男性不妊を理由に離婚したい|離婚や慰謝料請求できるのか徹底解説
近年、妊活や不妊治療を行う夫婦が増えていますが、不妊治療は金銭的にも精神的にも負担が大きいものです。
夫婦が協力して乗り越えられれば良いのですが、不妊が原因で離婚にいたる夫婦も少なくありません。
もし不妊の原因が夫側にあり、妻が不妊を理由に離婚したいと考えた場合、離婚は成立するのでしょうか。
この記事では、男性不妊が原因の離婚や慰謝料請求について詳しく解説します。
- 目次
不妊の原因の半分は男性が関わっている
日本では生活様式の多様化や晩婚化など、さまざまな要因により不妊検査や治療を行う人が増えています。
不妊治療というと婦人科で行われていることが多いですが、不妊の原因の約半分は男性が関わっていると言われています。
WHO(世界保健機構)の調べによると不妊症のうち男性のみに原因があるケースは24%で、男女ともに原因があるケースが24%あるとされています。
つまり、半数は男性側にも不妊症の原因があるということになります。
男性不妊が原因で離婚を考えるきっかけ
不妊検査や治療を進めるなかで夫婦仲に亀裂が入ってしまうこともあります。
では、妻が男性不妊を理由に離婚を考えるきっかけにはどのようなものがあるのでしょうか。
不妊治療に対して夫婦間に温度差があると感じたとき
男性不妊が原因で離婚を考えるきっかけの一つに、「夫婦間に温度差があると感じたとき」があります。
例えば、妻側が不妊検査や治療に一生懸命なのにも関わらず、夫は「自分には原因がない」と思い込み、検査や治療に協力的ではないケースです。
また、親族などから子供がいないことを責められているときに夫は何も言わず妻ばかり責められていたという場合なども温度差を感じるきっかけに多いものです。
不妊治療の検査は男性よりも女性の方が身体への負担が大きくなります。
男性側の検査は精液検査や精巣の超音波検査、採血などが主ですが、女性側は膣内に器具や薬品を入れるなど身体への負担が大きい検査になります。
夫の不妊を知ったとき、夫が不妊治療に積極的ではなく、妻だけが辛い思いや苦しい治療に耐えていたという場合は夫婦間に溝ができてしまうこともあるようです。
不妊治療が家計を圧迫することで精神的に余裕がなくなったとき
不妊治療は一度で終わるものではなく、継続して治療を受ける必要があります。
何年も治療を続ければ何百万~1千万円ほどの費用がかかるケースもあり、家計を圧迫することもあります。
また、通院のためのスケジュール調整や治療による体調不良などで仕事を辞めなければならないこともあるでしょう。
金銭的に余裕がなくなれば精神的にも余裕がなくなります。
その結果、互いへの配慮や思いやりが消えてしまい、離婚にいたるケースもあるようです。
「この人でなければ子供ができるかも」と考えたとき
夫が不妊治療に協力的でないにも関わらず、結果的に不妊の原因が夫にあるとわかれば「この人でなければ子供を持つことができるかもしれない」という考えが浮かぶこともあるでしょう。
不妊治療に対する夫の態度や関係性に男性不妊が重なることで気持ちが離れてしまい、離婚を考えることもあるようです。
男性不妊を理由に離婚できるのか
男性不妊を理由に妻から離婚を求めた場合、離婚することはできるのでしょうか。
話し合いで合意できれば離婚できる
基本的に、夫婦が合意すればどのような理由でも離婚が成立します。
つまり、妻が男性不妊を理由に離婚を切り出した際、夫が同意すれば離婚できるということです。
男性不妊だけが理由の場合は裁判で離婚は認められない
話し合いで離婚の合意にいたらない場合、調停、裁判へと進みます。
調停はあくまで第三者を介した話し合いですので、話し合いがまとまらない場合は裁判で離婚を争うことになります。
裁判では「法定離婚事由」と呼ばれる法的に離婚が認められる原因がある場合にのみ離婚が認められます。
なお、法定離婚事由とは下記の5つです。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- 婚姻を継続し難い重大な事由
男性不妊は法定離婚事由には該当しないため、男性不妊だけを理由に裁判で離婚することはできません。
ただし、以下のような場合は離婚が認められる可能性があります。
不妊がきっかけで別居した場合
男性不妊だけが理由の場合、裁判で離婚が認められることはありません。
しかし、不妊がきっかけで婚姻関係が破綻していると判断されれば「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります。
別居生活が長いほど婚姻生活が破綻しているとみなされやすく、離婚が認められる可能性があるのです。
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不妊のストレスで不倫やDV・モラハラがある場合
男性不妊が原因でストレスを感じてしまい、夫が不倫に走ることもあればDVやモラハラを行うこともあるでしょう。
夫側に不貞行為やDV・モラハラがあったことが裁判で認められれば離婚が認められる可能性があります。
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不妊を理由にセックスレスにいたった場合
不妊を理由に性交渉を拒み続けた(セックスレス)場合、離婚が認められる可能性があります。
裁判において夫婦間の性交渉の問題は重要視されます。
不妊を理由に性交渉を拒み続けた場合、法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると考えられるため、離婚が認められる可能性があるのです。
男性不妊が原因で離婚する場合に慰謝料請求できるのか
男性不妊が原因で離婚する場合には慰謝料請求することができるのでしょうか。
男性不妊だけが理由で離婚する場合は慰謝料を請求できない
男性不妊だけが理由で離婚するのであれば慰謝料請求はできません。
男性側に不妊の理由があったとしても、不妊の責任は夫婦どちらか一方だけにあるわけではありません。
そのため、男性不妊だけが理由であれば慰謝料請求は難しいでしょう。
もちろん、慰謝料請求自体が禁じられているわけではないため、話し合いで慰謝料の支払いに合意があれば支払ってもらうことはできます。
男性不妊以外に離婚理由があれば慰謝料請求が認められる場合がある
男性不妊だけが理由で離婚する場合は慰謝料請求ができませんが、男性不妊以外に不倫やDV、モラハラなどの理由があれば慰謝料請求が認められます。
なお、慰謝料は離婚原因を作った側に対して請求します。
そのため、もし妻側が離婚したいと思っていても、不倫やモラハラ、セックスレスなどの離婚原因を作ったのが妻である場合は、反対に夫から慰謝料を請求される可能性があります。
男性不妊を理由に離婚する方法
男性不妊を理由に離婚したい場合、どのように離婚を進めれば良いのでしょうか。
当事者同士で話し合う
離婚する際は、まず夫婦間での話し合い、協議離婚の成立を目指します。
離婚するにあたり、財産分与や親権、養育費など離婚前に決めておかなければならないことが多く、きちんと決めておかないと後からトラブルになることもあります。
離婚後のトラブルを避けるためにも、離婚前にしっかりと話し合いを行い、取り決めておきましょう。
話し合いが成立しない場合は調停・裁判
話し合いで結論が出ない場合や話し合いにならない場合は調停、裁判を行うことになります。
調停は第三者が間に入り、当事者が合意できる方法を探る方法です。
調停でも話がまとまらない場合は裁判を起こし、裁判所に判断をゆだねます。
男性不妊を理由に離婚したいと思ったときに知るべきこと
不妊治療は辛いものですし、男性側に不妊の理由があったとなるとショックでしょう。
不妊を理由に離婚を考える前にまずは次のことを知っておきましょう。
不妊はどちらが悪いというものではない
男性に不妊の原因があったとしても、不妊はどちらか一方に責任があると決めつけるものではなく、夫婦で一緒に乗り越えなければいけない問題です。
夫婦とはさまざまな問題を一緒に乗り越えていくものであり、不妊もその一つなのです。
離婚はあくまで最終手段であると認識すべし
男性不妊だからといってすぐに離婚を考えるのではなく、まずはお互いがどういった問題を抱えているのか話し合い、解決策を探りましょう。
離婚はあくまでも最終手段であり、それまでにできることはたくさんあります。
誰かに相談することや不妊治療を続けることも選択肢の一つです。
また、子供を持たずに二人で人生を歩んでいくという結論にいたることもあるでしょう。
離婚は夫婦の問題を解決してくれる方法ではなく、あくまで夫婦関係を終わらせる方法であることを念頭に置いておきましょう。
男性不妊を理由に妻から離婚を切り出されたときの対処法
ここまでは男性不妊を理由に妻が離婚する方法について解説しました。
では、夫側が自身の不妊を理由に妻から離婚を切り出されたらどのように対処すべきでしょうか。
男性不妊だけが理由なら離婚に応じる必要はない
男性不妊を理由に離婚を切り出されても、自身が「離婚したくない」と考えているのであれば同意する必要はありません。
本当に離婚したくないと考えるのであれば拒否してください。
男性不妊だけが理由であれば、裁判を起こされたとしても離婚が認められる可能性は低いです。
ただし、夫婦で話し合った結果、問題が解決しないばかりか、ひどく傷つき婚姻生活を続けられないという場合には離婚を考えてみるのも一つかもしれません。
男性不妊だけが理由なら慰謝料請求も認められない
もし離婚に同意することになったとしても、男性不妊だけが理由で離婚するのであれば夫は妻からの慰謝料請求に応じる必要はありません。
ただし、不妊をストレスに感じて夫が不倫やDV・モラハラなどをしてしまった場合、妻に対して慰謝料を支払わなければならない可能性があります。
男性不妊を理由に離婚を考えたときの相談先
男性不妊を理由に離婚を考えた場合、離婚するにしても関係修復を目指すにしても当事者同士で話し合う必要があります。
夫婦だけでは冷静に話し合うことが難しい場合には、次に挙げる第三者の力を借りることも検討してみてください。
カウンセラー
カウンセラーは精神的な負担や心理面の問題に対して相談に乗り、問題解決へとサポートしてくれます。
夫婦のどちらか一方だけがカウンセリングを受けることもできますが、不妊は夫婦二人の問題ですので夫婦一緒にカウンセリングを受けることをおすすめします。
弁護士
離婚するのであれば、弁護士に相談することで法的なアドバイスがもらえます。
また、弁護士へ依頼することで離婚の話し合いをサポートしてくれるだけではなく、財産分与や親権などを決める際にも依頼者が優位になるように動いてもらえます。
協議だけでは同意が得られず、裁判に進む場合はより法的な知識が必要になります。
裁判に進む際は弁護士に依頼することをおすすめします。
まとめ
男性不妊に限らず、不妊はどちらか一方だけが責任を負うものではなく、夫婦二人で乗り越える問題です。
不妊の原因が夫にあるからといってすぐ離婚を考えるのではなく、どう解決していくべきかを夫婦で話し合い解決策を探っていくことが大切です。
夫婦で話し合っても関係が修復できないと判断した場合や不倫やセックスレスなどの問題が生じ、離婚を考えた場合は弁護士に相談すると良いでしょう。
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