゃい」などの短い挨拶から始めるようにしましょう。毎日少しずつコミュニケーションを取ることで夫婦の距離も近づきやすくなります。
目を合わせて話すようにする
歪みが生じた関係を元に戻すには、会話の多さも重要ですが、互いに目を合せて話すようにすることも大切です。目を合せて話すことで信頼関係を築きやすくなります。
離婚することを前提とした家庭内別居もある
家庭内別居中の夫婦のなかには、離婚を見据えた夫婦もいます。互いに離婚することに合意しているが、子供の年齢や家庭の状況などですぐに離婚することが困難な場合に家庭内別居という選択を採ることがあります。
家庭内別居を理由に離婚できるのか
関係修復を図ってみたけれど修復できそうにない…そのような場合は離婚を考えるのも一つです。では、家庭内別居から離婚に進むにはどうすれば良いのでしょうか。
夫婦双方が離婚に合意していれば離婚できる
前述のとおり、夫婦が離婚に合意していればどのような理由であっても離婚できます。ただし、離婚は決めなければならないことが多くあります。
そもそも、夫婦関係に問題があって家庭内別居を選択しているわけですから、スムーズに話し合いができるとは限りません。
合意が得られない場合は法定離婚事由が必要
離婚の合意が得られず調停でも離婚が成立しない場合は、訴訟を起こし、裁判を行います。
前述のとおり、裁判で離婚を認めたもらうためには法定離婚事由が必要です。法定離婚事由のなかに「家庭内別居」というものはないため、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが重要になります。
家庭内別居を「婚姻を継続し難い重大な事由」と認めてもらうには「婚姻関係が破綻している」とみなされる必要があります。
家庭内別居は夫婦が同居しているため、外から夫婦の実態を知ることはできません。具体的には家庭内別居の原因や態様などで婚姻関係の破綻を証明していくことになります。
家庭内別居を理由に離婚するのは難しいことが多くあります。そのため弁護士と相談しながら進めることが大切です。
離婚後も同居を続ける家庭内別居の形もある
離婚が成立したにも関わらず同居を続ける夫婦もいます。これも「家庭内別居」の一つの形と言えるでしょう。
夫婦には婚姻費用の分担義務以外にも貞操義務や相互扶助義務など、さまざまな義務が発生します。しかし、離婚後に同居している夫婦は離婚が成立しているため、夫婦としての義務はありません。
このように、夫婦として法的に縛られることなく、同居のメリットだけを享受するために離婚後に同居するケースもあるのです。
具体的には「子供がいて別居したくない」「経済的に別居できない」といったケースが多いです。
まとめ
家庭内別居のメリット・デメリット、家庭内別居から関係を修復する方法について説明しました。
家庭内別居にはメリットもありますが、デメリットも多いです。一度こじれた関係を元に戻すのは時間がかかるかもしれませんが、焦らず長い目で修復を図ることも大切です。
どうしても修復が難しいという場合は離婚も視野に入れましょう。
家庭内別居という理由だけで離婚するのは簡単ではありません。離婚を考えたら弁護士と相談しながら進めていくのが良いでしょう。
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