断捨離が理由の離婚|夫のものを無断で捨てたことを理由に離婚できる?
「断捨離」や「ミニマリスト」という言葉を耳にすることがあります。
断捨離とは、不要なものを捨てて本当に必要なものだけを選ぶことです。
断捨離の流行で家中のさまざまなものを捨てて整理する人が増えました。
では、夫のものを妻が無断で捨ててしまった場合、断捨離を原因に離婚をすることはできるのでしょうか。
ここでは、相手のものを無断で捨てたときの法的責任の有無や断捨離する際の注意点などを詳しく解説します。
- 目次
断捨離がきっかけで離婚に発展する理由
「そもそも断捨離が原因で離婚にまで発展するのか」と疑問に思うかもしれません。
なぜ断捨離が原因で離婚に発展するのか見ていきましょう。
夫が大切にしているものを勝手に捨てたことで夫婦の間に溝ができる
断捨離は不要なものを処分していきます。
しかし、夫の大切にしているものを勝手に妻が「不要だ」と判断して捨ててしまえばトラブルの原因になります。
自分のものを勝手に捨てられればショックですし、喧嘩に発展することもあります。
また、そこから夫婦関係がギクシャクして信頼関係が失われてしまうこともあります。
断捨離依存症になり家庭内不和が生まれる
妻が断捨離にハマりすぎて断捨離依存症になると、生活に必要なものまで捨ててしまうケースもあります。
生活に必要なものまで捨てられてしまうと生活が不便になり、家庭内不和が生まれてしまいます。
夫の妻を見る目も変わってしまい、夫婦間に溝ができることもあります。
夫も断捨離の対象になる
妻が断捨離で不要なものを考えたとき、ものだけではなく夫についても断捨離を考える場合があります。
「夫も不要なのではないか」と考え、離婚問題に発展してしまうこともあるようです。
夫の所有物を断捨離する行為は違法か
断捨離によって夫の所有物を捨ててしまう行為は違法なのでしょうか。
夫婦の所有物は「特有財産」と「共有財産」に分けられるため、それぞれのケースで違法性を見ていきましょう。
特有財産を捨てたケース
特有財産とは夫婦のどちらか一方が所有する財産を指します。
婚姻前から夫婦の一方が持っている財産や、婚姻後に夫婦で得た財産でもどちらか一方の所有と決めている財産は特有財産になります。
例えば、結婚前から集めていた趣味のものや、結婚後に自分のために購入したもの、相続で得たものなどが当てはまります。
対象が夫の特有財産である場合、妻に所有権はありません。そのため、勝手に捨ててしまうと違法です。
共有財産を捨てたケース
共有財産とは、婚姻中に夫婦で一緒に協力して得た財産です。例えば、食器や調理器具、家電、家具などが該当します。
共有財産は妻にも所有権があるため、勝手に捨てたとしても違法にはなりません。
夫の所有物を断捨離した妻の法的責任とは
夫の特有財産は夫の所有物になるため、断捨離すると違法になります。
問われる法的責任について、「刑事責任」と「民事責任」に分けて考えます。
刑事責任
夫の所有物を勝手に捨てる行為は「器物損壊罪」に当てはまる可能性があります。
器物破損罪は他人のものを損壊したときに成立する犯罪であり、捨てる行為も損壊と判断されます。
ただし、器物損壊はある程度価値のあるものでなければ罪にはなりません。また、被害者の告訴がなければ罪には問えません。
一方、断捨離で夫の物を勝手に売却してお金を自分のものにした場合、「横領罪」「窃盗罪」が成立する可能性もあります。
ただし、親族相盗例により、同居する家族は刑が免除されるため、妻が売却してお金を得ても実際には処罰されません。
民事責任
民事責任は損害賠償責任のことを指し、他人のものを勝手に処分すれば賠償金の支払い責任が生じます。
夫婦の家計は1つなので、夫婦間で損害賠償請求をする意味はないと言えます。
ただし、離婚をする場合には夫婦で財産を分けることになるため損害賠償請求する意義が発生します。
断捨離を理由に離婚できるのか
妻に大切なものを捨てられたことで不信感を持ったり、妻が断捨離にハマりすぎたことで生活が不便になったりすれば離婚を考えてしまうでしょう。
では、断捨離が理由で離婚することは可能なのでしょうか。
話し合いで合意できれば離婚できる
夫婦の話し合いによる「協議離婚」であれば、どんな理由でも離婚することができます。
当事者同士が離婚に合意すれば離婚が成立するため、断捨離が理由でも離婚することができます。
ただし、協議離婚はどちらか一方が離婚に合意しなければ離婚は成立しません。
話し合いで離婚が成立しない場合は調停を申し立て、離婚調停を行います。
調停は裁判所を利用する手続きですが、あくまで話し合いで合意を図る方法です。
そのため、合意できなければ離婚は成立しません。
裁判に進んだ場合
話し合いや調停でも離婚が成立しない場合は、裁判を起こし、裁判所に離婚の判断を仰ぐことになります。
裁判で離婚するには、「法定離婚事由」と呼ばれる法律で定められている離婚原因が必要です。
法定離婚事由には以下の5つがあります。
- 不貞行為(不倫・浮気)
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復しがたい精神病
- 婚姻関係を継続し難い重大な事由
断捨離が理由の場合、当てはまるとすれば「婚姻関係を継続し難い重大な事由」になると考えられます。
ただし、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に当てはまるためには、不貞行為などのほかの4つの事由に同程度の事情であることが必要です。
そのため、「断捨離で妻が大切なものを勝手に捨てた」という理由だけでは離婚事由として認められない可能性が高いでしょう。
断捨離を理由に裁判で離婚が認められる可能性があるケース
断捨離を理由に裁判で離婚を認められるケースとしては以下のようなものがあります。
断捨離を理由に夫婦喧嘩が絶えないケース
断捨離が原因で夫婦関係が非常に悪化したという場合は離婚が認められる可能性があります。
もとの原因が断捨離であっても、家庭内別居にいたった場合や喧嘩が絶えない状態などになれば婚姻関係を継続し難いと認められる可能性があります。
断捨離がきっかけで長期間別居しているケース
夫婦が長期間別居している場合は裁判で離婚が認められやすくなります。
そのため、断捨離がきっかけで長期間別居している場合は裁判で離婚が認められる可能性があります。
一般的には、別居から5年以上経っていれば「長期間別居している」とみなされ、相手が離婚を拒否していても離婚が認められる可能性があります(基本的には3年間別居していれば法定離婚事由があると判断されることが多いです)。
断捨離を理由に慰謝料請求はできるのか
断捨離を理由に離婚する場合、慰謝料請求を考える方もいるでしょう。
慰謝料は相手の不法行為によって精神的苦痛を与えられた場合に請求できるものです。
大切なものを勝手に捨てられ、「精神的苦痛を与えられた」と思うかもしれません。
しかし、断捨離だけを理由に慰謝料請求することは難しいのが実情です。
一方、断捨離の際に暴力を振るわれたり、不倫されたりした場合や勝手に家を出た場合、生活費を入れないといった場合は慰謝料請求が認められやすくなります。
断捨離する際の注意点
断捨離で夫婦関係や親子関係に不和が生じないようにするには、どのような点に注意すべきでしょうか。
断捨離を行う際の注意点を紹介します。
夫や子供のものを無断で捨ててはいけない
断捨離をする際は自分の私物だけを捨てるようにしましょう。夫や子供のものを許可なく勝手に捨てないことが大切です。
家族とはいえ、ものの価値観はそれぞれ異なりますし、自分から見れば不要なものであっても相手にとっては大切なものかもしれません。
ものを捨てる場合は夫や子供に許可を得てから捨てるようにしてください。
捨てる前に本当に不要かどうかもう一度考えよう
断捨離は不要なものを捨てる行為ですが、捨ててしまう前に本当に不要か考えるようにしましょう。
勢いで捨ててしまうとあとで後悔することもあります。後悔しないためにもしっかりと自問自答することが大切です。
また、考える際は自分だけではなく、家族も困らないか考えてみてください。
断捨離依存症を疑ったらカウンセリングを
「もしかすると断捨離依存症かもしれない」と思ったら、カウンセリングを受け、依存症を治療することから始めましょう。
「断捨離しなければいけない」という強迫概念がある場合、断捨離依存症である可能性も否定できません。
自分では気付いていなくても、夫から子供の生活が断捨離によって不便になっているという場合やものを捨てることが目的になっている場合も依存症の可能性があります。
断捨離依存症は自分一人では解決が難しいものですが、カウンセラーなど専門家のサポートがあれば改善しやすくなります。
断捨離を理由に離婚したいと思ったら弁護士へ
断捨離を理由に離婚したいと思った場合は、相手に離婚の意思を伝える前に弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、話し合いで離婚する際のポイントや離婚をスムーズに行うためのアドバイスなどをもらえます。
また、弁護士に交渉を依頼すると、当人同士で話し合うより冷静かつ有利に離婚を進めやすくなりますし、話し合いで離婚が上手くいかない場合も、スムーズに裁判離婚へ手続きを行えます。
まとめ
断捨離は決して悪いことではありませんが、何でも捨てて良いというものではありません。
断捨離によって夫婦仲にひびが入り、修復が難しくなった場合は離婚問題に発展することもあるでしょう。
断捨離から離婚に発展しそうな場合は弁護士に相談することが大切です。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
関連記事≫≫
夫(妻)の暴力から逃れたい! DVの証拠集めとうまく逃げる方法とは。
家庭内別居だけで離婚できる?家庭内別居を切り出す前に知るべきこと
夫婦(婚姻)関係の破綻とは|法的な定義と離婚を成立させるポイント
離婚裁判は弁護士なしで大丈夫?費用やメリット・デメリットを解説
財産分与とは|離婚にともなう財産分与の手続と注意点
※「断捨離」は、やましたひでこ氏の登録商標です。本文中で「™」「®」は明記しておりません。
都道府県から弁護士を検索する
離婚コラム検索
離婚のその他離婚理由のよく読まれているコラム
-
1位その他離婚理由弁護士監修2019.07.25姑が嫌いすぎて我慢できない!嫁姑問題を理由に離婚できるのか夫はうまくやっているけれど、姑との折り合いが悪い… 嫁姑問題は昔も...
-
2位その他離婚理由弁護士監修2020.09.11マタニティーブルーとは|妊娠中に離婚を考えてしまう理由と克服方法「マタニティーブルー」という言葉をご存じでしょうか。妊娠中や出産直後は子供が生ま...
-
3位その他離婚理由弁護士監修2021.05.27立会い出産は離婚率が高い?メリット・デメリットと離婚を回避するコツ立会い出産は、子供が生まれる感動や苦労を夫婦で共有することができます。しかし、立...
-
4位その他離婚理由弁護士監修2020.12.25帰宅恐怖症(帰宅拒否症)とは|改善法と離婚したいと言われたときの対処法「夫がまっすぐ家に帰ってこない」とお悩みの方もいるでしょう。特別仕事が忙しいわけ...
-
5位その他離婚理由弁護士監修2021.08.16旦那が逮捕されたので離婚したい|離婚手順と解決に向けてすべきこと何らかの理由で旦那が逮捕されたら、どうしたら良いのかわからず、パニックになってし...
新着離婚コラム
-
裁判・調停2024.10.28家事手続案内とは?家庭裁判所で相談できること、できない時の相談先家庭裁判所は家事事件と少年事件を扱う裁判所です。家事事件について悩みがあるものの...
-
財産分与2024.10.18株式の財産分与|評価方法や基準時、注意点を解説離婚の際、婚姻中に夫婦が築き上げた財産を公平にわけることになります。これを財産分...
-
その他離婚理由弁護士監修2024.09.27障害児の子育てを理由に離婚できる?離婚する前に考えるべきこと一般家庭と比べて障害児のいる家庭の離婚率は高いと言われています。これについて正確...
-
親権・養育費2024.09.25養育費に連帯保証人をつけることはできる?注意点と未払いを防ぐ方法近年、養育費の未払いが社会問題化しています。政府統計ポータルサイトe-Statの...
-
基礎知識弁護士監修2024.08.23祖父母は面会交流できる?孫との関係を守るポイントと改正民法を解説離婚によって子供と離れて暮らす側の親には子供と面会する権利があります。面会交流は...
離婚問題で悩んでいる方は、まず弁護士に相談!
離婚問題の慰謝料は弁護士に相談して適正な金額で解決!
離婚の慰謝料の話し合いには、様々な準備や証拠の収集が必要です。1人で悩まず、弁護士に相談して適正な慰謝料で解決しましょう。
離婚問題に関する悩み・疑問を弁護士が無料で回答!
離婚問題を抱えているが「弁護士に相談するべきかわからない」「弁護士に相談する前に確認したいことがある」そんな方へ、悩みは1人で溜め込まず気軽に専門家に質問してみましょう。