夫婦(婚姻)関係の破綻とは|法的な定義と離婚を成立させるポイント

その他離婚理由
弁護士監修
夫婦(婚姻)関係の破綻とは|法的な定義と離婚を成立させるポイント

離婚の話し合いでは必ずしも合意ができるわけではありません。話し合いで解決できない場合は調停や裁判を行うことになります。

裁判に進んだ場合、裁判所は法的に離婚が認められるかどうかを判断します。

裁判所が離婚を認めるかどうかの判断基準の一つに「夫婦関係が破綻しているかどうか」をいうのがあります。

この記事では、「夫婦関係の破綻」とはどういうものかについて解説します。

目次
  1. 裁判で離婚するには法定離婚事由が必要
    1. 法定離婚事由とは
    2. 婚姻を継続し難い重大な事由とは
  2. 夫婦(婚姻)関係が破綻している状態とは
    1. DV・モラハラ
    2. 長期間別居している
    3. 不就労・借金・浪費癖などの金銭トラブルがある
    4. セックスレス
    5. 過度の宗教活動がある
  3. 夫婦(婚姻)関係が破綻していると認められるためには
    1. 夫婦(婚姻)関係が破綻していることを立証できる証拠を集める
    2. 夫婦(婚姻)関係が破綻していることを客観的かつ具体的に主張する
  4. 夫婦(婚姻)関係の破綻を証明するのは難しい
  5. 夫婦(婚姻)関係の破綻を理由に離婚を考えたら弁護士に相談
  6. まとめ

裁判で離婚するには法定離婚事由が必要

話し合いで合意ができず、裁判に進んだ場合、離婚が認められるためには、民法に定める「法定離婚事由」が必要になります。

法定離婚事由とは

離婚の訴えを提起することができる場合として、民法770条1項は、以下のとおり規定しています。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  • 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

これら5つの事由を「法定離婚事由」と言います。

裁判で離婚をする場合には、法定離婚事由に該当する事情がなければ裁判所は離婚を認めてくれません。

配偶者が離婚を拒絶している場合は、法定離婚事由に該当する事情があるかどうかが重要になるため、自分の状況がどの離婚事由に当てはまるのかを考えておきましょう

婚姻を継続し難い重大な事由とは

民法770条1項5号は、法定離婚事由として「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と規定しています。

これは、いわゆる夫婦(婚姻)関係が破綻している状態のことを言います。

夫婦(婚姻)関係が破綻しているか否かを認定する際の判断にあたっては、婚姻中の夫婦の行為や態度、子の有無や状態、婚姻継続の意思の有無、双方の年齢、健康状態、資産状況、性格など婚姻生活全体の一切の事情を考慮することになります

夫婦(婚姻)関係が破綻している状態とは

夫婦(婚姻)関係が破綻している状態とは

前述のとおり、夫婦(婚姻)関係が破綻しているか否かについては、婚姻中の一切の事情を考慮した総合判断になります。

ただし、夫婦(婚姻)関係の破綻が認められやすい事情を挙げると以下のようなものがあります。

なお、以下の事情があるからといって、直ちに離婚が認められるものではありません。

これらの事情に加えて相当程度の別居期間があるなど、その他複数の事情を考慮しての判断になることに注意してください

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DV・モラハラ

平成30年度の司法統計によると、家庭裁判所における婚姻関係事件のうち、妻からの申立てよる事件数は、性格の不一致を動機とするものに次いで夫による暴力を動機とするものが2番目に多いとされています。

配偶者からのDVやモラハラは、婚姻を継続し難い重大な事由に該当すると判断されることが多い事例です。

もっとも、ありふれた夫婦喧嘩程度の暴力のみでは、夫婦(婚姻)関係が破綻しているとまではいえません。

DV・モラハラにより夫婦(婚姻)関係が破綻したか否かは、DV・モラハラの程度、回数、期間などの具体的な事情を考慮したうえで認定されます

そのため、暴行の程度が軽度でも、執拗に繰り返されるなどすれば夫婦(婚姻)関係の破綻となり得ます。

参考:裁判所「家事 平成30年度 第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」※1
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/705/010705.pdf

長期間別居している

民法752条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定しています。

そのため、正当な理由なく長期間別居をすることは、夫婦の基本的な義務に反する状態とみなされ、夫婦(婚姻)関係の破綻が認められる事情となります

夫婦(婚姻)関係の破綻が認められる別居の期間については、法律上の定めはありませんが、5年が一応の目安になります。

もっとも、夫婦(婚姻)関係の破綻の有無は、総合判断のため、別居期間が5年未満であっても、その他の事情も考慮した場合に離婚が認められる場合があります。

一方、別居期間が5年以上であっても、その間頻繁に連絡をとりあっているなど夫婦(婚姻)関係の破綻を否定する事情がある場合には、夫婦(婚姻)関係の破綻が認められない場合もあります。

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不就労・借金・浪費癖などの金銭トラブルがある

配偶者の怠惰な性格や勤労意欲の欠如、生活能力の欠如なども、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する場合が多いです

これらの事情は、 「悪意の遺棄」にはいたらないものの、夫婦の協力扶助義務に違反するものです。

そのため、夫婦の共同生活の維持を困難にさせ、相手方に信頼と愛情を失わせる可能性があります。

これにより、婚姻関係を深刻に破綻させて回復の見込みがなくなれば、婚姻を継続し難い重大な事由があると言えます。

また、配偶者が、相手方に無断で多額の借金を重ねたり、クレジットカードで多額の出費を繰り返し、家計を困窮状態に陥れたりした場合も、婚姻関係を継続し難い重大な事由があると判断されることがあります。

具体的には以下のような事案で婚姻を継続し難い重大な事由が認められています。

  • 夫が確たる見通しもなく転々と職を変え、安易に借財に走り、そのあげく、妻らに借金返済の援助を求めるなど、著しくけじめを欠く生活態度に終始した事案(東京高判昭和59年5月30日)
  • 生活能力がなく怠惰な生活を続ける夫に、妻が愛情を喪失し不信感が決定的となった事案(東京高判昭和54年3月27日)
  • 妻が夫の収入に合わない浪費をして家計に不相応な多額の借金やカードの利用を重ね、独力では返済不能となった事案(東京地判平成12年9月26日)

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セックスレス

婚姻生活においては性交渉も重要な構成要素となります。

そのため、病気や老齢など性交渉ができない特段の理由がないにもかかわらず、長期間性交渉を拒否し続けることは、婚姻関係を継続し難い重大な事由に該当する場合があります

具体的には以下のような事案で婚姻関係を継続し難い重大な事由が認められています。

  • 夫がポルノビデオなどを見ながら自慰行為に耽り、妻との性交渉を拒否した事案(福岡高判平成5年3月18日)
  • 夫がポルノ雑誌に異常な興味を示し、妻との性交渉を拒否した事案(浦和地判昭和60年9月10日)など

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過度の宗教活動がある

宗教活動の自由については夫婦間においても尊重されます。

しかし、夫婦間には相互の協力によって婚姻を維持するように努めるべき義務がありますので、宗教活動の自由については一定の制約があります。

夫婦の一方が過度に宗教活動に専念した結果、夫婦関係が悪化し、婚姻関係が破綻したときには、婚姻を継続し難い重大な事由が認められます

夫婦(婚姻)関係が破綻しているか否かは、以下のような要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 宗教を信仰する一方の配偶者の宗教活動の内容や程度、信仰心の程度 ・家庭や第三者におよぼす影響の有無
  • 一方の配偶者の信仰ないし宗教活動に対する他方配偶者の理解・寛容の有無
  • 別居後の信仰心・宗教活動の程度
  • 別居期間
  • 婚姻意思の継続の有無 など

夫婦(婚姻)関係が破綻していると認められるためには

夫婦(婚姻)関係が破綻していると認められるためには

裁判所に夫婦(婚姻)関係が破綻していると認めてもらうためにはどうしたら良いのでしょうか。

夫婦(婚姻)関係が破綻していることを立証できる証拠を集める

裁判所に夫婦(婚姻)関係が破綻していると認めてもらうには、夫婦(婚姻)関係が破綻していることを裏付ける証拠が必要になります。

具体的な事案ごとに紹介していきます。

DV・モラハラ

DVの証拠としては、配偶者からの暴力でできたアザや傷の写真医師の診断書暴力を受けたことを記載した日記などが証拠になります。

病院に行く際には、なぜケガをしたのかを医師に具体的に話すことで、カルテ(診療記録)にも配偶者からの暴力を受けたことが記載されるため、さらに有効な証拠になります。

モラハラの場合には、配偶者からどのようなことを言われたのかが重要になります。

そのため、発言内容を録音した録音データや発言内容を記載した日記などが証拠になります。

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長期間の別居

別居の証拠としては、別居時に住民票を異動していれば住民票が証拠となります。

住民票の異動を伴わない場合には、新たに借りた賃貸物件の契約書が証拠となります。

長期間別居をしていたという事情は、ほかの事情と併せて婚姻関係を継続し難い重大な事由であると判断されることになります。

そのため、「いつから別居したのか」ということは、住民票などで明確にわかるようにしておくと良いでしょう。

不就労・借金・浪費癖

不就労の証拠としては、配偶者の所得証明書から明らかにすることができます。

なお、実際の裁判では、離婚を求める側が不就労の事実を立証するのではなく、相手方が就労していることを立証しなければなりません

借金・浪費癖の証拠としては、以下のようなものが有効です。

  • 借用書
  • クレジットカードの利用明細書や領収書
  • 消費者金融からの督促状 など

これらの証拠は、別居してからだと入手が困難になりますので、別居をする前にあらかじめ準備しておくようにしましょう。

セックスレス

セックスレスの証拠としては、日記メール・LINEなどがあります。

セックスをしなかったというだけでなく、拒絶されたという事情も必要になります。

そのため、メールやLINEで、性交渉を求めたが相手方から断られたということを残しておくと良いでしょう。

ただし、夫婦の性行為というものは閉ざされたプライベートな空間で行われるものですので、客観的な証拠が存在しないのが通常です。

そのため、セックスレスの事実を証明することは非常に難しいです。

過度の宗教活動

過度の宗教活動の証拠としては以下のようなものがあります。

  • 宗教の内容のわかるパンフレット
  • 配偶者の行った寄付の履歴(領収書、振込明細書、通帳の写しなど)
  • 偶者の宗教活動で夫婦関係に影響が生じたことを記載した日記 など

配偶者が宗教活動をしていることだけでは離婚事由にはなりません。

そのため、配偶者の宗教活動が夫婦生活に影響をおよぼすほど著しいものであることを基礎づける証拠が必要になります。

夫婦(婚姻)関係が破綻していることを客観的かつ具体的に主張する

夫婦(婚姻)関係が破綻しているということは、「当事者双方に婚姻を修復させる意思がない」という主観的要素と「客観的に見て婚姻を修復させることが著しく困難である」という客観的要素のうち、いずれか一方が認定される場合だと言われています。

そのため、裁判所に離婚を認めてもらうためには、客観的要素を満たす事情、具体的には、DVやモラハラ、長期間の別居、不就労・借金・浪費癖などの根拠となる事情を客観的かつ具体的に主張する必要があります

単に「夫から暴力を受けた」などの抽象的な事実ではなく、いつ、どこで、どのような暴力を受けたのか、それによってどのような怪我をしたのかなどを具体的に主張しなければなりません。

夫婦(婚姻)関係の破綻を証明するのは難しい

夫婦(婚姻)関係の破綻を証明するのは難しい

法定離婚事由のうち、770条1項5号の夫婦(婚姻)関係の破綻は、ほかの4つの法定離婚事由と比べて抽象的な内容となっています。

そのため、具体的にどのような事情があれば夫婦(婚姻)関係が破綻していると判断されるかが一義的ではないという難しさがあります

また、裁判で離婚するケースは、夫婦のどちらかが離婚に合意せず、夫婦(婚姻)関係の破綻を争っているケースが多いです。

そうすると、離婚を求める側は、「客観的に見て婚姻を修復させることが著しく困難である」という事情を具体的に立証する必要がありますが、夫婦のプライベートな事柄を証拠で証明することは容易ではありません。

このようなことから夫婦(婚姻)関係の破綻を証明することは難しいと言えます。

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夫婦(婚姻)関係の破綻を理由に離婚を考えたら弁護士に相談

夫婦(婚姻)関係の破綻を理由に離婚をしようと考えたとき、「自分の場合は民法の規定する法定離婚事由にあたるか否か」を自分で判断することは容易ではありません。

夫婦(婚姻)関係の破綻は、婚姻中の一切の事情を考慮した総合判断となるため、裁判で離婚が認められるかどうかは、法律の専門家でないと判断できないものです。

離婚をする場合、法定離婚事由に該当する事情があるかということ以外にも、親権や養育費、慰謝料、財産分与、年金分割など決めなければならないことがたくさんあります。

ただでさえ離婚をするときは精神的負担が大きくかかります。

そのため、これらの問題を一人で抱え込んでしまうと、負担が増し、疲弊してしまいます。

このようなとき、法律の専門家である弁護士に相談をすることで、離婚に向けた適切なアドバイスやサポートを受けることができます。

夫婦(婚姻)関係の破綻を理由に離婚を考えている場合は、自分のケースが「夫婦(婚姻)関係の破綻」に当てはまるのか、離婚する場合はどう進めれば良いのかなど、弁護士に相談してみることをおすすめします

まとめ

夫婦(婚姻)関係の破綻を理由に離婚する場合、夫婦(婚姻)関係の破綻を裏付ける証拠が必要です。

どのような事情があれば離婚ができるのか、どのような証拠が必要なのか判断に迷ったときは弁護士に相談することをおすすめします。

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※1 裁判所「家事 平成30年度 第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別

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