偽装離婚は犯罪?ばれるとどうなるのか解説!

基礎知識
弁護士監修
偽装離婚は犯罪?ばれるとどうなるのか解説!

偽装離婚という言葉を聞いたことがありますか? 名前くらいは聞いたことがあるかもしれませんが、具体的にどういうものなのかまでは知らないという人もいるかもしれません。

偽装離婚とは、何らかの目的で離婚していることを装うことを言います。

この記事では、どのような目的で偽装離婚をするのか、偽装離婚していることがばれたらどうなるのかについて解説します。

目次
  1. 偽装離婚とは
  2. 偽装離婚をする理由
    1. 生活保護や児童扶養手当の不正受給
    2. 財産隠し
    3. 子供を保育園へ入れやすくするため
  3. 偽装離婚がばれるパターン
    1. 生活保護や児童扶養手当の不正受給の場合
    2. 財産隠しの場合
    3. 子供を保育園へ入れやすくする場合
  4. 偽装離婚がばれるとどうなるのか
    1. 刑事罰(公正証書原本不実記載等罪)に問われる
    2. 生活保護費の支給が停止し、返還を求められる
    3. 破産による免責が認められなくなる
    4. 保育園を退園させられる
  5. 偽装離婚したいと思ったら考えるべきこと
    1. 偽装離婚によるリスクを知っておく
    2. 偽装離婚以外に解決策がないか調べてみる
  6. まとめ

偽装離婚とは

偽装離婚とは、婚姻生活を続けているにも関わらず離婚届を提出し、離婚しているかのように装うことを言います

偽装離婚は戸籍上離婚していることになりますので、国や自治体から何らかの支援や助成を受けられる可能性が高くなります。結婚生活を維持しつつ、離婚の恩恵にあずかろうとするのが偽装離婚です。

偽装離婚をする理由

偽装離婚をする理由は夫婦によって違いますが、代表的なものに以下の3つがあります。

  • 生活保護や児童扶養手当の不正受給
  • 財産隠し
  • 子供を保育園へ入れやすくするため

それぞれについて以下で詳しく見ていきます。

生活保護や児童扶養手当の不正受給

一般的な夫婦であれば、「夫が働くことで家族が生活するのに十分な収入を得られている」とみなされます。

一方、離婚して妻が子供の親権を持つことになれば、妻は生活保護の申請が認められる可能性が高くなります。

さらに、自治体から児童扶養手当(ひとり親家庭向けに支給される手当)が支給される可能性も高まります。

生活保護と児童扶養手当が認められれば、場合によって毎月20万円以上のお金を受け取るケースもあります。働かなくても経済的利益が得られるため、偽装離婚を選択するケースも少なくないのです

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財産隠し

離婚の際、婚姻期間中に築いた共有財産を夫婦で公平にわけることになります。これを財産分与と言います。

一方、借金をして返済に追われた場合、自己破産を選択するケースもあります。自己破産をすると破産時に所有していた財産を手放す必要があります。

自己破産によって財産を差し押さえられることを回避するため、財産分与として配偶者に財産を渡し、離婚届を提出します。

離婚届を提出したあと、自分は財産を持たない状態で自己破産をするというケースがあるのです。

離婚届を提出したといっても、あくまで偽装離婚ですから実態は普通の夫婦と変わりません。そのため、自己破産後も財産を失うことなく生活を送ることができるというわけです

子供を保育園へ入れやすくするため

昨今、保育園や保育士不足による待機児童問題が深刻化しています。認可保育園への入園はひとり親家庭のほうが優先されるため、偽装離婚をするケースもあるようです

偽装離婚がばれるパターン

偽装離婚がばれるパターン

「偽装離婚をしたってどうせばれないだろう」と思うかもしれませんが、そうでもありません。実は意外なところで偽装離婚がばれることがあるのです。

生活保護や児童扶養手当の不正受給の場合

生活保護を受給すると、福祉施設やケースワーカーなどの監督を受けることになります。

最近は生活保護の不正受給も増えているため、「生活保護Gメン」という専門の監視員による見回りも強化しています。ケースワーカーが突然自宅を訪問して財産状況などをチェックすることもあります。

また、自分は隠しているつもりでも、うっかり児童扶養手当などを受給していることを人に話してしまったり、不審に思った近隣住民が通報することでばれるケースもあります

財産隠しの場合

自己破産をする際、裁判所に対して離婚の事実を報告する必要があります。このとき、財産分与や離婚条件なども報告するため、財産隠しを見抜かれてしまうことがあります。

自己破産前後の離婚は裁判所に目をつけられやすくなるのです

自己破産手続きでは、「免責が相当かどうか」「財産隠しの疑いがある」など調査や具体的な対応が必要と判断されると、差押えとなる財産を把握するために破産管財人がつくこともあります。

破産管財人とは、破産手続きでの財産の換価、免責判断の調査、債権者への配当などを行うために裁判所から選任される専門家です。

自己破産前後に離婚をすると、財産分与についても調べられるため、偽装離婚がばれる可能性があるのです。

子供を保育園へ入れやすくする場合

子供を保育園に入れたあと、家族で歩いているところを保育園の先生や保護者などに目撃され、ひとり親家庭でないことがばれることがあります

また、両親が偽装離婚をしている事実を保育園に入る年齢の子供が理解するのは困難です。そのため、子供同士や先生との会話のなかで両親と同居していることがばれることもあります。

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偽装離婚がばれるとどうなるのか

偽装離婚がばれるとどうなるのでしょうか。以下で詳しく見ていきます。

刑事罰(公正証書原本不実記載等罪)に問われる

偽装離婚をして不正な利益を得ていることがばれると、公正証書原本不実記載等罪(刑法157条1項)に問われる可能性があります

刑法 第157条1項

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

これは公務員に対して虚偽を申し立て、公正証書の原本や電磁的記録などに不実の記載をさせた際に成立します。

さらに、生活保護や児童扶養手当の不正受給が認められれば詐欺罪に当たる可能性もあります。

生活保護費の支給が停止し、返還を求められる

生活保護を受給している場合、偽装離婚がばれると生活保護の支給が停止し、すでに受給している生活保護費の返還を求められます

また、一度不正受給が認められると、本当に生活保護を受けたいと思ったときに受給が認められにくくなってしまいます。

破産による免責が認められなくなる

自己破産をしたからといって必ずしも免責が認められるわけではありません。財産の隠匿や損壊などの免責不許可事由(破産法252条1項)がある場合は免責が認められないこともあるのです

財産隠しは免責不許可事由に該当します。そのため、偽装離婚がばれると免責を受けられなくなるのです。

詐欺破産罪が問われる可能性がある

偽装離婚によって悪質な財産隠しが認められた場合は詐欺破産罪(破産法265条)が問われることもあります。この場合、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が科されます。

保育園を退園させられる

偽装離婚が発覚すると、子供は保育園から退園させられる可能性が高くなります

退園だけではありません。何の罪もない子供が周囲から冷たい目で見られたり、いじめに遭うなど、つらい思いをする可能性もあります。

偽装離婚したいと思ったら考えるべきこと

「生活が苦しい」などやむを得ない理由で偽装離婚が頭をよぎったら、以下のことを考えてみてください。

偽装離婚によるリスクを知っておく

偽装離婚は刑事罰に問われる可能性があります。つまり、前科がつく可能性があるのです。

前科がついてしまうと、場合によっては勤務先から解雇されるリスクもありますし、その後の就職・転職で不利になる可能性もあります

また、親だけでなく子供までが冷遇されたり、「前科者の子供」として扱われてしまうおそれもあります。

偽装離婚以外に解決策がないか調べてみる

偽装離婚を考えるくらいですから、何らかのトラブルを抱えているはずです。しかし、早まってはいけません。偽装離婚以外に解決策がないか探ってみましょう。

お金に困っている場合

お金に困っているのであれば、まずは収入を増やし、節約できるところはないか検討しましょう。

やむを得ない事情で働けない場合、偽装離婚をしなくても国や自治体からの支援や手当が受けられるかもしれません

借金の返済で苦しんでいる場合は任意整理や自己破産も検討しましょう。なお、借金の返済方法については弁護士に相談し、アドバイスを受けながら行うことをおすすめします

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子供の預け先がない場合

認可保育園に子供を預けられないという場合は、まず両親や親戚の協力を仰ぎましょう。周りの協力が得られない場合は認可外保育所なども検討すると良いでしょう。

まとめ

お金や子供の問題で偽装離婚を考えたらまずは弁護士に相談しましょう。

偽装離婚はばれやすく、リスクが大きいものです。今の生活が楽になることだけを考えて行動すると、かえって状況を悪化させることになりかねません。

お金の問題や離婚、子供の問題は法に則って行動することが解決への近道です。当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚やお金の問題に精通した弁護士を多数掲載しています。お気軽にご利用ください。

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