離婚調停は弁護士なしで対応できる?自分で行う方法とメリット・デメリット
離婚の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
裁判所に申し立てを行うため、「弁護士に依頼しないといけないのではないか」「自分だけで行うことはできるのか」などの不安や疑問を抱く人もいます。
この記事では、離婚調停を弁護士なしで行うことができるのか、弁護士なしで離婚調停を行ったときのメリット・デメリットについて解説します。
- 目次
離婚調停は弁護士なしでも行うことはできる
離婚協議と異なり、離婚調停は裁判所で行う手続きです。そのため、弁護士に依頼しなければ離婚調停を行うことができないと考えている方もいるでしょう。
離婚調停は裁判所で行いますが、基本的には話し合いの手続きです。
離婚訴訟のように、当事者が証拠に基づいて主張・立証を行い、裁判官が最終的な判断を行うという厳格な手続きではありません。
離婚調停は当事者がお互いに歩み寄って円満な解決ができるように設けられたものですので、弁護士に依頼しなくても対応することは可能です。
離婚調停を弁護士なしで行う人の割合は?
「家庭裁判所における家事事件の概況及び実情並びに人事訴訟事件の概況等」によると、令和2年度の婚姻関係事件(離婚調停、婚姻費用分担請求調停、財産分与請求調停など)のうち、当事者双方が弁護士に依頼せずに離婚調停を行った事件の割合は39.2%でした。
また、申立人のみ弁護士に依頼をした事件の割合は26.5%、相手方のみ弁護士に依頼をした事件の割合は5.1%、当事者双方が弁護士に依頼をした事件の割合は29.2%でした。
この結果から、離婚などの婚姻関係事件の調停において、半数以上が当事者のいずれか一方または双方が弁護士に依頼をしていることがわかります。
参考:裁判所「家庭裁判所における家事事件の概況及び実情並びに人事訴訟事件の概況等(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/09_houkoku_5_kaji.pdf)」※1
自分で離婚調停を行う方法
弁護士に依頼せずに自分で離婚調停を行う場合、家庭裁判所への申立てから調停期日の対応などすべてを自分で行わなければなりません。
自分で離婚調停の申立てをしようと考えている方は、以下の内容を参考に申立てを進めていくと良いでしょう。
離婚調停の申立て手続き
離婚調停を申し立てるには、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定めた家庭裁判所に離婚調停の申立書と必要書類を提出し、所定の費用を納める必要があります。
なお、申立書は家庭裁判所のホームページや窓口で入手できます。申立てから2週間前後で裁判所から第1回目の調停期日の日程を決める連絡が来ます。
第1回目の調停期日は、そこから1か月前後先の期日が指定されるのが一般的です。
その後、当事者は決められた日時に裁判所に出向き、離婚調停を行うことになります。
離婚調停申立てに必要な書類・費用
離婚調停の申立に必要となる書類は以下となります。調停期日を重ねていくと追加で必要になる書類も出てきますが、その都度提出すれば間に合います。
- 申立書およびその写し
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 年金分割のための情報通知書(年金分割の申立てが含まれている場合)
なお、離婚調停の申立て時には収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手を納付する必要があります。
郵便切手の金額と組み合わせは裁判所によって異なるため、申立てを行う前に必ず裁判所に確認するようにしてください。
弁護士なしで離婚調停を行うメリットとデメリット
弁護士に依頼せず、自分だけで離婚調停を行う場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
弁護士に依頼せずに離婚調停を行うメリットの1つは弁護士費用が発生しないことでしょう。
弁護士に依頼した場合、着手金や報酬金といった弁護士費用がかかるため、金銭的に余裕のない方にとって、弁護士費用の負担なく離婚調停を進めることができるというのは大きなメリットとなります。
また、弁護士に離婚調停を依頼した場合、基本的に調停期日に弁護士が同席することになります。そのため、当事者だけでなく弁護士の都合も踏まえた日程調整が行われます。
多忙な弁護士の場合、日程調整に難航して、「かなり先の日程でなければ予定が合わない」ということもあります。
自分だけで離婚調停を行えば日程調整が容易なため、早期解決を図れる場合もあります。
しかし、複雑な争いがある事案では弁護士に依頼したほうが結果的に早く解決する場合もあるため、ケースバイケースと言えます。
デメリット
弁護士に依頼せずに離婚調停を行うデメリットとして、調停手続きや調停を進める当事者の負担が大きいことが挙げられます。
調停の申立て時には調停申立書の作成や必要書類の収集を行わなければなりません。
ほとんどの方が調停手続きに不慣れなため、書類の作成や収集だけでも相当の労力を要することになります。
また、調停は当事者同士が直接顔を合わせて話し合いをするのではなく、男女2名の調停委員を介して話し合いを進めていきます。
調停委員に話をする場合も、どのような話をすれば良いのかわからず、ダラダラと話を続けてしまい、重要な内容が伝わらないとこともあります。
単純に離婚するだけであれば良いですが、離婚する際は親権や養育費、慰謝料、財産分与などの問題も一緒に解決しなければならないことが多いです。
これらの問題は法的知識や専門知識が必要なため、弁護士に依頼しない場合、金額の相場などがわからずに不利な条件で合意してしまったり、調停成立時の調停調書の確認漏れによって思わぬ不利益を被ることもあります。
司法統計(令和2年度)によると、離婚調停の申立て総数のうち調停成立が50.3%、取下げ21.6%、調停不成立が17.0%という結果でした。
離婚調停を申し立てた方のうち4割近くが不成立や取下げで終わっています。
調停を取下げまたは不成立とするかどうかは、その後の見通しやリスクを踏まえたうえで慎重に判断する必要があります。
しかし、弁護士がいない場合、どのタイミングで調停を取下げまたは不成立にすれば良いかわからず、不利な結果になってしまったり、無駄に期日を重ねてしまったりするリスクがあります。
参考:裁判所「司法統計 16婚姻関係事件数 終局区分別審理期間及び実施期日回数別 全家庭裁判所」 https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/249/012249.pdf※2
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調停委員とは|離婚調停における調停委員との接し方
離婚調停を弁護士に依頼するメリット
弁護士に離婚調停を依頼した場合、以下のようなメリットがあります。
離婚の条件についてアドバイスしてもらえる
前述のとおり、離婚調停では離婚だけではなく親権や養育費、慰謝料、財産分与などの離婚条件についても争うことがあります。
養育費や慰謝料の金額は相場を知らなければ適切な交渉を行うことができません。
また、財産分与についても、調査嘱託などの手続きを行い、漏れなく財産を洗い出したうえで正確に評価しなければ適切な財産分与の金額を算定することはできません。
弁護士は専門知識や経験が豊富なため、弁護士に離婚調停を依頼することで有利な条件で離婚できる可能性が高まります。
離婚調停の申立て手続きを代行してもらえる
離婚調停の申立ての際、調停申立書の作成や必要書類の収集を行う必要があります。
調停申立書だけでは離婚にいたった事情が伝わらない場合、事情説明書などで補充をする必要もあります。
調停手続きに不慣れな場合、これらの作業を行うだけでも多大な労力と精神的負担が生じます。
しかし、弁護士に依頼することで、すべての手続きを代行してもらえるため、労力や負担を軽減することができます。
陳述書や答弁書を作成してもらえる
調停は基本的には話し合いの手続きですが、言葉だけではうまく伝わらない部分や重要な争点については、「陳述書」「答弁書」「主張書面」などの書面を提出することが有効な手段となります。
裁判官や調停委員に対してこちら側の主張を十分に理解してもらうためには、これらの書面を充実したものにすることが重要です。
弁護士は重要な争点に絞ったうえで要領を得た内容の書面を作成できるため、こちら側の主張が伝わりやすくなると言えます。
離婚調停に同席してもらえる
弁護士に離婚調停を依頼した場合、調停期日に弁護士が同席して話し合いを進めることができます。
「離婚調停は初めて行う」という方がほとんどです。
自分だけではうまく話ができない場合や何を話して良いかわからない場合でも弁護士が隣でサポートしてくれるため安心して調停に臨むことができます。
調停時にわからないことがあってもすぐに弁護士に相談できるのも心強いでしょう。
調停成立の可能性が高くなる
冒頭の「夫婦関係調整調停事件における代理人弁護士の関与状況」によると、調停の申立人、相手方または双方に弁護士がついた割合は平成23年35.3%、平成28年51.4%、令和2年60.8%と右肩上がりで増えています。
調停成立率については、平成23年51.1%、平成28年54.3%と平成28年までは右肩上がりで増えています。
トラブルの内容や争点によって調停の内容も変わるため、一概には言えませんが、弁護士に依頼することで調停が成立しやすくなることが期待できます。
一方、平成28年以降、調停成立率が高止まりしていますが、要因の一つとして婚姻費用分担事件が増えていることが挙げられます。
婚姻費用分担事件の件数(調停+審判)は平成23年1万7,848件、平成30年には2万4,804件、令和2年には6,229件と増加傾向にあります。
通常、婚姻費用分担事件と夫婦関係調整調停(離婚、円満)事件は並行して行うことが多いのですが、別居後の生活基盤に関わる婚姻費用分担事件の解決が優先され、離婚条件の協議が遅れたり、「離婚と婚姻費用のどちらを先に取り上げるか」という点で紛糾したりすることが考えられます。
なお、令和2年の調停成立率については、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から緊急事態宣言発出・裁判所業務が縮小され、平均期日間隔や平均審理期間が長期化したことも影響している可能性があります。
参考:裁判所「家庭裁判所における 家事事件及び人事訴訟事件の 概況及び実情等(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/09_houkoku_5_kaji.pdf)」※1
裁判所「家庭裁判所における 家事事件及び人事訴訟事件の 概況及び実情等(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file4/hokoku_08_04kaji.pdf)」※3
離婚調停を弁護士に依頼するデメリット
離婚調停を弁護士に依頼するデメリットとして、弁護士費用の負担が生じる点が挙げられます。
離婚調停を弁護士に依頼した場合、一般的に着手金として20万円から50万円、報酬金として20万円から50万円がかかります。
慰謝料や財産分与などの金銭請求が伴う場合は、さらに追加で弁護士費用が生じることがあります。
弁護士に離婚調停の依頼を考えている方は、弁護士費用に見合うだけの成果が見込めるかどうかを踏まえて検討すると良いでしょう。
弁護士なしで離婚調停を行うと不利益を被りやすいケース
離婚調停は自分だけでも進めることができます。しかし、弁護士なしで離婚調停を行うと特に不利益を被りやすいケースがあります。
相手方が弁護士をつけてきたケース
相手方が弁護士をつけてきた場合、こちらも弁護士に依頼しなければ不利な離婚条件で調停が成立するリスクがあります。
弁護士は離婚に関する知識と経験が豊富なため、相手方から法的な根拠に基づいて主張が展開された場合、それに反論する術がありません。
相手方の弁護士は相手方の利益を最大限にするべく活動するため、当然こちら側に不利な主張をしてくることになります。
このような主張に対して適切に反論を行うためには、こちら側も弁護士をつけておく必要があります。
金銭の請求を伴うケース
離婚で養育費や慰謝料、財産分与といった金銭の請求を伴う場合にも弁護士に依頼しなければ不利益を被る可能性があります。
離婚調停で養育費を算出する際、裁判所のHP上で公開されている算定表を基準として算出します。
算定表は夫婦の収入と子供の人数から簡易的に養育費の金額を計算するためのものですので、夫婦の個別の事情は反映されません。
生活実態を踏まえた適切な金額を請求するためには、専門知識のある弁護士のサポートが不可欠です。
財産分与においても、対象財産の選定や評価によって財産分与で受け取ることができる金額が大きく異なります。
有利な離婚条件を獲得するためにも、金銭請求を伴う離婚調停を行う場合は弁護士への依頼を検討したほうが良いでしょう。
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養育費請求調停の費用と流れ|有利に進めるために知るべき6つのこと
養育費の新算定表|2019年に改定された内容と増額した背景を解説!
婚姻費用分担請求|調停の流れと別居中の生活費を請求する方法
まとめ
離婚調停は弁護士に依頼せず自分だけで進めることができる手続きです。しかし、自分だけで離婚調停を行うと、不利益を被ったり、負担が大きくなったりする可能性があります。
弁護士なしで離婚調停を行うことを考えたときは、ここで紹介したメリット・デメリットを踏まえ、慎重に判断しましょう。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題や離婚調停に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 裁判所「家庭裁判所における 家事事件及び人事訴訟事件の 概況及び実情等」
※2 裁判所「司法統計 16婚姻関係事件数 終局区分別審理期間及び実施期日回数別 全家庭裁判所」
※3 裁判所「家庭裁判所における 家事事件及び人事訴訟事件の 概況及び実情等」
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