浮気・不倫相手だけに慰謝料請求する方法と知っておくべき注意点
夫(妻)が浮気をしているかもしれない。浮気相手と別れさせ、慰謝料を請求したいが、子供や生活のことを考えると離婚はしたくない…
離婚せず、配偶者の浮気相手だけに慰謝料請求したい場合、どうすれば良いのでしょうか。
この記事では、離婚せず、夫(妻)の浮気相手にだけ慰謝料を請求する方法や慰謝料請求する際の注意点について解説します。
- 目次
☝この記事の内容を動画でも解説しています
浮気・不倫相手に慰謝料請求できるのか
そもそも、浮気相手に慰謝料を請求できるのでしょうか。以下で詳しく見ていきます。
離婚する場合
不倫は既婚者とその相手による共同不法行為です。そのため、配偶者と浮気相手の両方に慰謝料を請求できます。
ただし、すでに配偶者から十分な慰謝料を受け取っている場合は、浮気相手に慰謝料を請求しても認められない可能性が高いです。
これについては「配偶者からすでに十分な慰謝料を受け取っている」で後述します。
離婚しない場合
離婚しない場合は浮気相手に慰謝料を請求できます。
ただし、離婚せず浮気相手にのみ慰謝料請求する際にはいくつか条件を満たす必要があります。これについては次項で説明します。
浮気・不倫相手に慰謝料を請求できるケース
夫(妻)が浮気をしている…別れさせて慰謝料も請求してやる!でも離婚するのは絶対嫌!その気持ちはわかります。
しかし、「配偶者が浮気をしているから」という理由だけで浮気相手に慰謝料を請求できるわけではありません。
浮気相手に慰謝料請求をするには以下の条件を満たす必要があります。
不貞行為があったこと
まず、浮気を理由に慰謝料請求をするには不貞行為があったことが認められなければなりません。
不貞行為とは「既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと」です。
したがって、浮気相手に慰謝料請求をするには、配偶者と浮気相手の間に不貞行為があったことを証明する必要があります。
浮気・不倫相手に故意または過失があること
浮気相手に慰謝料請求をするには、不貞行為に対して浮気相手に故意または過失があったということが必要です。
つまり、浮気相手が「相手が既婚者であると知っていた(故意)」または「相手が既婚者であるかどうか注意を払えばわかる状況にも関わらず気付けなかった(過失)」ということが必要になります。
婚姻関係の破綻が不貞行為によるものであること
そもそも、夫婦には平穏で円満な夫婦関係を保持する権利があります。
不貞行為による慰謝料は、この「平穏で円満な夫婦関係を保持する権利」を侵害されたことに対して支払われるものです。
しかし、すでに別居していたなど、不貞行為があった時点で夫婦関係が修復できないほど悪化していた場合は不貞行為によって夫婦の権利を侵害したとは言えません。
そのため、慰謝料を請求しても認められない可能性があります。
慰謝料請求の時効を過ぎていないこと
慰謝料請求には時効があります。浮気相手に慰謝料請求する際は時効を過ぎていないことを確認しましょう。
なお、不倫の慰謝料請求権は以下のいずれか早いほうで時効が完成します。
- 浮気・不倫相手を知ってから3年
- 不倫があったときから20年
浮気・不倫相手に慰謝料を請求できないケース
浮気相手に慰謝料を請求できないケースには以下のようなものがあります。
既婚者だと知らなかった
浮気相手が配偶者のことを既婚者だと知らなかった場合、慰謝料を請求できません。
例えば、「独身だ」と言われて関係を持ったケースや出会い系サイトなど相手の素性がわからない状態で肉体関係を持ったケースです。
ただし、社内不倫の場合は、「相手が既婚者であるかどうか気付けなかった」ということは考えにくいため、慰謝料請求が認められる可能性があります。
時効が完成している
前述のとおり、浮気・不倫の慰謝料請求には時効があります。時効が完成している場合は慰謝料請求が認められません。
配偶者からすでに十分な慰謝料を受け取っている
不倫の慰謝料は配偶者と浮気相手の連帯債務です。連帯債務ですので、2人合わせて決められた金額を支払えば良いということです。
そのため、すでに配偶者から十分な慰謝料を受け取っている場合は浮気相手に慰謝料を請求できないということになります。
浮気・不倫相手に対する慰謝料請求方法
離婚せず、浮気相手だけに慰謝料請求する場合、以下の方法があります。
交渉する
慰謝料請求で最もシンプルなのが相手との交渉です。
相手が不貞行為を認め、揉めなければ、話し合いだけで済むため早期解決につながります。
しかし、浮気相手との話し合いは揉めごとに発展する場合も少なくありません。
相手が交渉に応じようとしなければ慰謝料の支払いも期待できません。
また、話し合いが成立したとしても取り決めた内容を記録していない場合、「そんな内容は言った覚えがない」と主張されることもあります。
このようなケースに備え、示談書を作成し、取り決めた内容を書面で残しておきましょう。
このとき、浮気相手との交渉や示談書を作成する際は弁護士に間に入ってもらうとトラブル防止につながります。
なお、示談書を作成する際は公正証書にしておくと良いでしょう。
示談書でも約束した内容を確認することはできます。しかし、浮気相手が示談書に書かれた通りに慰謝料を支払うとは限りません。
示談書を公正証書にしておけば、浮気相手が慰謝料を支払わなかった場合に相手の給料や銀行口座を差し押さえることができます。
内容証明を送る
浮気相手が交渉に応じない場合、話し合いでの慰謝料請求はできません。
また、請求する側としても「浮気相手と直接話すなんて絶対に嫌!」という気持ちもあるでしょう。
このような場合には、内容証明(郵便)送付による慰謝料請求という手段があります。
内容証明とは一般書留の一種で、いつ・誰が・誰に・どのような内容の郵便物を送ったのかを郵便局が証明するものです。
内容証明を浮気相手に送ることで「私には慰謝料請求の意思がある」と証明できます。
ただし、内容証明には法的な拘束力はありません。
つまり、内容証明を浮気相手に郵送したからといって、浮気相手が慰謝料請求に応じるとは限らないということです。
そのため、「慰謝料請求に応じない場合は法的措置をとる」という文言を添えたり、内容証明を弁護士名義で送ったりすることで浮気相手にプレッシャーを与えるのも効果的です。
訴訟を起こす
交渉や内容証明でも問題が解決しない場合は訴訟を起こし、裁判で慰謝料請求を行います。裁判所の判決には法的拘束力があります。
ただし、浮気相手に対する慰謝料請求が認められるためには不貞行為があったという事実や不貞行為によって夫婦の権利が侵害されたことなどを証明しなければなりません。
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浮気・不倫相手に慰謝料を請求するなら証拠が必要
浮気相手に慰謝料請求する際は不貞行為があったことを立証する証拠が必要です。
例えば以下のようなものが証拠として有効とされています。
- 配偶者と浮気相手が2人でラブホテルに出入り、あるいは滞在している写真
- ・ラブホテルの領収書
- ・2人で宿泊したと推測できるSNSやメール
- ・不貞行為があったことを認める音声データ など
上記のほかにも証拠として有効な場合があります。詳しくは弁護士にご相談ください。
浮気・不倫相手への慰謝料相場
慰謝料を請求するなら相場を踏まえておくことが大切です。
もし、相場からかけ離れた高い金額を請求すると相手が応じてくれない可能性があります。
不貞行為に対する慰謝料の相場は50万~300万円程度となっています。
ただし、離婚せず慰謝料だけを浮気相手にだけ請求する場合、100万円を超える金額は期待できないと考えておきましょう。
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不倫の慰謝料請求をしたい!夫(妻)や不倫相手に増額請求する方法。
浮気・不倫相手への慰謝料の増額ポイント
離婚せず浮気相手だけに慰謝料請求する場合、あまり高額な請求は期待できません。
では、慰謝料を増額請求したい場合、どのようなポイントに注目すれば良いのでしょうか。
離婚するかどうか
不貞行為に対する慰謝料は離婚するかどうかで金額が変わります。
離婚すれば慰謝料が高くなり、離婚しなければ低くなる傾向があります。
子供の有無
夫婦の間に子供がいる場合、夫婦関係の悪化による影響が大きいとみなされ、慰謝料金額が増額される傾向があります。
浮気・不倫前の婚姻関係
浮気や不倫のある前は夫婦関係が良好だったにも関わらず、浮気によって夫婦関係が悪化した場合は慰謝料金額が増額される傾向があります。
浮気・不倫の主導者かどうか
浮気相手と配偶者のどちらが浮気の主導者であったかも慰謝料金額に影響があります。
浮気相手が主導者であれば慰謝料金額が高く、反対に配偶者が主導者であれば浮気相手へ請求する慰謝料金額は低くなる傾向があります。
浮気・不倫による損害の大きさ
慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償です。
そのため、配偶者の浮気による精神的苦痛が大きいと判断されれば慰謝料金額が高くなる傾向があります。
例えば、配偶者の浮気により、うつ病を発症したという場合は、それを証明するもの(診断書など)があれば慰謝料を増額できる可能性があります。
浮気・不倫相手が反省しているかどうか
浮気相手が反省し、真摯な態度で謝罪をしたり、退職などの社会的制裁を受けたりしている場合は慰謝料が減額される可能性があります。
反対に、浮気相手からの謝罪がないといった場合は慰謝料が増額されることもあります。
浮気・不倫相手だけに慰謝料請求する際の注意点
ここまで、浮気相手に慰謝料を請求する方法について説明してきました。
離婚せず、浮気相手だけに慰謝料請求する場合、注意すべき点があります。以下で詳しく説明します。
誓約は書面で行う
離婚せず、浮気相手にだけ慰謝料請求をする場合、慰謝料の支払いに関する項目以外に、「浮気を繰り返さないと誓約させる」ことも重要です。
具体的には、これを限りに不倫関係を解消し、あとで不倫関係が戻ることのないよう、浮気をした2人が連絡を取り合ったり、会ったりしないよう約束させるのです。
なお、誓約事項は示談書に記載し、書面の形で残すようにしましょう。
過度な要求はしない
離婚せず、浮気相手だけに慰謝料請求をする場合、浮気相手の出方に注意が必要です。
浮気相手からすると、愛する人と別れさせられて自分だけが1人になったうえ、自分だけ慰謝料請求をされるわけです。
そうすると、「どうして私だけがこんな目に遭わなければならないのか」という思いが募ることもあります。
特に浮気相手と配偶者が同じ職場にいる場合は、配偶者の不倫を浮気相手が職場にばらすことで、配偶者の社内での立場が悪くなったり、ペナルティを受けたりすることもあります。
離婚せず、浮気相手だけに慰謝料請求するなら、過度な要求や慰謝料請求の強行は控え、浮気相手の出方に十分注意しましょう。
浮気・不倫相手から求償される可能性がある
浮気に対する責任は浮気相手と配偶者にあります。
それなのに浮気相手だけに慰謝料を請求すると、浮気相手が配偶者に対して「浮気はあなた(浮気をした配偶者)にも責任があるのだから、その分、慰謝料を負担してほしい」と慰謝料の分担を求めてくる可能性があります。
これを求償と言います。
つまり、浮気相手にだけ慰謝料請求したつもりが、一部は自分の配偶者に請求されてしまうということです。
不倫は浮気相手と配偶者による共同不法行為です。
そのため、一方(浮気相手)が自分の責任分以上の慰謝料を請求されたら、もう一方(浮気をした配偶者)に当人が負担するべき慰謝料を請求することが認められているのです。
このような事態を避けるためには、慰謝料金額について浮気相手と交渉する際、浮気相手に求償権を放棄するよう約束させ、示談書を作成して公正証書として残すという方法があります。
また、慰謝料金額の交渉をする際に、慰謝料の金額を減額する代わりに求償権の放棄を約束するよう交渉することもあります。
時効に注意
前述のとおり、浮気・不倫の慰謝料請求には時効があります。
そのため、浮気相手を知ってから月日が経っている場合は時効が過ぎている可能性があります。
なお、時効が迫っている場合は所定の手続きを行うことで時効を更新することができます。
時効の更新を行うと、時効の進行が止まり、時効がリセットされます。
時効を過ぎているかどうか確認したい場合や時効が迫っている場合は弁護士に相談すると良いでしょう。
浮気・不倫相手だけに慰謝料請求するなら弁護士へ
慰謝料請求自体は自分だけで行うこともできます。
ただし、離婚せず、配偶者の浮気相手だけに慰謝料請求する際は、求償される可能性に注意が必要です。
そのためにも、不貞行為があったことや損害の大きさを立証できる証拠を集め、妥当な慰謝料金額を請求し、求償権の放棄を約束させることが大切です。
浮気相手と交渉する際、相手が感情的になるケースも少なくありません。
また、内容証明を送っても無視されることもあるため、自分だけで対応するのは難しい場合があります。
慰謝料請求を弁護士に依頼することで相手との交渉を代行してもらうことができます。
弁護士なら冷静かつ論理的な交渉ができるため、当事者同士で行うより話し合いがスムーズに進みやすくなります。
また、内容証明も弁護士名義で送ることで相手にプレッシャーを与え、支払いに応じてもらいやすくなります。
なお、裁判に進んだ場合は時間と労力、専門知識などが必要になります。
裁判で浮気相手に慰謝料請求をする際は弁護士に依頼することをおすすめします。
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まとめ
夫(妻)の浮気相手にだけ慰謝料を請求する方法について解説しました。
浮気相手に慰謝料請求するには専門知識が必要です。
また、浮気相手と直接交渉したり、裁判を起こしたりするのは精神的にも時間的にも負担の大きいものです。
離婚問題に強い弁護士に依頼することで負担を軽減し、慰謝料請求に関するトラブルを回避しやすくなります。
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