経済的DVを受けたときの対処法と生活費を入れない夫と離婚する方法

DV・モラハラ
弁護士監修
経済的DVを受けたときの対処法と生活費を入れない夫と離婚する方法

「夫が生活費を入れてくれない」「自由にお金を使わせてもらえない」

このようなお悩みをお持ちの方もいます。

各家庭の状況にもよりますが、ひょっとすると経済的DVを受けている可能性もあります。

この記事では経済的DVとはどういうものか、経済的DVを理由に離婚できるのかについて解説します。

目次
  1. 経済的DVとは
  2. 経済的DVの具体例
    1. 経済的DVに該当しない可能性があるケース
  3. 経済的DVを理由に離婚できるのか
  4. 経済的DVの証拠になりうるものとは
  5. 経済的DVの対処法
    1. 当事者同士で話し合う
    2. 第三者や公的機関に相談する
    3. 婚姻費用分担調停を申し立てる
  6. 経済的DVの相談先
    1. 女性センター
    2. 夫婦カウンセラー
    3. 弁護士
  7. 経済的DVを理由に離婚する方法
    1. 経済的DVの証拠を集める
    2. 夫婦で話し合う
    3. 話し合いがまとまらなければ調停・裁判へ
  8. 経済的DVを理由に離婚するなら弁護士へ
  9. まとめ

経済的DVとは

そもそもDVとは、一般的に配偶者など親密な関係にある男女間の暴力のことを言います。

DVという言葉を聞くと、身体に対する暴力をイメージする人が多いと思いますが、身体以外への暴力も存在します。その一つが経済的DVです。

経済的DVとは、配偶者の経済的な自由を奪い、配偶者を追い詰めることです

身体的な暴力によるDVであれば被害を認識しやすいでしょう。

しかし、経済的DVの場合、経済状況が家庭ごとに異なるため「経済的DVを受けている」という認識を被害者が抱きづらい側面があります。

そのため、実際には経済的DVを受けているにも関わらず、本人にその認識がないため離婚を考えることができない人が多いのです。

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経済的DVの具体例

経済的DVの具体例として、以下のようなケースがあります。

もっとも、経済的状況は家庭ごとに異なります。

そのため、以下のケースに該当するからといって必ずしも経済的DVにあたるわけではありません

  • 生活費を渡さない、または必要最小限しか渡さない
  • 給与の金額や預貯金額を開示しない
  • お金の使い方を逐一チェックする
  • 配偶者に自由に使えるお金を渡さない
  • 配偶者が働いて収入を得ることを認めない
  • 仕事をせずに配偶者の収入に依存する
  • 勝手に預貯金を使う

経済的DVに該当しない可能性があるケース

上記の例に該当した場合であっても経済的DVに当てはまらないケースもあります。

たとえば、共働きでお互いにそれなりの収入がある夫婦がいたとします。

この場合、夫から生活費を渡されなかったとしても、妻が自身の収入で十分にやりくりできているのであれば、妻の経済的自由が奪われているとは言えません。

そのため、経済的DVとは認められない可能性が高くなります。

この場合、夫が生活費を負担しないことが不満であれば、婚姻費用分担調停を申し立てると良いでしょう。

また、妻が外で働いて収入を得ることを認めてくれないというケースでも、夫から十分な生活費をもらっており、妻が自由に使えるお金が十分に確保されている状況であれば、妻の経済的自由が奪われているとは言えず、経済的DVには該当しない可能性が高くなります。

このように、経済的DVにあたるかどうかは、配偶者の経済的自由が奪われているかどうかという視点で個別かつ具体的に判断していく必要があります

経済的DVを理由に離婚できるのか

経済的DVを理由に離婚する方法

離婚する場合、まずは離婚に向けて夫婦で話し合いをします。

話し合いによって成立する離婚のことを協議離婚と言い、協議離婚であれば、どのような理由であっても離婚することが可能です。

そのため、経済的DVを受けており、これ以上一緒に生活することができないと相手に伝え、相手が離婚に合意すれば離婚することができます

しかし、相手が離婚に合意しなかったり、離婚条件がまとまらなかったりしたときは話し合いで離婚することは困難です。

このような場合は、離婚調停を申し立て、調停の場で話し合いを進めます。

そして、調停でも話し合いがまとまらないときには、最終的に離婚裁判を起こすことになります。

裁判で離婚を認めてもらうためには、民法で定める離婚事由に該当する必要があります。

例えば、配偶者に生活費を一切渡さないという経済的DVがあったときには、民法770条1項2号の「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。

夫婦には共同生活を送るにあたり、互いに経済的に援助をする義務があります。これを扶助義務と言います。

生活費を一切渡さないという行為は、夫婦の基本的義務である扶助義務に違反する行為ですので、悪意の遺棄に該当する可能性があるのです。

もし、悪意の遺棄だと認められなかったとしても、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性もあります。

例えば、配偶者から生活費を渡してもらえないことが、夫婦の収入や経済状況からみて悪意の遺棄とは言えない場合であっても、それによって生活が苦しくなったという事情があれば、別居期間などその他の事情も踏まえて婚姻を継続し難い重大な事由にあたるとみなされる可能性があるのです。

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経済的DVの証拠になりうるものとは

経済的DVの証拠になりうるものとは

相手が経済的DVをしたことを認めれば良いのですが、経済的DVをした本人というのはそのような事実を否定するケースが多いです。

そのため、経済的DVを理由に離婚するためには、経済的DVがあったことを証拠によって立証する必要があります

経済的DVを立証する証拠は事案によって異なるため一概にはいえませんが、代表的なものとして以下があります。

  • 生活費の振り込みがないことがわかる通帳
  • 配偶者に生活費を渡すだけの十分な収入があることがわかる給与明細や源泉徴収票
  • わずかな生活費でやりくりしていることがわかる家計簿
  • 配偶者が生活費を渡さないと発言していることがわかる録音やメール、LINE
  • 配偶者の浪費内容がわかるクレジットカードの利用明細
  • 配偶者が借金をしていることがわかる契約書や督促状 など

経済的DVの対処法

経済的DVを受けたときの対処法としては以下のようなものがあります。

当事者同士で話し合う

経済的DVに対処するためにも、まずは当事者同士で話し合いを行いましょう。

経済的DVをしている当事者は、自分が経済的DVをしているという自覚がないことが多いです。

こちら側が「十分な生活費をもらっていない」と思っていても、相手方としては「きちんと生活費を渡している」という認識でいることもあります。

そのため、毎月どれくらいのお金が必要なのか、受け取っている生活費ではどれくらい不足しているのかなどについて、家計簿や領収書などを相手方に示しながら説明すれば理解してもらえる可能性があります

第三者や公的機関に相談する

当事者同士で話し合っても解決しないときや、そもそも相手と話すのが怖いという場合は第三者や公的機関に相談すると良いでしょう。

経済的DVは、被害者自身も経済的DVを受けていることを自覚していないケースが多いです。

そのため、第三者や公的機関へ相談することで、初めて自分が「経済的DVを受けている」と自覚することもあります

経済的DVの主な相談先は「経済的DVの相談先」にて後述します。

婚姻費用分担調停を申し立てる

十分な生活費がもらえないという場合、話し合っても解決しない状況が続くのであれば、家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てると良いでしょう。

法律上、夫婦は互いの収入に応じて相手の生活を扶助する義務があります。

そのため、相手方に十分な収入があるにもかかわらず十分な生活費をもらえていない場合、婚姻費用分担請求調停を申し立て、相手方に婚姻費用(婚姻中の生活費)を請求できます

婚姻費用分担請求調停では、夫婦それぞれの収入や子供の人数に応じて婚姻費用が決まります。

婚姻費用の金額の目安については、裁判所がホームページ上で公開している婚姻費用の算定表を確認しましょう。

関連記事≫≫
婚姻費用分担請求|調停の流れと別居中の生活費を請求する方法

参考:裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

経済的DVの相談先

経済的DVに関する相談先には以下のようなところがあります。

女性センター

女性センターとは、各自治体が自主的に設置している女性のための総合施設です。

女性センターでは、女性が抱える問題について相談に応じたり、情報提供を行ったりしています

相談料は基本的に無料ですが、予約制となっていることが多いので、相談を希望する際は事前に最寄りの女性センターに確認するようにしましょう。

夫婦カウンセラー

夫婦カウンセラーとは、離婚問題をはじめとする夫婦のさまざまな問題について相談にのり、最善の解決方法を提案するスペシャリストです。

離婚だけでなく夫婦の関係改善に向けたアドバイスをしてもらえるため、離婚するかどうか迷っている方やどのように関係を改善すれば良いかお悩みの方は夫婦カウンセラーによるカウンセリングを受けてみるのも良いでしょう

弁護士

経済的DVを理由に離婚を考えている場合は弁護士に相談すると良いでしょう。

身体的なDVであればケガの写真や診断書などで立証することができますが、経済的DVの場合、立証することが難しく、経済的DVであることを客観的に判断しにくい傾向があります。

また、どのような証拠があれば経済的DVを立証できるかについては事案ごとに異なるため、証拠収集の際には専門知識と経験が不可欠です

そのため、経済的DVを理由に離婚を検討している際は、弁護士に相談し、アドバイスを受けながら進めると良いでしょう。

経済的DVを理由に離婚する方法

経済的DVを理由に離婚をする方法は以下となります。

経済的DVの証拠を集める

経済的DVを理由に離婚をするためには経済的DVを受けたことを立証する証拠を収集しなければなりません

十分な証拠をそろえて争うことで、裁判で離婚を認めてもらうだけでなく、慰謝料請求も可能になる場合があります。

経済的DVの被害に遭っていることに気付いたときは早めに証拠を集めると良いでしょう。

夫婦で話し合う

経済的DVの証拠がそろった段階で、相手方に離婚したい旨を告げるようにしましょう。

証拠がない段階で離婚を告げた場合、相手方に経済的DVを否定されてしまうと話がなかなか進まないこともあります

話し合いの結果、離婚に合意ができたときは、離婚協議書を作成し、合意できた内容を書面に残しておきましょう。

合意内容に金銭の請求が含まれる場合はトラブルを防ぐためにも公正証書にしておくことをおすすめします。

話し合いがまとまらなければ調停・裁判へ

夫婦の話し合いで離婚がまとまらないときは、離婚調停を申し立てることになります。

離婚調停は家庭裁判所の手続きで、男女二人の調停委員が当事者の間に入り、離婚に関する争いを解決する手段です。

もっとも、調停も話し合いによる手続きです。そのため、一方が離婚に合意しない場合、調停では解決できず調停は不成立となります。

調停不成立となった場合、最終的に裁判を起こし、裁判官に判断してもらうことになります。

調停も裁判も裁判所の手続きではありますが、調停と異なり、裁判になれば必ず結論がでます。

有利な結論を望むのであれば、こちら側に有利な証拠を提出し、適切に主張を展開していく必要があります。

裁判に進んだ場合、自分だけで対応するのは困難です。裁判に進んだら弁護士に依頼することをおすすめします

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離婚裁判・調停は弁護士に!裁判・調停の解決実績・解決事例が豊富な弁護士とは

経済的DVを理由に離婚するなら弁護士へ

経済的DVを理由に離婚をする際は弁護士に依頼しながら進めることをおすすめします。

経済的DVもDVの一種です。そのため、経済的DVの被害者は、相手から追い込まれ、精神的に支配されていることがあります。

このような精神状態で相手と直接話し合うということは難しく、状況が悪化したり、不利な条件で離婚に応じてしまったりするリスクもあります

弁護士に依頼し、代理人として相手方と交渉してもらうことで、精神的負担を減らすことができますし、不利な条件で離婚するリスクも回避することができます。

離婚は親権や養育費、慰謝料、財産分与、面会交流、年金分割など決めなければならない離婚条件がたくさんあります。

これらの条件についても、弁護士による法的なサポートを受けながら進めることで、最善の条件で離婚しやすくなります。

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明確な離婚理由がない場合の離婚の解決実績・解決事例が豊富な弁護士とは

まとめ

経済的DVは立証が難しく、相手方との話し合いが困難という側面があるため、適切な証拠をそろえなければ、離婚が認められない可能性もあります。

精神的な負担を減らし、有利な条件で離婚するためにも早い段階で弁護士に相談すると良いでしょう。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

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