マタニティーブルーとは|妊娠中に離婚を考えてしまう理由と克服方法
「マタニティーブルー」という言葉をご存じでしょうか。
妊娠中や出産直後は子供が生まれることで幸せを感じる時期ではありますが、突然悲しくなったり、イライラしたりしてしまうことがあります。これをマタニティーブルーと言います。
マタニティーブルーになると、「夫とこのまま結婚していても良いのだろうか」「結婚生活を続ける自信がない」など、離婚を考える女性もいます。
そもそも、マタニティーブルーを理由に離婚をすることは可能なのでしょうか。
この記事では、マタニティーブルーの解消方法や解決策なども合わせて、マタニティーブルーにおける離婚について解説していきます。
- 目次
マタニティーブルーとは
マタニティーブルーとは、妊娠中や出産後の時期に起こる軽度のうつ症状です。
「産後うつ」と似たような症状が現れ、情緒不安定な状態になります。
感情の起伏が激しくなり、突然涙が出てくるなどこれまでと違った感情を感じるようになるのです。
マタニティーブルーと産後うつの違いについては「マタニティーブルーと産後うつの違い」で後述します。
マタニティーブルーの主な症状
マタニティーブルーになると、結婚生活に不安を感じたり、離婚まで考えてしまうことも少なくありません。
マタニティーブルーの症状には個人差がありますが、代表的な症状として次のようなものがあります。
マタニティーブルーの症状① - 落ち込みやすい
マタニティーブルーがどれくらいの期間続くかは個人差がありますが、毎日不安を抱えて過ごすことになります。
不安が続き、精神的に不安定になると誰でも落ち込みやすくなってしまうでしょう。
そんなとき、「夫が自分の気持ちを理解してくれない」と失望することで離婚を考えてしまうこともあるようです。
マタニティーブルーの症状② - イライラしやすい
妊娠中の女性は身体が変化するため、精神的に不安定になり、イライラしやすくなる方も多いです。
イライラすることで、夫に冷たい態度やきつい言い方になってしまうため、喧嘩も増えてしまいがちです。
こうした喧嘩の積み重ねにより、「夫と性格や価値観が合わない」と考えて離婚するというケースもあります。
マタニティーブルーの症状③ - 不安が消えない
妊娠・出産は、新しい命を自分の体に宿し、身体のなかで成長を感じながら子供を産むことです。
この感覚は妊娠や出産した人にしか分かりません。
幸福感も得られますが、特に初産の方は大きな不安が続くことでマタニティーブルーになることがあります。
そして、不安なときに夫が協力してくれない場合は、離婚したいと考えてしまうこともあるようです。
マタニティーブルーと産後うつの違い
マタニティーブルーと似たような症状が現れる「産後うつ」という病気もありますが、この2つは異なるものになります。
マタニティーブルーは数日程度と短い期間で自然とに症状が治まっていくものです。
しかし、産後うつは症状が数週間以上と長期間続くため、放っておかずに病院で治療が必要です。
マタニティーブルーはいつからいつまで続くのか
マタニティーブルーは時間とともに自然に治ると言われていますが、症状の強さやマタニティーブルーが続く時期には個人差があります。
マタニティーブルーが起こる時期は妊娠中だけではありません。
出産から1ヵ月以内後くらいまで続く場合もあると言われています。
マタニティーブルーの原因
マタニティーブルーが起こる原因としては、おもに以下の4つが挙げられます。
ホルモンバランスの乱れ
妊娠すると普段とはホルモンバランスが変わってきます。
たとえば、妊娠することでエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンの分泌が増加しますが、出産すると急激に減少します。
このホルモンバランスの乱れが精神にも影響を与え、マタニティーブルーを引き起こすと考えられています。
出産や親になることへの不安
出産すれば、母親として育児を行い、一人の人間として育てなければなりません。
出産前とは生活が大きく変わるだけではなく、これまで経験したことのない未知の世界へ踏み出すこととなります。
そのため、「子供を育てていけるのか」「親としての役割を果たせるのか」という不安がマタニティーブルーを助長させます。
出産・育児疲れ
出産は体力を消耗します。
また、出産後は授乳や育児が続くため、育児の合間に家事を行わなければならないとなると体力面でも精神面でも疲労が重なります。
特に真面目な方や心配性の方は、無理をしてすべてをこなそうとするためマタニティーブルーに陥りやすいと言えるでしょう。
体調不良・睡眠不足
妊娠時や出産後は体調が変化するため、体調不良を起こしやすいものです。
妊娠時初期にはつわりがあり、そこから赤ちゃんの成長とともに腰痛やむくみなどさまざまな体調不良が起こります。
出産後は体力が回復するまで時間がかかるうえ、昼夜を問わず授乳や育児が続くため、睡眠不足になりがちです。
これらが積み重なることでマタニティーブルーを引き起こしやすくなります。
マタニティーブルーを解消するには
マタニティーブルーになると精神的につらく、離婚を考えてしまうほど思い詰めてしまうこともあります。
つらいマタニティーブルーの時期を少しでも解消するにはどうすれば良いのでしょうか。
不安な気持ちを誰かに聞いてもらう
不安な気持ちを誰かに聞いてもらうだけで、気持ちが軽くなることもあります。
妊娠や出産の不安は女性だからこそ共有できるものなので、友達や家族、保育士などに話を聞いてもらいましょう。
もし周囲に話を聞いてもらえる人がいなければ、妊婦が集まる母親学級などに参加してみても良いでしょう。
夫と話し合い協力してもらう
妊娠中や出産後には夫への不満が募り、イライラしたり不安になったりする人も多いです。
夫婦で話し合ったり、一緒に妊婦検診に行くなどして出産についての理解を夫にも深めてもらいましょう。
父親になる自覚や出産の大変さを知ってもらうことで、夫も協力的になってくれるかもしれません。
気分転換を図る
マタニティーブルーの時期にじっと家に一人でいては、ますますマイナス思考に陥る可能性があります。
息抜きや気分転換をして身体も心もスッキリさせましょう。
少し外の散歩に出たり、簡単な運動をしたりするだけでも気分転換できるものです。
妊娠中であればマタニティヨガなど妊婦さん向けのスポーツ教室があります。
医師やカウンセラーに相談する
マタニティーブルーは病気ではないものの、心身共に辛くなるものです。
専門家である医師やカウンセラーに相談すれば、専門的な知識や経験を基にアドバイスやサポートしてもらえます。
こうすることで、マタニティーブルーの原因となる妊娠や出産に関する不安を取り除ことが期待できます。
マタニティーブルーで離婚を回避するために知るべきこと
マタニティーブルーによって「離婚したい」と思っても、将来を考えると離婚は回避したいと考えることもあるでしょう。
マタニティーブルーによる離婚を回避するためにも、次のことを知っておきましょう。
夫のサポートは不可欠
妊娠や出産を乗り越えるには、夫のサポートは不可欠と言えます。
妊娠中は気持ちが不安定になりやすいうえに、つわりや腰痛など体調も不安定になります。
夫が家事をサポートしつつ、妻の体調管理やマッサージなどのケアをしてくれれば不安も軽減されるでしょう。
また、出産後は体力回復に時間がかかりますが、同時に育児も行わなければなりません。
できる限り夫にも育児に協力してもらうようにすれば、体力面でも精神面でも大きな助けになるでしょう。
夫もマタニティーブルーになる?
マタニティーブルーになるのは女性だけと考えられていましたが、近年では男性もマタニティーブルーになる可能性があると言われています。
父性という意味のパタニティを取って、男性版のマタニティーブルーのことをパタニティブルーと呼ぶこともあります。
ホルモンバランスを崩すことはないものの、妊娠中や産後の妻へ気を遣ったり、子育てへの不安などが積み重なることで夫もマタニティーブルーになっている可能性があることも知っておきましょう。
夫婦で協力をしたり、積極的にコミュニケーションを取るようにしたりすることで一緒に乗り越えることを心掛けてみてください。
マタニティーブルーを理由に離婚できるのか
マタニティーブルーを理由に離婚することは可能なのでしょうか。
マタニティーブルーを理由に離婚をする場合についてのポイントなども合わせて紹介します。
協議離婚なら離婚できる
マタニティーブルーが原因で離婚をしたい場合、協議離婚であれば可能です。
話し合いにより夫も離婚に合意した場合は離婚することができます。
しかし、夫が離婚に応じない場合には離婚調停となり、調停でも合意できなければ裁判となります。
裁判で離婚を認めてもらうためには法定離婚事由が必要になります。
マタニティーブルーは法定離婚事由にないため、それだけでは離婚は認められません。
マタニティーブルーを理由に裁判で離婚を認めてもらうためには「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが重要になります。
具体的には、暴言などによるモラハラやDV、不貞、同居義務を夫が果たさないなどの合理的な主張を積み上げることが必要になります。
マタニティーブルーだけでは慰謝料請求は難しい
慰謝料とは精神的苦痛を与えられたことに対する損害賠償金です。
つまり、慰謝料を請求できるのはどちらか一方に非がある場合に限られます。
マタニティーブルーはどちらか一方に原因があるというものではありません。
そのため、マタニティーブルーだけでは慰謝料請求をすることは難しいと言えます。
しかし、マタニティーブルーの時期に夫が浮気をしたり、家出をされたり、暴言や暴力を受けていたりしたような場合には、慰謝料請求が可能となります。
慰謝料請求する際は事実を立証できる証拠を示して主張する必要があります。
マタニティーブルーを理由に離婚する際に決めておくべき6つのこと
マタニティーブルーが原因で離婚をすることになった場合、決めるべきことがあります。
親権者
子供がいる場合、離婚をすれば、どちらか片方を親権者に決めなければなりません。
妊娠中に離婚する場合、親権者は母親になります。出産してから離婚する場合には、子供の親権をどちらが持つのか決めましょう。
養育費
養育費は子供を養育・監護するのに必要な費用です。親権を持たない側は親権者に対して養育費を支払わなければなりません。
養育費は子供が成人するまでの期間、請求することができます。
あとから揉めることのないように、養育費の金額や支払い方法についてしっかりと決めておき、支払いが滞った場合に備えて公正証書を作成しておきましょう。
面会交流
親権を持たない親は、面会交流によって子供と会うことができる権利があります。
どれくらいの頻度でどのように連絡するのかなど事前に決めておき、書面の形で残しておきましょう。
財産分与
婚姻中に築いた財産は夫婦で公平に分けることになります。これを財産分与と言います。
財産分与は預貯金だけではなく、不動産や車といったものも対象になります。
財産分与に関して不安や疑問がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
婚姻費用
婚姻費用とは婚姻中の生活費のことです。
離婚が成立するまでは夫婦には扶養義務があるため、収入の多い側が少ない側に生活費を渡す必要があります。
収入の多い側が生活費を渡していない場合や、別居したりした場合には婚姻費用の分担を請求することができます。
年金分割
婚姻中の年金保険料の納付額について夫婦間で差がある場合、将来受給される年金額は公平でなくなります。
これを解決するために、離婚の際、より多く年金保険料を納付している側が配偶者に対して年金納付実績を分けることができます。これを年金分割と言います。
ただし、年金分割ができるのは婚姻中の厚生年金保険料の納付実績だけです。
マタニティーブルーで離婚するなら知っておきたい公的支援制度
マタニティーブルーで離婚した場合、親権者は一人で子供を育てていかなければなりません。
ひとり親家庭が利用できる公的支援について紹介します。
児童扶養手当
18歳未満の子供を持つひとり親家庭であれば自治体より一定額の補助を受けられます。
一定水準以下の所得であることが利用条件であり、所得によって受給額は異なります。
また、児童扶養手当の金額は全国消費者物価指数に合わせて改定されます。
自分の場合はいくらもらえるのか、お住まいの自治体に確認しましょう。
ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭の親や子供が病院で治療を受けた場合、自治体が自己負担分の医療費を支払ってくれるという制度です。
基本的には無料で医療が受けられる制度ですが、自治体によっては少額の自己負担が必要な場合もあります。
母子および父子福祉資金貸付金
20歳未満の子供を持つひとり親がお金を必要とする際に、必要とする資金の貸し付けを自治体が行う制度です。
就学支度や修学資金、就職支援、生活資金などさまざまな資金の種類があります。
なお、自治体によって「母子・父子・寡婦福祉資金貸付金」「母子福祉資金・父子福祉資金」など名称が異なります。
詳しくは各自治体にお問い合わせください。
公営住宅優遇措置
自治体によって、ひとり親であれば公営住宅へ優先的に入れてもらえる措置が設けられています。
家賃の一部補助といった制度を設ける自治体もあるので、居住する自治体に確認してみましょう。
税金の優遇措置
合計所得金額が500万円以下のひとり親世帯の場合、寡婦(夫)として所得控除を受けられます(令和2年現在)。
所得控除を受けることで住民税や所得税を軽減することができます。詳しくはお住まいの自治体や税務署にお問い合わせください。
まとめ
マタニティーブルーは自然に気持ちが回復していくものであり、時間とともに夫婦関係も通常通りに戻ることも多いです。
しかし、どうしても夫婦関係を立て直せないような場合や、マタニティーブルーで離婚したいという気持ちが変わらない場合は弁護士に相談しながら離婚を進めていきましょう。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
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