面会交流調停の流れ|離婚後に子供と離れて暮らす親が知るべきこと

裁判・調停
弁護士監修
面会交流調停の流れ|離婚後に子供と離れて暮らす親が知るべきこと

子供を持つ夫婦が離婚する場合、親権者を決めなければなりません。

親権を獲得できなかった側(非監護親)は離婚後、子供と離れて暮らすことになります。

もちろん、離婚しても親子関係は変わらないため、非監護親であっても子供と会う(面会交流)権利が存在します。

この記事では面会交流の決め方や面会交流調停に進んだ場合の流れについて解説します。

目次
  1. 面会交流権とは
    1. 面会交流の決め方
  2. 面会交流調停を行うケースとは
    1. 親権者が非親権者との面会交流を拒絶している
    2. 面会交流を実施しているが条件(回数、時間など)に不満がある
  3. 面会交流調停の申立てに必要な書類
    1. 面会交流調停申立書の書き方
  4. 面会交流調停の流れ
    1. 面会交流調停を申立てる
    2. 1回目の調停
    3. 2回目以降の調停
    4. 面会交流調停が不成立の場合
  5. 面会交流調停を欠席した場合
  6. 面会交流調停の費用
  7. 面会交流が認められない場合とは
    1. 非監護親に薬物使用の疑いや連れ去りの恐れがあるケース
    2. 監護親や子供に暴力を振るったことがあるケース
    3. 一定以上の年齢の子供が面会を拒否しているケース
    4. その他子供にとってマイナスの影響があるケース
  8. 親権者が調停や審判で決まったことを守らない場合の対処法
    1. 履行勧告
    2. 再度面会交流調停を行う
    3. 強制執行(間接強制)
  9. 面会交流調停を有利に進めるためには
    1. 面会交流調停依頼したときの弁護士費用
  10. まとめ

面会交流権とは

面会交流権とは、離婚後または別居中に子供を監護していない親がその子供と面会をしたり、その他の方法(手紙のやり取りや写真の送付、プレゼントの送付、学校行事への参加など)で交流をする権利のことを言います。

以前は、面会交流権について明文上の根拠はありませんでした。

しかし、平成24年4月1日に民法が改正され、民法766条に明文上の根拠規定が置かれました。

面会交流の重要性が世のなかにも認知されてきた結果、法律上の根拠規定が置かれるようになりました。

面会交流の決め方

面会交流をいつ、どこで、どのくらいの頻度で行うかということについては、まず子供の両親が話し合って決めることになります。

円満に離婚した夫婦であれば、その後も子供のことで連絡を取り合うこともあるため、面会交流の内容を細かく決める必要性は少ないかもしれません。

しかし、離婚するほどの関係性ですので、揉めながら離婚するケースが多く、面会交流の内容を明確に決めておかないと後々子供に会わせてもらえないこともあります。

そのため、離婚後の面会交流を確実なものにしようと考えている場合は、離婚時に面会交流の内容を明確に取り決めておき、必ず書面に残しておくようにしましょう。

もし、話し合いによって面会交流の内容が決まらないようであれば、後述する面会交流調停を申し立てることも検討しなければなりません。

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面会交流調停を行うケースとは

面会交流は、まず当事者の話し合いによって決めていきます。

当事者の話し合いで解決できるときは、面会交流調停を申し立てる必要はありません。

面会交流調停を申し立てるのは、当事者の話し合いによって面会交流の内容が決まらないケースです。

面会交流調停を行う代表的なケースとしては以下のようなものがあります。

親権者が非親権者との面会交流を拒絶している

離婚理由によって、親権者が非親権者に対し感情的になり、個人的な感情で子供とは無関係に非親権者との面会交流を拒絶することがあります。

このようなケースでは、「子供が会いたくないと言っている」などの理由をつけて面会交流を拒絶することもあります。

しかし、直接子供と会って話ができない非親権者は子供の真意を確かめることができません。

そのため、面会交流調停を行い、子供の真意を確認する必要があるのです。

面会交流を実施しているが条件(回数、時間など)に不満がある

面会交流自体は実施していたとしても、面会交流の回数や1回の面会交流の時間が少ないと感じ、不満を持っている人もいます。

当事者同士で話し合いができれば良いのですが、話し合いによって解決できない場合は、子供の福祉の観点から、現状の面会交流の方法が妥当かどうかを裁判所に判断してもらうために面会交流調停を申し立てる必要があります。

面会交流調停の申立てに必要な書類

面会交流調停の申立てに必要な書類

面会交流調停の申立てに必要な書類は、以下のとおりです。

  • 面会交流調停申立書
  • 事情説明書
  • 進行に関する照会回答書
  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)

なお、事情説明書と進行に関する照会回答書は家庭裁判所窓口で受け取ることができます。

面会交流調停申立書の書き方

面会交流調停申立書は、家庭裁判所の窓口または裁判所のホームページからひな形を入手できます。

参考:裁判所「面会交流調停の申立書(https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_30/index.html)」 ※1 

面会交流調停申立書の書き方は以下のとおりです。裁判所のホームページに記入例が掲載されていますので、そちらも参考にすると良いでしょう。

申立先家庭裁判所と申立日の欄

申立書を提出する裁判所名と作成年月日を記入します。

申立人の記名押印の欄

申立人の名前を記入し、押印してください。印鑑は認印でも大丈夫です。

申立人の氏名・住所の欄

申立人の氏名・住所を記入してください。裁判所から書面が届くことがあるため、正確に記入してください。     

相手方の氏名・住所の欄

相手方の氏名・住所を記入してください。裁判所から申立書などが届きますので、正確に記入してください。     

未成年者の欄

面会交流を求めたい子供の氏名・生年月日を記入し、申立人と相手方のどちらと同居しているかにチェックをしてください。  

申立ての趣旨の欄

申立人と相手方のどちらが面会交流を求めるのか、調停または審判のどちらを求めるのかについてチェックをしてください。  

申立ての理由の欄

申立人と相手方の関係

離婚や認知をしている場合はその年月日、婚姻中であれば、監護者の指定の有無についてチェックしてください。     

未成年者の親権者

離婚によって親権者が定められている場合は、申立人と相手方のいずれが親権者であるかをチェックしてください。     

未成年者の監護養育状況

申立人と相手方のどちらが、いつからいつまで子供を監護していたかの状況を記入してください。     

面会交流の取決めについて

当事者間で面会交流の取決めがあるかどうか、ある場合には、その方法は何か(口頭、公正証書、調停など)を記入してください。     

面会交流の取決めについて

現在前の面会交流の実施状況について当てはまるものにチェックをしてください。    

本申立てを必要とする理由

面会交流調停を申し立てた動機について当てはまるものにチェックをしてください。

参考:裁判所「面会交流調停の申立書(https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_30/index.html)」 ※1 

面会交流調停の流れ

面会交流調停の流れ

面会交流調停の具体的な流れは以下のとおりです。

面会交流調停を申立てる

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に面会交流申立書など申立書類一式と収入印紙、郵便切手を提出し、面会交流調停の申立てを行います。

調停申立書に不備がなく、家庭裁判所で受理された場合には、家庭裁判所は、面会交流調停申立書の写しと調停期日の呼出状などを相手方の住所地に送ります。

1回目の調停

申立人と相手方は、裁判所から指定された期日に裁判所に行き、第1回調停期日を行うことになります。

なお、基本的に、面会交流調停は親権者と非親権者が当事者となり話し合いをしますので、子供が当事者として裁判所に出頭する必要はありません。

家庭裁判所では、申立人側と相手方側で別々の待合室を準備しています。

また、調停の進行も、男女二人の調停委員が申立人と相手方の話を別々に聞くため、家庭裁判所で当事者が直接顔を合わせる心配はありません。

調停委員が申立人と相手方から交互に話を聞き、面会交流の実施の可否や方法について妥協点を探ることになります。

なお、面会交流調停では、調停委員のほかに、家庭裁判所調査官が期日に立ち会うことがあります。

家庭裁判所調査官は心理学などの行動科学の知見を活用し、問題解決に役立つように調査や調整を行う人のことを言います。

1回目の調停で成立することは少ないため、2回目以降の調停期日が指定され、第1回目の調停は終了となります。

2回目以降の調停

2日目以降の調停についても、第1回目の調停と同様に、調停委員が申立人と相手方の双方から交互に話を聞くという方法で進められます。

面会交流調停では、子供の意向や監護状況についても調査が必要になることがあります。

その場合には、家庭裁判所調査官が、当事者や子供と面接をして、その結果を調査報告書というものにまとめることになります。

家庭裁判所調査官が作成する調査報告書は面会交流調停や審判に大きな影響力があるため、適切に対応してください。

例えば、調査官に対して、従前の子供との関わり方や今後の面会の方法など自分に有利になる事情は漏れなく伝えておくことも重要です。

調査官に対して敵対的な態度をとってしまうと、不利な扱いを受けることがありますので注意しましょう。

何度か調停期日を重ねて、面会交流の内容について合意ができれば調停は成立となります。

調停が成立した場合には、合意した面会交流の内容が調停調書という書面に記載されます。

面会交流調停が不成立の場合

当事者の話し合いで調停がまとまらず、面会交流調停が不成立となった場合には、自動的に審判の手続きに移行します。

審判では、調停での当事者の主張や家庭裁判所調査官の調査報告書などを踏まえ、面会交流を実施すべきかどうか、実施するとしてどのような方法で行うのかについて、裁判官が決定することになります。

面会交流調停を欠席した場合

第1回目の調停期日は相手方の都合を聞かずに一方的に指定されます。

そのため、裁判所から指定された期日に仕事や予定が入っていたという場合、調停に出席できないことがあるかもしれません。

調停を欠席した場合には、「裁判所又は調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、裁判所は、五万円以下の過料に処する」とされています。

しかし、予定があって欠席する場合には、「正当な事由」のある欠席ですので過料の制裁はありません。

また、欠席したからといって調停の進行で不利益になるということもありません。

一方、そもそも調停には行きたくないと考え、欠席する人も少なからず存在します。

そのような場合には上記の過料の制裁のリスクがあることに注意が必要です。

また、調停は当事者がそろって初めて行うことができますので、一方当事者が欠席した場合には、調停をすすめることができません。

その場合には、次回以降の期日を改めて指定することになりますが、それも欠席した場合には、調停で解決することが困難とみなされ、審判に移行することになります。

審判については、一方当事者が欠席したとしても、裁判所が他方当事者の主張や証拠などを踏まえて決定することになりますので、調停とは異なり必ず結論は出ます。

審判を欠席した場合には、欠席した当事者は自分の主張を考慮してもらえないというリスクがある点に注意が必要です。

面会交流調停の費用

面会交流調停に必要な要は、以下のとおりです。

  • 収入印紙:1,200円分(子供一人につき)
  • 郵便切手:1,000円程度(具体的な金額や切手の組み合わせは申立先の家庭裁判所に確認してください)※東京家庭裁判所の例:令和2年11月現在1,022円(100円×2枚,84円×8枚,10円×14枚,1円×10枚

面会交流が認められない場合とは

面会交流が認められない場合とは

面会交流調停を申し立てれば、必ず面会交流が認められるわけではありません。

以下のケースでは、面会交流が認められない場合があります。

非監護親に薬物使用の疑いや連れ去りの恐れがあるケース

非監護親に薬物使用の疑いや連れ去りのおそれがあるケースでは、面会交流を認めることで、子供に害悪がおよぶ可能性があるため、面会交流が認められない場合があります。

監護親や子供に暴力を振るったことがあるケース

監護親や子供に暴力をふるったことがあるケースでは、面会交流を認めることで再び子供に危害を加えられる恐れがあるため、面会交流が認められない場合があります。

ただし、過去に暴力があれば常に認められないというわけではなく、非監護親が再び暴力をふるう恐れがある場合や、子供が非監護親の暴力に対してトラウマを抱えているといった場合に限定されます。

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一定以上の年齢の子供が面会を拒否しているケース

面会交流は、親の意向だけでなく子供の意向も踏まえて実施の可否が判断されることになります。

子供の年齢が概ね10歳~12歳以上であれば、子供であっても自分自身の意思を伝えることができると考えられます。

そのため、この年齢以上の子供が面会を拒否しているケースでは、面会交流が認められない場合があります。

ただし、子供が本当に拒否しているかどうかや拒否している理由については、監護親からの聞き取りだけでなく、家庭裁判所調査官が子供と直接会って聞き取り調査をすることになります。

その他子供にとってマイナスの影響があるケース

面会交流は「子供の福祉に役立つ」という観点で実施されます。

そのため、面会交流を実施することで子供にとってマイナスの影響があるケースでは、面会交流が認められない場合があります。

たとえば、当事者で取り決めた面会交流のルールを守らないケースや面会交流時に子供に監護親の悪口を言うケース、父母の感情的な対立が激しいケースでは、子供に対する影響を考慮して面会交流が制限されることもあります。

親権者が調停や審判で決まったことを守らない場合の対処法

調停や審判で面会交流をすることになったにも関わらず、親権者がその内容を守らない場合には、どのような対処をすれば良いでしょうか。

親権者が調停や審判で決まったことを守らない場合の対処法について、以下で説明します。

履行勧告

履行勧告とは、調停や審判で取り決めた内容を守らない人に対して、家庭裁判所が取り決めを守るように説得したり、勧告したりする制度のことを言います。

履行勧告には強制力がないため、裁判所の履行勧告に従わなかったとしてもペナルティはありません。

しかし、裁判所という公的機関から説得されることでプレッシャーを感じ、応じてもらえる可能性もあります。

履行勧告の申立て自体は無料でできますので、相手が約束を守らない場合には利用を検討してみるのも良いでしょう。

再度面会交流調停を行う

調停や審判で取り決めたとしても、時間の経過によって状況が代わり、取り決めた内容では不適切な場合もあります。

そのような場合は再び調停を申し立て、面会交流が実施できるよう、改めて面会交流の条件面を調整すると良いでしょう。

強制執行(間接強制)

相手が調停や審判で決まったことを守らない場合は強制執行をすることも可能です。

ただし、面会交流の場合の強制執行は子供と強制的に面会させるというものではなく、約束を守らない人に対して一定期間内に義務を履行しなければ間接強制金を課すことを命じることで、心理的圧迫を加え自発的な履行を促すものです。

このような方法を間接強制と言います。

間接強制を行うためには、面会交流の条項を間接強制が可能な程度にできる限り具体的に定めておく必要があります。

たとえば、「子供と毎月1回程度面会交流することを認める」という条項では特定されているとは言えません。

少なくとも、「面会交流の日時または頻度」、「各回の面会交流の時間の長さ」、「子の引渡の方法」を具体的に決めておく必要があります。

面会交流調停を有利に進めるためには

面会交流調停を有利に進めるためには

面会交流調停を有利に進めるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。

面会交流調停で希望どおりの面会を認めてもらうためには、その方法が子供にとって有益であることを論理的に伝えなければなりません。

そのため、口頭での説明だけでなく、書面を作成し裁判所に提出する必要があります。

弁護士に依頼することで、専門的な知識や経験に即した説得力のある書面を作成してもらえます。

また、面会交流調停では、必要に応じて試行的面会交流を実施することも重要です。

試行的面会交流とは、家庭裁判所の調査官の立ち合いのもと、子供と非監護親が面会することです。

面会交流中の子供と非監護親の状況を観察することで子供への影響や様子などを確認するために行います。

どのようなタイミングで行うかについては調停の進行を踏まえて適切に判断する必要がありますが、調停の経験が乏しい当事者は判断が難しいものです。

面会交流調停が成立する際の合意内容に関しても弁護士が各条項を精査する必要があります。

面会交流が滞った場合は間接強制を検討することになりますが、調停条項の内容次第では間接強制の実施ができない可能性があるためです。

このように、面会交流調停を弁護士に依頼すると有益なことが多くあります。

面会交流調停を検討の際は弁護士に依頼することをおすすめします。

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面会交流調停依頼したときの弁護士費用

一般的に、弁護士に依頼した場合の弁護士費用は、事件の依頼時に発生する着手金と事件終了時に成果に応じて生じる報酬金によって構成されています。     

面会交流調停を弁護士に依頼したときの弁護士費用は着手金30万円程度、報酬金30万円程度が相場です。

なお、実際の弁護士費用は依頼する法律事務所によって異なります。依頼する前に必ず確認しましょう。

まとめ

面会交流は、子供の健全な成長や発育にとって不可欠な制度です。

そのため、面会交流を認めるべきでないような特別な事情がない限りは、基本的には子供との面会は行われるべきものです。

離婚後、面会交流がうまく行えていない方は、面会交流調停を申し立てることで希望の面会交流を実現できる場合があります。

面会交流の交渉や面会交流調停でお悩みの際は弁護士に依頼すると有利に進めやすくなります。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚や面会交流に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

※1 参考:裁判所「面会交流調停の申立書」 

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