弁護士保険(弁護士費用保険)|離婚前に加入するメリットと補償内容を解説

弁護士保険という言葉を聞いたことがありますか? 弁護士保険は正式名を「弁護士費用保険」といいます。
長い人生のなかで、いつどのようなトラブルに遭遇するかわかりません。法的トラブルに遭遇したとき、頼りになるのが弁護士です。
弁護士保険とは、「いじめ保険」「弁護士費用特約」などと同様に、何らかの法的トラブルに遭遇した際に弁護士費用を補償してくれるものです。
この記事では、弁護士保険とはどのような保険なのか、どのような場合に補償してくれるのかについて解説します。
- 目次
弁護士保険とは
弁護士保険とは、何らかの法的トラブルに遭遇した際の弁護士への法律相談料や着手金などの弁護士費用を補償するものです。
普通に生活していたとしても、離婚や相続問題など法的なトラブルに巻き込まれる可能性はあります。このとき、法律のプロである弁護士に相談、依頼するのが解決への近道です。
しかし、弁護士に依頼する場合、弁護士費用が準備できなければ依頼できません。弁護士保険は、上記のような場合に備えて、少ない掛け金で弁護士費用を補償してくれる保険なのです。
弁護士保険の主な補償内容
弁護士保険で補償されるものは、「偶発事故」「一般事故」に大別されます。それぞれ、どういうものかを以下で詳しく見ていきます。
偶発事故
偶発事故とは、文字どおり「偶発的に起きた事故」のことです。例えば、以下のようなものが該当します。
- 火災
- 爆発事故
- 自動車事故(被害者・加害者とも)
- スポーツによる接触事故
- 自転車事故
- 物損
- 集合住宅上階からの水漏れ
- その突発的な事故 など
一般事件
一般事件とは、偶発事故以外の法的トラブルを指します。例えば以下のようなものが該当します。
- 相続
- 離婚
- 雇用
- 労働問題
- セクハラ・パワハラ
- いじめ
- ネット炎上
- 金融商品問題
- 医療過誤
- 近隣問題
- 欠陥住宅
- そのほか偶発事故以外のお悩み
弁護士保険に加入するメリット
弁護士保険に加入するメリットには以下のようなものがあります。
一日100円程度で弁護士費用を負担してもらえる
弁護士保険の掛け金は月々1,180~5,100円になります。一日あたりに換算すると39~168円ですから、一日100円程度、ペットボトル一本分程度の掛け金で弁護士費用を補償してもらえることになります。
上記の金額が高いか安いかは個々の価値観によるところが大きいですが、例えば弁護士に離婚問題を依頼すれば着手金+成功報酬だけで数十万します。
一日100円程度なら「高すぎる」ということはないでしょう。
弁護士に無料で電話相談できる
弁護士保険には「弁護士直通ダイヤル」があり、無料で弁護士に初期相談ができます。弁護士に依頼すべきか迷ったとき、一般的な対処法や制度について知りたい場合などに有効です。
トラブルの抑止力がある
弁護士保険の先駆け的な存在といえば「弁護士保険mikata」でしょう。
弁護士保険mikataの契約者にはリーガルカードとリーガルステッカーが送付されます。
これらは「弁護士保険に加入している」ということを証明するものですので、トラブルの抑止効果が期待できるかもしれません。
弁護士保険と弁護士費用特約の違い
弁護士保険とよく比較されるものに、自動車保険の弁護士費用特約があります。
弁護士費用特約とは、任意で加入する自動車保険に特約として付帯するもので、主に自動車事故を対象としています。さらに、弁護士費用特約は自動車事故の被害者を主な対象としています。
加害者(過失割合の多い側)になった場合は弁護士費用特約を利用できないため、ここで紹介する弁護士保険が有効です。
主な弁護士保険の商品比較
弁護士保険には以下のような商品があります。
弁護士保険Mikata
弁護士保険mikataは、2013年にプリベント少額短期保険株式会社が発売した弁護士保険です。弁護士保険として日本で初めて発売されたのも弁護士保険mikataです。
プランは1種類のみで、月額2,980円になります。
参考:プリベント少額短期保険株式会社「弁護士保険mikata/ミカタ(https://bengoshihoken-mikata.jp/ad/2021090900/)」※1
弁護士保険コモン
弁護士保険コモンは2017年にエール少額短期保険株式会社が発売を開始した弁護士保険です。
弁護士保険コモンは目的や補償内容別にステイタス・レギュラー・ライトの3つのプランが用意されています。費用や補償内容については後述します。
参考:エール少額短期保険「弁護士保険コモン(https://yell-lpi.co.jp/komon-m/)」※2
その他の弁護士保険
弁護士保険といえば、前述の二つの保険が代表的なものになりますが、ほかにも弁護士費用保険と呼ばれるものがあります。
日弁連の弁護士費用保険
日弁連と協定を結んでいる保険会社や共済協同組合では、保険の特約として弁護士費用を補償してくれるものや単独保険として販売されているものがあります。
すでに加入中の保険が対象となっている場合は、新たに弁護士保険を契約するより、現在加入中の保険会社に問い合わせてみることをおすすめします。
参考:日本弁護士連合会「弁護士費用保険(https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/legal_aid/data/right_protection180601.pdf)」 ※3
痴漢冤罪など事件分野特化型弁護士費用保険
最近ではトラブルの内容を限定した弁護士費用保険もあります。代表的なものに痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険があります。
昨今、電車内などで痴漢冤罪に巻き込まれる事件も発生しています。このような場合は警察や駅員室に連れていかれる前に弁護士に連絡することが良いとされています。
以下の保険は月額590円と低額ですので、気になる方は検討されても良いでしょう。
参考:男を守る弁護士保険女を守る弁護士保険「痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険(https://www.japan-insurance.co.jp/lawyer/)」※4
離婚問題で弁護士保険を活用した例
ここで、離婚問題で弁護士保険mikataを活用した例を紹介します。
2年前に弁護士保険に加入したA子は、夫の不倫が発覚したことをきっかけに離婚を考えるようになりました。夫側に請求を考えているのは慰謝料と親権です。
弁護士保険を利用しない場合の一般的な弁護士費用は以下となります。
- 法律相談料:5,000円/30分
- 着手金:20万円
- 成功報酬:62万円(慰謝料200万円の場合)
- 計82万5,000円
弁護士保険mikataを利用した場合の弁護士費用は以下となります。
- 法律相談料と着手金の合計:10万8,500円
- 成功報酬:62万円(慰謝料200万円の場合)
- 計72万8,500円
A子さんは弁護士保険の弁護士直通ダイヤルや弁護士紹介サービスなどを利用し、費用を抑えて弁護士に依頼することができました。結果的に、親権を獲得し、適切な慰謝料を受け取ることで離婚が成立しました。
上記の例では、弁護士保険を利用することで、法律相談料と着手金で96,500円分の費用を抑えられたことになります。
A子さんは約2年間保険料(71,520円)を支払っていたため、結果的に得をしたことになります。
上記は協議離婚がスムーズに成立した場合を想定しています。調停や裁判に進むと弁護士費用はかさみますし、保険料をどれだけ支払ったかによって、得するかどうかの判断は変わります。
また、結婚後に起こりうるトラブルは離婚だけではありません。家族が増えるわけですから、それだけリスクも増えます。子供や住環境、資産状況、車の有無などを総合的に考えて検討すると良いでしょう。
なお、後述しますが、弁護士保険はすでに起こっている事象については補償できません。
すでに離婚問題で悩んでいるという場合は相談料・着手金無料の法律事務所を選ぶことで初期費用を抑えることができます。
以下の法律事務所は完全成功報酬制にも応じているため、初期費用を抑えて依頼できます。
弁護士保険の注意点
弁護士保険にはいくつか注意点があります。以下で詳しく解説します。
弁護士保険加入時点で発生している事件については補償されない
前述のとおり、弁護士保険は加入時点ですでに発生している事件については補償されません。
また、性格の不一致や親族間のトラブルなどが原因の離婚についても、いつ事象が発生したか不明瞭なため、弁護士保険の対象からはずれることになります。
DVやモラハラ、不倫といったものは事象が発生した日を特定しやすい案件ですので弁護士保険の補償対象となります。
ただし、後述する待機期間や不担保期間中に起こった案件については補償の対象からはずれることになります。
弁護士保険には不担保期間がある
弁護士保険は待機期間や特定のトラブルに対する不担保期間があります。
偶発的な事故を除いた一般事件については、契約から3か月の待機期間があります。つまり、契約から3か月以内に発生した一般事件は補償の対象からはずれます。
そのほか、トラブルの内容によっては1~3年の不担保期間があり、この期間中に発生したトラブルについても補償の対象からはずれることになります。
先ほど紹介した二つの弁護士保険についてまとめたものが以下となります。何を重視するかは人によって違いますので、ご自分にあったものを選ぶと良いでしょう。
弁護士保険mikataの場合、一般事件より偶発事故のほうが手厚く補償されます。弁護士保険コモンの場合、偶発事故と一般事件の保険金は同じになります。
まとめ
弁護士保険について解説しました。弁護士保険はすでに起こっている事案に対して補償することはできません。現在何かトラブルがあるわけではないが、将来起こるかもしれないトラブルに対して加入しておくものです。
いつ、どのようなトラブルがあるかわかりませんので、リスクに備えて加入しておくのも良いでしょう。
ただし、すでに夫婦関係にトラブルが生じている場合は弁護士保険を利用することはできません。このような場合は相談料や着手金無料の法律事務所を利用したり、法テラスを利用するといった方法もあります。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」にも相談料無料・着手金無料の弁護士を多数掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 プリベント少額短期保険株式会社「弁護士保険mikata/ミカタ」
※2 エール少額短期保険「弁護士保険コモン」
※3 日本弁護士連合会「弁護士費用保険」
※4 男を守る弁護士保険女を守る弁護士保険「痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険」
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